ツイッター小説 お気に入りセレクト 2012/08/14 ついのべの日!

毎月14日はついのべデー。今月のお題は「影」でした。 (ついのべの日について、詳しくは @twnvday_bot さんへ) 今日読んだついのべの中から個人的にお気に入りの作品を選んでみました。 続きを読む
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すわぞ @suwazo

#twnovel 兎は人喰い鬼と挨拶を交わす。人喰い鬼は兎を喰わないから兎は人喰い鬼と仲良し。人は兎を喰うしこわい猟犬をけしかけるから兎は人はきらい。人喰い鬼はときどき美味しいクローバーを摘んできてくれるから兎は人喰い鬼が好き。人喰い鬼がかつて人だったなんて信じたこともない。

2012-08-14 00:14:30
竹田康一郎 @tahtaunwa

#twnday「何で独りで寝てるの?」障子越しに狐の影絵が少女に語りかけた。「病気なの」「なら友達を連れてきてやる」犬や鳶、影絵の動物が沢山やってきた。「良い薬草を採ってきてやる」そう言った翌日から狐は来なくなった。#twnovel その日、猟師が狐を仕留めた。薬草を咥えた狐を。

2012-08-14 00:17:08
tamaki🌻ⒾSF11 C-39 @tamaki_okia

万物は全て日記を持つ。でも稀に紛失したものがいて、そういうもの達は他者の日記を奪う。そんなの知らなかった私達は木枯らしが二人の交換日記を奪っていったのに呆然としたけどちらりと見えた精霊が日記をひどく嬉しそうに抱きしめているから、まぁいいか、と二人して笑い合った。 #twnovel

2012-08-14 00:25:44
ぱぴこ @papiusagi

雲ひとつない晴天、長くくっきりと伸びる自分の影。瞬きしないように賢明に堪えながら、じっとその分身を見つめる。「いまだよ」の母の声が合図だ。すかさず青い空に目を移す。「わあ、僕がいるよ!」「うまくできた?」うんうんと頷いてはしゃぐ。そう、どっちも僕だ。 #twnovel

2012-08-14 00:32:19
tamaki🌻ⒾSF11 C-39 @tamaki_okia

旧校舎の教室、私の席に当たる場所の机に彫られていたのはいびつなハートだった。昼下がりの肝試し。光籠もるそこで落書きに笑いながら触れた。確かに怖くなんかなかった。でも触れた瞬間全身をかけ巡ったのは私でない誰かの記憶だった。誰かが生きたかった。恋をしたかったのだ。 #twnovel

2012-08-14 01:33:42
layback @laybacks

打者は空振りしたが、打者の影は白球の影をレフトスタンドに叩き込んでいた。観衆の影がいっせいに湧き上がる。捕手の影がタイムを取ってマウンドに駆けてゆく。投手の影は帽子を脱いで額の汗を拭った。青空を仰ぐと太陽が囁いた。最後の夏だぞ。分かってます。投手の影は微笑んだ。 #twnovel

2012-08-14 01:41:28
ハラヨシ @harayosy

#twnovel 影と喧嘩した。次の日から影の反抗が始まった。右に行こうとすると左に影が動く。座ろうとすると立ち上がる。優先権は僕。だけど、影と合わないんじゃ結局バランスが崩れて動けない。「分かったよ」僕は影に謝った。「ごめん」夕日に伸びる影に手を差し出した。 #twnvday

2012-08-14 02:07:45
萌葱[moegi] @hmoegi

#twnovel その人は群青の影を持っていた。不思議に思い目を留めたその瞬間、群青だけがするりと逃げだした。あとには何事もなかったかのように、黒い影が伸びている。あれはなんだったのだろう。振り返るが答えは出ない。ただ自分の足許が青く染まっていることだけは確かだ。#twnvday

2012-08-14 06:19:43
ヨシムラ @ortk

見合い写真がどうしても気になって、普段なら断る見合いの席に足を運んだ。本人を目の当たりにして期待は確信に変わった。明るく快活な笑顔の中に刺す一点の影。その底知れない暗闇を知りたい、と思ってしまった。ブラックホールに夢を馳せる宇宙学者のように。 #twnovel #twnvday

2012-08-14 07:51:38
りり @ririri1220

#twnvday #twnovel 背後から私の足元に影が伸びた。気付いているけど、勿論知らない振りをする。それは言葉にした事はなくとも約束だから。地面に落ちた影が手を繋いだ。…今年も来ましたよ、あなた。墓前に佇み、今年も一年に一度の逢瀬を楽しむ。

2012-08-14 08:39:09
猫春雨@ものがたる屋 @nekoharusame

舞台上のテーブルに、一脚のワイングラスが置かれていたが、主は留守のようだ。私が舞台に上がると観客の期待する眼差しにさらされる。それに応えようとグラスを手に取り、叩き割ろうとするが――出来なかった。観客席から野次が飛ぶ。居た堪れなくなった私はグラスの中に身投げした。#twnovel

2012-08-14 08:55:00
元カノを誤訳 11/24文フリA-34 @moto_moto_kano

扇風機の首に合わせて声を出す。喉が震えて気持ちがいい。うーの声がぐーに変わる。声を出しながら彼女を思う。日常に刷り込まれていく彼女の顔を扇風機に見立てて見つめる。声を言葉に変える。僕は君が好きだよ。扇風機は首を振る。好き?扇風機は首を横に降り続けている。 #twnovel

