#smisn

@ngtip さんの#smisn をまとめてるものです。
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ねがたいぱ @ngtip

とにもかくにも。 先ほどまで肩を並べていた観衆と向き合う形で、僕は彼女達と肩を並べていた。 どういうことなのか聞きたかったが、状況に追いついていない頭と 集まる視線に、僕は硬直しきっていた。

2012-08-27 01:47:29
ねがたいぱ @ngtip

動けない。 観衆に向けて何か喋っている彼女の声も、聞こえない。 動いたら負ける、そんなわけの分からない予感を感じて固まっていると、 突然肩に重みを感じた。

2012-08-27 01:47:39
ねがたいぱ @ngtip

「時々指示を出すから合わせてね。 そんな複雑なことじゃないから、大丈夫だよ。」 耳元で彼女の声がする。 ふわりと、彼女の髪のひとふさが耳に触れる。 どうにかなりそうだ。 いや、現状が既にどうかしているのだが。

2012-08-27 01:47:51
ねがたいぱ @ngtip

音楽が鳴り出すと彼女は踊り始めた。 …...なんと、僕の上で。 空を飛んでいるわけではない。 僕の体を支えに器用に宙を舞っている。 時折、彼女は僕の耳元で指示を出す。 その指示はとてもシンプルで、指示通りに体を動かせば あとは彼女がバランスを調整してくれた。

2012-08-27 01:48:27
ねがたいぱ @ngtip

時には僕の上でくるくると。 時には僕の周りでくるくると。 彼女は僕を使い、まるでポールダンスのように華麗に舞う。 傍目には体の小さな彼女が僕に振り回されているように見えたろう。 しかし、実際振り回されているのは僕だ。 僕より、一回りも二回りも小さな彼女だというのに。

2012-08-27 01:49:15
ねがたいぱ @ngtip

何度もバランスを崩して倒れそうになった。 その度に彼女は重心を合わせて立ち直してくれた。 目が合う度に嬉しそうに顔をほころばせる。 そんなに余裕があるわけではないだろうに、精一杯の笑顔で。

2012-08-27 01:49:45
ねがたいぱ @ngtip

どれほどの時間が経過しただろうか。 私服でまだマシとはいえ、汗だくになってしまっている。 未だ笑顔を絶やさない彼女も、実際のところ踊るたびに汗が散っている。 ……何を隠そう、僕の服にしみ込んだ水分の半分は彼女のものだ。

2012-08-27 01:50:02
ねがたいぱ @ngtip

彼女とまた目が合う。 「んふ、ありがとう。」 僕の表情で察したようだ。 柔らかな笑みで応えてくれる。 「でも大丈夫、これが最後だよ。 腕を前にだして、しっかり、支えてね!」

2012-08-27 01:50:18
ねがたいぱ @ngtip

言うや否や、僕の目の前が真っ暗になる。 慌てて伸ばした腕に、ずしりとかかる重みと柔らかい感触。 僕の腕の中でお姫様抱っこの形になり、観客にフィナーレをしめす彼女がいた。

2012-08-27 01:50:28