深い森の塔のいきもの

枝音エッダ @chicken_edda

@setsu_nosuke 深い深い森のなかに迷い込んだアザがたどりついたのは、森の奥の奥とはおもえぬ豪奢な塔。一夜の宿を求めて薄暗い塔の中へ踏み込んだアザが見つけたのは塔の天辺の小部屋で寝息をたてるこの世ならざる美貌のいきもの。そして、瓶詰にされたふしぎな赤い薔薇。　そして字数

枝音エッダ @chicken_edda

@setsu_nosuke その薔薇が見る間にはらりと１枚花弁を散らすもので、思わず壜に手をかけようとするアザ。「触るな」と地の底から這い出たような恨みがましい声音がそれを推しとどめる。振り向くと、薔薇よりも緋い血色のひとみをしたいきものがゆらりと亡霊のように身を起こすところだっ

枝音エッダ @chicken_edda

@setsu_nosuke アザは一夜の宿を借りたいとそのいきものに申し出て、いきものは「では何か、対価を寄越せ」とアザに云う。持ち物をひとしきり、床に並べさせ見分して、「…此れが良い」と選ばれたのはよれて古びた聖書。「お前字がよめるのか」「読めるとも。古今東西どんな言葉でも」

枝音エッダ @chicken_edda

@setsu_nosuke けど、そんな彼はどんな国の文字もことばも知っていて、神をしらないと云う。だからヒトの神を知りたくて、それを選んだのだとアザが知るのはしばらく先ののことで、そんな孤独ないきものの塔に、通いながら、次第に長く居つくようになるアザ　なにもいわない彼　蜜月

枝音エッダ @chicken_edda

@setsu_nosuke 幾度となく、自分の棲む家にいきものを伴おうとするアザ。静かに、それでも頑として塔の小部屋を出ないいきもの。瓶詰の薔薇だけが、ふたりのおだやかな時間もいきものがひとりきりになった時間も、ぜんぶを知っている。　知りながら、ときどきはらりと、花弁を零す。

枝音エッダ @chicken_edda

@setsu_nosuke そうしていきものは、ときどきすがるような眼でアザを見るようになる。いきものは、なにかを言いかけて、そのままふっと寝台へ気だるく身を投げる。　どうしたんだ、ってアザが問いかける。　わからない、といきものは寝そべったまま言う。　「いったい何が欲しいんだ」

枝音エッダ @chicken_edda

@setsu_nosuke 萎れた薔薇のようにぐにゃりとしたいきものをあわれんで、自分も寝台に腰を下ろしていきもののあたまなど撫でてやるアザ。いきものはねむたげにしたったらずに、「……………………わからないんだ」　という。　「わからないよ、アザゼル。だから私は此処から出られない」

枝音エッダ @chicken_edda

@setsu_nosuke 「もうずっと、喉が渇いてしかたないんだ。水を飲んでも、なにをしても、おさまらないんだ……」　そうしていきものは瓶詰の薔薇を指差す。　「だから、もう おしまいだ」

枝音エッダ @chicken_edda

@setsu_nosuke 薔薇は、もうほとんど花弁を落としていて。蕾よりも小さい花の芯ばかりが、壜のなかに力なくあるだけで。　「あれはわたしだよ。水をやってもなにをしても、枯れていくばかりなんだ。いつからだろう、花弁が落ちてとまらなくなった。ほんとうに今日が最後かもわからない」

枝音エッダ @chicken_edda

@setsu_nosuke 「だけど、お前がいて、悪くなかった」　自分の頭に乗ったままのアザの手に手を重ねて、おどろくほどしっかりといういきもの。　アザはその瞳をじっと見つめて、重なった手を掴んで、口元へ引き寄せる。　戸惑いに声も出ないままのいきものの指先に、そっと口づけるアザ。

枝音エッダ @chicken_edda

@setsu_nosuke 掴んだ手首からそのまま腕のわたりを伝って、肘、二の腕、肩から首へ、最後に顎へ指を這わせて、口を開きかけたアザに、いきものは「……黙っててくれないか」って。　だからアザはもうなんにも言わなくてそのままマウストゥマウスで塞いでも全部伝わってしまｳﾜｧｱｱｱ

枝音エッダ @chicken_edda

@setsu_nosuke ………まで考えたけどもう１時間で１時半なので続きは誰か下さい　　　　下さい　　　　下さい　　　んで最終的に白無垢でアザのところに嫁げばそれでいいと思うの

枝音エッダ @chicken_edda

@setsu_nosuke あとは断片　・この世界のルさんは愛することも愛されることもしらない　・それが神をうらぎった罰　・堕ちた悪魔に薔薇を穢すことはできない　・愛したものに愛されないと水が干上がったように化身たる薔薇を枯らして死ぬ　・という制約の記憶はルさんにはない

枝音エッダ @chicken_edda

@setsu_nosuke ・薔薇はルさんの胸の穴をうめるこころになる　・しぬまぎわのルさんはきっと胸の穴は肥大化して肌を破って薔薇のとげがつきだして痛い痛い痛い　・はじめての接吻と行為を経てはじめて名前を告げる（というか思いだす）　・名前と存在を認められ求められて完成するこころ