2012-08-14 09:42:19
イズ @izure_

追い縋る妹を振り切って駆け出した。「お姉ちゃん、待って」舌足らずな喋り方も、何もかもが鬱陶しい。小さな妹の足では到底追い付かないと知りながら、力の限り走った。長女だからってどうして私だけ。あの子のお守りはもう沢山。夕暮れの町に私の黒い影が長く長く伸びてゆく。 #twnovel

2012-08-14 10:01:33
miecha @miechorz

#twnovel フォームの確認をしていたら、見知らぬ影が乱入して俺の影に殴りかかってきた。相手の拳は避けたが、反撃にカウンターを合わせられ顎にキツイ一撃を食らってしまった。吹っ飛ぶ俺の影、同じように吹っ飛んだ俺の体。地に伏して考える、これはシャドーボクシングではないだろう……。

2012-08-14 10:22:42
キヨシロウ @kiyoshiro_aoi

#twnovel 窓に映る彼女の影がとても寂しそうだったから。窓の下で僕は唄った。彼女が笑顔になれるように、彼女の心の奥まで届くように大きな声で唄った。彼女の影は少しだけ微笑んだように見えた。 #twnvday 窓が開いて彼女が顔を出した。「うるさい! 今何時だと思ってんのよ!」

2012-08-14 10:36:21
@GinIsami

#twnovel 谷合に住むオリ族は鉄器を作って生きる。彼らは表情筋が乏しいため常に仮面のような無表情である。そのため彼らは会話をしながら喜怒哀楽を表す4つの鈴を巧みに鳴らしわける。感情が余りに激する時はその鈴を破壊して音を鳴らすが、感情の鈴の再鋳造は掟で固く禁じられている。

2012-08-14 11:34:58
新居でがまだせわらびっちょん @tnsu1_su1

「電力削減に向け、『消影』しましょう」この世から影が消えた。足元や服の皺から、光の届かない机の隙間から、日光が降り注ぐ木の下から。昼夜問わず世界は光に包まれる。灯りは確かに要らない。目に飛び込む原色のけばけばしさ。耐えられず閉じた瞼の裏も真っ白。「廃止です」 #twnovel

2012-08-14 12:28:06
すわぞ @suwazo

#twnovel 真夜中、脱字中の文字を見つけた。古本の間から抜け出したのだろう。文字は窓際の壁に這いのぼり、ゆっくりと文字の皮を脱ぎはじめた。そして明け方、かつて文字だったものは、蝶のように外へはばたいていった。あとに干からびた文字の皮を残して。羽根のようなものをきらめかせて。

2012-08-14 12:38:12
イズ @izure_

「お姉ちゃん、待って」これはどんな遊びなの。どこいくの。どんどん遠ざかる影を追いかけて追いかけて…そのうちに眠くなった。「起きて」目を開けるとお姉ちゃんがいて、帰るよと私の手を握る。うれしくて飛び跳ねたい気分。「お姉ちゃん、明日は影踏みしたい」「…ん、考えとく」#twnovel

2012-08-14 12:47:07
山本アヒコ @lostoman

夕暮れ時、幼い少女は遊ぶ。「影踏み鬼やろうよ」逃げる影を追いかける。「はい踏んだ」いつの間にか暗い影が周囲を包む。「もうこんな時間」少女が足を上げると、影は宙へ浮かぶ。「またねー」少女は空へ昇る影に手を振る。影も手を振りながら空へ消えた。 #twnovel #twnvday

2012-08-14 13:51:45
雪曇 遊兎 @koge96

朝起きると影が消えていた。「またか…」私は呟く。私の影は時々居なくなる。かくれんぼは楽しいから別に良いんだけど。今日はどうやら人形の下らしい。そこだけ影が異様に濃い。「みっけ」私が人形を持ち上げて言うと、影は嬉しそうに戻ってきた。 #twnovel #twnvday

2012-08-14 14:51:09
@tabi__yoshi

白が好きで甘党な私と、黒が好きで辛党な彼女は千年経ってもきっとわかり合えない。「あなたが嫌い」「奇遇ね、私もあなたが嫌い。」「でもそれ以上に女々しいあいつは嫌いよ。」「奇遇ね、私もあいつは嫌いだわ。」共通点は同じ恋人。迷わず手を組んだ。 【意気投合】 #twnovel

2012-08-14 14:51:52
茶屋 @chayakyu

ありえたかもしれない過去、起こりうる未来、今ここにない現在。人生の直線から外れてしまった無数の僕が怨嗟の声をあげている。何でこうしなかったのだ。もっとこうすればよかったのだ。もううんざりだ。「じゃあ、代わってくれよ」僕らは沈黙する。誰も代わってはくれない。 #twnovel

2012-08-14 15:24:30
とおる7th @windcreator

影武者を生業にしている。頭のてっぺんから足のつま先まで神経を研ぎ澄ます。姫様の美しい所作を思い浮かべる。立ち居振る舞いを、鋭くも優しい言の葉を、笑顔を。己心の中に描き、その通りに演じていく。姫様ならどうなさるか。問い続ける。光を喪っても決して投げられぬ私の使命。 #twnovel

2012-08-14 15:59:01
nohironogi on earth @nohironogi

#twnovel #twnvday 夕暮れ、影が伸びることに気づいたとき、胸が踊った。大きくなれる、強くなれる、と信じた。兄も近所のガキ大将も叩きのめしてやる――でも、実行の機会はなかった。僕の影よりも彼らの影は長かったし、結局、誰の影も、必ず他の大きな影に呑みこまれるのだった。

2012-08-14 16:11:33