ヨウカイスレイヤー第五話より「バット・フー・イズ・ザ・イービル・ヨウカイ」#2

第五話「フラワリング・サツバツ・ナイト」 ファンタズマゴリア・ケイム・フロム・ジゴク #1:http://togetter.com/li/352567 バット・フー・イズ・ザ・イービル・ヨウカイ #1:http://togetter.com/li/361069 続きを読む
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第五話「フラワリング・サツバツ・ナイト」より「バット・フー・イズ・ザ・イービル・ヨウカイ」#2

2012-08-29 16:04:54
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「アセンショーン、一生懸命やっていくと、上にラブ、ラブが最上階だったの~」アンビエント音楽としてスカムなポップスが流れる。天空、ゲンソウキョウのどの建物の最上階からもはるかに高い場所。そこで幽かなピアノの旋律とともに、歌声が空を包んでいる。1

2012-08-29 16:07:43
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雲の上で一人歌っている一人の少女あり。「ホロウ、ナッシン、アランド、フラワー……んん?」別の曲を歌いだして彼女は地表を見た。ピアノの音は鳴り続けている。「あんなところに誰かいるよ。珍しいネ」彼女、リリカ・プリズムリバーが一人でいることの方が珍しいのだが、本人はそこに気付かない。2

2012-08-29 16:12:09
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「イヤーッ!」リリカは雲の上、数百メートルもの上空から真っ逆さまに飛び降りた。実際自殺行為であるが、彼女たちポルターガイストは死ぬことがない。やがて地面が近づくと、リリカは落下を緩め、一緒に落下してきた自分のキーボードを掴むとふわりと着地した。3

2012-08-29 16:15:12
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リリカは辺りを見回す。花畑であろうか、一面同じ花が咲いている。「これまた珍しい、オーガニック・スズランだよ。しかもきれいに整えられている」ゲンソウキョウには使えなくなったUNIXモニタや穴が開いたIRC通信機などが落ちていることがあるが、ここにそれらの類は見当たらない。4

2012-08-29 16:17:57
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「ゴミもないし、ここならいい音を拾えそうだネ」リリカはノーシャウトで音符型のダンマクを投擲した。ダンマクは空中で爆発し、周囲の音を取り込むと再度音符の形を形成した。ダンマクがキーボードにしまわれると、キーボードはひとりでに音楽を奏でる。「うん、うん。良好だわ」5

2012-08-29 16:23:07
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「おっと、そういえば人を見つけたんだったっけ」思い出したようにつぶやくと、リリカは数メートル浮き上がり、キーボードを鳴らした。ジャーンジャーンジャーン……キーボード特有の自己主張をしない音が花畑のアトモスフィアを支配する。……ジャーン!「あっちだ」6

2012-08-29 16:29:51
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音の跳ね返りで人間やヨウカイを察知するこのジツは彼女が独自に編み出し姉たちに隠しているものだが、実際その姉たちも普通に使っているジツであった。「こんな辺鄙な土地に寄り付くなんてよっぽどの物好きなのね。おや」リリカが足を止めた。一人のヨウカイが倒れている。7

2012-08-29 16:33:20
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背はリリカよりも低い。薄桃色の装束を身に纏っている。髪は黒く、兎耳めいたフサフサしたものが頭についている。「そういえば姉さんが言ってたわね、スズラン畑に住んでるヨウカイがいるって」確か名前はメディスン。毒を操るとか言ったか。リリカは姉の言葉を思い出す。8

2012-08-29 16:35:48
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倒れているヨウカイは先ほどからピクリとも動かない。「寝てるのかな?これだけ騒がしくしたのに」リリカは頭上のキーボードを操作し、精神を落ち着かせるメロディーを流しながら、ヨウカイのワン・インチ距離まで近づく。「メディスン=サン……ア、アイエエエエエ!」9

2012-08-29 16:40:34
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リリカの絶叫が響いた。倒れていたヨウカイは口から泡を吹いて気絶している。軽い痙攣を見るに、まだ息はあるようだ。「泡吹いてるナンデ?毒ナンデ?」リリカは狼狽した。体の周りに紫色の霧がまとわりつく。徐々にリリカの動きが鈍る!「グワーッ!何だよこれ、ヤバイ!」10

2012-08-29 16:44:55
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リリカはブザマにも痙攣するヨウカイの体を掴むと、空めがけ一直線に飛び上がった!ミヤモト・マサシも戦術書にしたためた「ヤバイときは逃げるのが最も良い」の極意だ!苦悶の表情を浮かべながら彼女は飛ぶ!さらに高度を上げ、住まいがある天空へと高く「アバッ」11

