かおるさとーさんの『氷菓』#19 解説

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かおるさとー @kaoru_sato

『氷菓』19話を観て気づいたことをいくつか。

2012-09-01 22:39:18
かおるさとー @kaoru_sato

今回も1話完結の短編です。タイトルは『心あたりのある者は』。すごく好きな話なので、アニメ化が決まったときから、ずっと心待ちにしていました。しかしアニメ化するにはかなりハードルの高い話だとも思っていたので、もしかしたらアニメ化されないこともありうると考えていました。

2012-09-01 22:39:45
かおるさとー @kaoru_sato

元々動きの少ないアニメ『氷菓』ですが、この話は2人の会話だけで話が進行していくという、特に“動きがない”話です。小説としてはおもしろいのですけどね。しかしこうして京アニがアニメ化してくれました。ミステリのアニメ化としては実に恵まれている〈古典部〉シリーズです。

2012-09-01 22:40:06
かおるさとー @kaoru_sato

『心あたりのある者は』はハリイ・ケメルマンの『九マイルは遠すぎる』のオマージュです。いわゆる“推理連鎖型”のミステリで、あるセンテンスから物事を推理し、推論に推論を重ねていく話になります。奉太郎と千反田さんの“ゲーム”は、どのように進行していくでしょうか。

2012-09-01 22:41:23
かおるさとー @kaoru_sato

(『九マイルは遠すぎる』は表題作を含む連作短編の構成になっていますが。推理連鎖の全体的な構成のオマージュとしては、『心あたりのある者は』より〈小市民〉シリーズの1作目『春期限定いちごタルト事件』の方が強いと思います。こちらの方もぜひ)

2012-09-01 22:43:14
かおるさとー @kaoru_sato

まず冒頭。奉太郎のいる1年B組は小テストの真っ最中。彼のモノローグから話が始まりますが、この「本日は晴天なり」のくだりは原作とほぼ同じです(小テストはありませんが)。これは奉太郎が、自分の推理能力についての認識を表したたとえ話ですね。

2012-09-01 22:43:40
かおるさとー @kaoru_sato

Aパート。放課後の地学準備室には、奉太郎と千反田さんの2人しかいません。里志と摩耶花は来ていないみたいですね。それとも先に帰ったか。基本的に活動目的不明の古典部は、放課後に必ず4人全員が揃うわけではありません。里志は手芸部と総務委員、摩耶花は漫研と図書委員を掛け持ちしていますし。

2012-09-01 22:43:56
かおるさとー @kaoru_sato

奉太郎がふと思い出したように、千反田さんの伯父・関谷純の葬式について訊ねます。窓際に飾ってある『氷菓』が目に付いたからでしょう。千反田さんは滞りなく済ませることができたと言い、それから奉太郎にお願いをします。伯父の墓にお線香を上げてほしいと。お墓参りですね。

2012-09-01 22:45:11
かおるさとー @kaoru_sato

一緒に行ってほしいという千反田さんのお願いを、奉太郎は了承します。そっぽを向きながら、頬を微かに染めるところがいいですね。

2012-09-01 22:45:34
かおるさとー @kaoru_sato

墓参りというのは、親戚以外だとなかなか同行する機会はないですから、同伴してほしいと言うのは珍しい話だと思います。お墓は、なんといいますか、生きている人にとってもデリケートな場所ですので、むやみに他人に踏み入ってほしくはないでしょう。千反田さんの奉太郎に対する意識の高さが窺えます。

2012-09-01 22:46:18
かおるさとー @kaoru_sato

(ここでは千反田さんの感謝の念や、尊敬、敬意の大きさなどが感じられると思います。「氷菓事件」は奉太郎の働きによって解決した面が大きいですから。慕っていた伯父に奉太郎を会わせたかったのかもしれません。もちろん、異性としての意識もあるとは思いますけどね)

2012-09-01 22:46:59
かおるさとー @kaoru_sato

千反田さんが改めて奉太郎を褒めそやします。千反田さんの目には、奉太郎の推理の冴えはとても見事なものとして映っているみたいですね。これまでに大小様々な謎を解き明かしてきましたから、そう思うのも当然かもしれません。特に千反田さんは、自身で解決できない、気になることが多すぎますから。

