ヨウカイスレイヤー第五話より「バット・フー・イズ・ザ・イービル・ヨウカイ」#3

第五話「フラワリング・サツバツ・ナイト」 ファンタズマゴリア・ケイム・フロム・ジゴク #1:http://togetter.com/li/352567 バット・フー・イズ・ザ・イービル・ヨウカイ #1:http://togetter.com/li/361069 続きを読む
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YOUKAISLAYER @YKSLYR

サクヤは辺りを隙無く見まわし、やがて胸元に「店長」とポップ体で書かれているキモノワイシャツを着たカチグミ風の女を見つけると、肩を掴んで振り向かせた。「ドーモ、店長=サン。お時間はよろしくて?少しお聞きしたいことが」サクヤは笑みを浮かべながら優しく言った。26

2012-09-03 20:16:51
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「アッハイ、何なりとおっしゃって下さい」「ここに食用の人間はいるかしら?」「アイエッ!し、食用……?人食いヨウカイナンデ!?」「大丈夫……落ち着きなさい、私は人間です」サクヤは今にも失禁をしそうな店長を介抱した。ヨウカイリアリティショックは浅いようだ。27

2012-09-04 19:41:31
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「アバッ……スミマセン、大丈夫です」強いプロフェッショナル意識を持つ彼女は血混じりの涎をぬぐいながら答えた。「それで、あるのかしら?」「アッハイ、血であればこちらに」店長は真空パックされた血液が並ぶコーナーへとサクヤを案内した。「ありがとう」「ドーモ」二人はオジギを交わす。28

2012-09-04 19:42:44
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その一角は加工肉の隣にあり、棚の上には何故かガスマスクめいたオブジェが飾られている。サクヤは特Bとゴシック体で大きく書かれた血液袋を二つカートに入れ、他にいくつかの日用品や紅茶の茶葉、パチュリーに頼まれていたエイエン・テイ製のビタミン剤などをカートに入れ、会計へと向かう。29

2012-09-04 19:44:21
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サクヤは無人レジの方へと向かった。基本人間と関わることの少ないサクヤにとって、一日に多くの人間と関わることを良しとしていなかったためだ。彼女は素早く合計金額を打ち込み、この店舗専用のカードを挿入する。キャバァーン!小さな電子音とともにカードとレシートが吐き出される。30

2012-09-04 19:47:04
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実はこの時点で料金は支払われていない。この店では江戸時代から続くツケ払いの風習を守っており、オーボンとショーガツの二回、客からまとめて代金を取り立てるという奥ゆかしい文化を続けているのだ。このオーバーテクノロジー・無人レジはカッパ・ヨウカイたちが作ったとされている。31

2012-09-04 19:52:25
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金額が印字されたレシートとともにカードを懐にしまうと、サクヤは丁寧に買ったものをカバンに詰め込み、施設を後にした。ドンツクドンツクポーウ……ロック歌謡ポップスのベースラインが建物の外にも響いている。商業施設の周りは住居がひしめき合い、人間たちが平和に暮らしている。32

2012-09-04 19:55:46
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人里を離れると、怪しいアトモスフィアが流れる竹林地域へとサクヤは足を踏み入れる。途端に空気が変わり、昼間からサケを食らっている人間やヨウカイ、非合法ヤクザ・ヨタモノなどが行き交っている。潰れたケバブ屋台の下でクローン毛玉を身に包み、床に寝ているマケグミもいる。33

2012-09-04 19:56:46
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「君すごくカワイイだよね?」「いいお仕事アルヨ?」「前後しない?」ボンボリに集まる夏のバイオショジョオバエめいて手を延ばしてくるヨタモノの腕や首を、ナイフでケジメしないように切り捨てながらかわしてゆく。後方で叫び声が起こるが、ここではチャメシ・インシデントなのだ。34

2012-09-04 19:59:59
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サクヤはナイフの血を拭いながら歩き、一帯の端に位置する屋台の中へと入った。「いらっしゃいませー」「ドーモ。フライドチキンを頂きに来たわ、イザヨイ・サクヤです。」「ドーモ、サクヤ=サン。フライドチキンはちょうど売り切れたわ。ミスティア・ローレライです」店主がアイサツを返す。35

2012-09-04 20:04:04
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「では蒲焼きをいくつか」「いつものオーガニック・ウナギを五つで良かったかしら?」ミスティアは慣れた手つきで蒲焼きをパックし、サクヤに手渡した。背中から翼を生やしている彼女はヨウカイであった。サクヤはかわりに武田信玄がプリントされた折り目の無い紙幣を手渡す。「ドーモ」「ドーモ」36

2012-09-04 20:06:13
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「アンタのとこは出不精ばかりね。今度は全員で焼き立てを食べに来なさいよ」「ではその時までにフライドチキンをよろしくお願いしますわ」サクヤはミスティアといくつか言葉を交わすと、カバンに蒲焼きを詰め込み屋台を後にした。彼女と入れ違いに二人のヨウカイが屋台へ入った。37

2012-09-04 20:08:19
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屋台を出ると、道の向こう側でヨタモノがうつ伏せに倒れていた。「おや、あんなところに人なんていましたかしら」怪訝そうな顔をしたサクヤはヨタモノに近付き、そこで気が付いた。ナムサン、十人以上のヨタモノやサンシタヨウカイ達が呻き声をあげながら倒れている。まるでツキジだ。38

2012-09-04 20:10:14
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倒れ伏すヨタモノの体を仰向けに反す。胸と手首に致命的な斬撃を受け、血が流れ出している。「あら、私ここまでしちゃったかしら」サクヤは近くを見回す。犯人はまだ遠くに入っていないはずだ。じきに誰かが警察を呼ぶだろう。蒲焼きも冷める。無慈悲にもサクヤは放置しておくことに決めた。39

2012-09-04 20:12:46
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実際それらの必要は無かった。サクヤは時を止め振り向く。一人の少女。手にはカタナ。右に動く。時は動き出す。「イヤーッ!」長刀が空を斬る!「イヤーッ!」サクヤはナイフを投擲!少女は走りぬき、振り返ると同時にカタナを横薙ぎに払った。キインという音とともにナイフが地面に落ちる。40

2012-09-04 20:13:57
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「ツジギリとは時代錯誤な。ドーモ、ヨウム=サン。貴方も毒にやられたのかしら?イザヨイ・サクヤです」サクヤはオジギをすると買い物カバンを脇に置き、遠方へ一本ナイフを投擲した。「ドーモ、サクヤ=サン。コンパク・ヨウムです。私が求める真理、貴方で確かめさせていただきます」41

2012-09-04 20:15:01
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「バット・フー・イズ・ザ・イービル・ヨウカイ」#3終わり #4に続く

2012-09-04 20:15:50