2012-08-29 16:52:09
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空を駆けるブッダエンジェルめいた姿勢で飛んでいたリリカがのけぞり、血を吐いた。抱えていたヨウカイが腕からこぼれ落ちる。「アバーッ!麻痺毒アバーッ!」すでにリリカの体にも毒が回っていたのだ。「アイエエエ!アイエーエエエ!」成すすべなく落下してゆくリリカ。12

2012-08-29 16:54:30
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両者は血泡を吹きながら落下してゆく。リリカも白目をむいて失神し、キーボードからは音楽とは言えない狂ったメロディーが流れている。彼女たちは重金属成分を含まない酸性雨とともに、竹林の中へと落ちていった。13

2012-08-29 16:57:29
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「春ですよー」「春ですよー!」「春ですよ!イヤーッ!」「グワーッ!」「春ですよ!」「春ですよ!イヤーッ!」「イヤーッ!」「春でグワーッ!」「イヤーッ!」「春……アバババ、アバーッ!」「イヤーッ!」「アバーッ!サヨ」爆発四散!「ヨウセイは知性が無くてヤーネ。もう夏よ」15

2012-08-29 17:27:55
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「環境に文句を言う奴に晴れ舞台は一生来ない……フーリンカザンの教えと矛盾しているのよねぇ。ミヤモト・マサシと武田信玄は実際どちらが強かったのかしら」片手でリリーホワイトを結界ごと爆発四散させたこのヨウカイは、倒されたクローン毛玉とともにリリーを片付けた。16

2012-08-29 17:31:47
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「ところで、いつまで隠れているつもりかしら?」彼女は不意に周りの植物に話しかけた。一部の植物が急成長し、黒い装束に身を包んだ金髪の少女を縛り持ち上げる。「グワーッ!」「さて……今日のお昼ご飯は何にしようかしらね」「冗談キツイぜ。ドーモ、ハジメマシテ。タカギ・マリサです」17

2012-08-29 17:37:07
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「ドーモ、マリサ=サン。カザミ・ユウカです」そのヨウカイは丁寧にオジギをすると、縛り上げたマリサを逆さ吊りにした。「グワーッ!」腕に、足に、そして首に蔦植物が絡み付く!「ア、アバーッ!オイオイ、助けグワーッ!」「何をしに来たのかしら、カワイイ泥棒さん?」18

2012-08-29 17:40:21
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「顔に息を吹きかけないでくれアバッ」「ファハハハ!ブザマね、今度は私の何を盗むつもりだったのかしら?」ユウカは逆さ吊りにした際落ちた帽子を被ると、マリサの鼻の頭を舐めた。(ヤメロー!ヤメロー!)声が出ない。ツタはすでにマリサの口を塞ぐほどにまで成長している。19

2012-08-29 17:44:11
YOUKAISLAYER @YKSLYR

(ナンデ?私はただアイサツをしに来ただけなのに)マリサは必死にもがくが、彼女の平凡なヨウカイ腕力では引きはがすことすらままならない(彼女はヨウカイではないため当然だ)。「ファハハハ!」(畜生……ブッダファックだ!冗談じゃねぇ、ハッケ・コンバーターは修理中だってのに)20

2012-08-29 17:47:27
YOUKAISLAYER @YKSLYR

(クソッ、何が普通の友好的なヨウカイだ。変態のサディストじゃねェかよ。ヤバイぜ……アヤの奴、私をハメやがったな)マリサはこの狂ったヨウカイ、カザミ・ユウカの情報を捏造新聞記者から聞いたことを後悔した。(アイツめ、いつかヤキトリにしてやるぜ。だが今はこっちだ)21

2012-08-29 17:51:04
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マリサは現実に目を戻した。頭に血がのぼり、視界がぼやけている。「噂は聞いてるわよ。マスタースパークもどきの使い手さん」ユウカは右手を前に翳すと、掌にダンマク粒子エネルギーが蓄えられてゆく!(オイオイ……冗談だろ……)「イヤーッ!」ダンマク・レーザーが放たれる!22

2012-08-29 17:55:24
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ナムアミダブツ!極太レーザー光線、マスタースパークが植物ごと飲み込んだ!エネルギーの奔流が周りの植物をも消滅させてゆく……タカギ・マリサ死す!?だが見よ!無傷で倒れ伏す一人の人間あり!「ゲホッ、ゲホーッ!な、何とか助かった……のか?」タカギ・マリサだ!23

2012-08-29 17:58:27
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「ファファファ、アナタ面白いわね」ユウカはマリサの両肩を掴んで持ち上げ、強引に立ち上がらせた。「今のはアンタイプラント・レーザー、植物にだけ効果のあるダンマク。残念だけど威力しか真似できないハッケロカラテでは真似なんて到底無理よ」「……そいつはドーモ」24

2012-08-29 17:59:46