2012-09-01 22:47:28
かおるさとー @kaoru_sato

しかし奉太郎は違います。冒頭の「本日は晴天なり」の話からもわかるように、彼は自分のこれまでの働きを運だと考えています。ここは奉太郎にとって譲れない部分です。なぜなら彼の省エネ主義という観点に沿うなら、頼られたり高く評価されることは主義が脅かされることにつながるからです。

2012-09-01 22:48:50
かおるさとー @kaoru_sato

現に、千反田さんに頼られることによって、彼の省エネ主義は揺るがされています。人から頼りにならない奴だと軽んじられることは、省エネに概ね影響がないので問題ではありません。しかしあいつはたいしたものだ、頼りになる奴だ、と思われるのはまずいのです。

2012-09-01 22:49:11
かおるさとー @kaoru_sato

奉太郎は自分に特別な才能なんてないと考えていますから、なおさら頼りになると勘違いされては困るわけです。だから千反田さんの言を真っ向から否定しました。要するに、あまり買いかぶるなということです。

2012-09-01 22:49:30
かおるさとー @kaoru_sato

(まあ、まったく通じていませんけど。控えめらしいですよ、折木さん)

2012-09-01 22:50:29
かおるさとー @kaoru_sato

『理屈とシップはどこにでもくっつく』。……日本語が比較的堪能な折木奉太郎らしからぬ間違いです。正解は『理屈と膏薬はどこにでもくっつく』。原作では間違えません。そしてそのことで「折木さんって、たまにあまり使われない言葉を使いますよね」と千反田さんにくすくす笑われます。

2012-09-01 22:51:24
かおるさとー @kaoru_sato

(アニメの方が高校生らしいかもしれません。こんな言葉を日常会話の中で使える高校生とか……)

2012-09-01 22:51:39
かおるさとー @kaoru_sato

奉太郎がふと思い立ち、ある提案をします。状況をひとつ提示して、それに対して推論を立ててやると言うのです。千反田さんが目を輝かせて提案に乗ってきますが、これはいつもの気になりますとは少し違いますね。奉太郎にしては実に珍しい提案だったために、興味が湧いたのでしょう。

2012-09-01 22:52:14
かおるさとー @kaoru_sato

(いつもは不思議なこと、わからないことが気になる千反田える嬢です。まあ、奉太郎のこともわからないことだらけかもしれませんが)

2012-09-01 22:53:17
かおるさとー @kaoru_sato

(ところでこの場面、奉太郎の提案内容が少しだけ改変されています。原作の「そう簡単に理屈をくっつけられないと証明してやる」が「どんなことにでも、理屈をくっつけられると証明してやる」となっています)

2012-09-01 22:53:56
かおるさとー @kaoru_sato

(前者の場合、奉太郎が手を抜いて「さっぱりわからん降参だ」とでも言ってしまえばそれで勝負がついてしまいます。ここではそのことを考慮して改変されたのだと思います。彼の性格を考えると、なんだかんだで真剣に考えてくれるとは思いますが)

2012-09-01 22:54:13
かおるさとー @kaoru_sato

(つまり「理屈をつけることは特別なことではなく、誰にでもできることだ。しかしそれが事実であるとは限らない。たとえどんなに間違った、でたらめな考えを持ち込んだとしても、もっともらしい理屈をつけることはできるのだ」ということを証明するための台詞改変だと考えられます)

2012-09-01 22:54:36
かおるさとー @kaoru_sato

そのとき、校内放送が流れてきました。「10月31日、駅前の巧文堂で買い物をした心あたりのある者は、至急、職員室柴崎のところまで来なさい」。千反田さんがこの校内放送について推論を立ててくださいと提示します。奉太郎もにやりと笑い、これを受けます。さあ、ゲーム開始です。

2012-09-01 22:54:57
かおるさとー @kaoru_sato

ここからは推理の過程をひとつひとつ追っていくことにします。アニメを観ていればわかる流れだとは思いますが、一応順を追って整理し、まとめてみます。わかりやすいかどうかは、私には判断がつきませんが……。

2012-09-01 22:55:37
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