四式中戦車の主砲初期案―肩当て照準と同軸機銃の微妙な関係
- baron_yamaneko
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今月のグランドパワー10月号の内容「日本陸軍四式中戦車」では、四式中戦車(チト)の武装と称して国本氏が寄稿している。その内容がとても興味深い。
2012-09-07 01:22:03新中戦車(甲)……のちの四式中戦車は当初四十七耗戦車砲の搭載を予定しており、昭和18年までそれが継続している。昭和16年研究計画までは一式中戦車と全く同一の一式四十七耗戦車砲が搭載される予定だったが、昭和17年研究計画では試製双連四十七耗戦車砲なるものの搭載を予定されていた。
2012-09-07 01:27:24この双連式というのは別に四十七耗戦車砲を2門搭載するという意味ではなく、九七式車載重機と一式四十七耗戦車砲を双連にしたものだ。試製双連四十七耗戦車砲は昭和18年6月に研究を完了する計画が成され、昭和18年に搭載砲が変更されるまで研究が継続したものと推測される。
2012-09-07 01:31:18何故双連式の砲の研究を始めたのか。それは日本の砲塔に搭載している車載重機の運用の歴史から始まる。
2012-09-07 01:33:10日本の砲塔機関銃は砲塔後方に搭載してある。所謂「かんざし式砲塔」と呼ばれるもので、これは別に後方を射撃する為に据え付けられているわけではない。あくまで前方射撃用の機銃で、砲を使用中に敵の歩兵がやってきた場合に砲手が砲塔を回して機関銃を前方に向けて対処するものである。
2012-09-07 01:36:01しかしこの独特の砲塔機銃の仕組みにも弊害がある。砲塔を回し機銃を扱う砲手はこの際に敵歩兵を視察しながら砲塔を旋回させることは困難であり、機関銃を前方に向けてから発見した敵歩兵を再度探しても発見できないことが多かった。
2012-09-07 01:39:29それを嫌ってか、接近する歩兵に対しても機銃に変えることなくそのまま搭載砲を使用する砲手も多く、太平洋戦線ではその砲の装填の合間を狙われてバズーカ砲などの対戦車兵器でゆっくり狙いを付けられ対処されることもままあった。
2012-09-07 01:41:28このような旧軍戦車の持つ欠点を克服するため、ドイツのⅢ号戦車のように搭載機関銃を戦車砲の同軸機関銃にしたい。これが試製四十七耗戦車砲の開発の発端だった。この砲の開発は一式中戦車では間に合わず、次の新戦車(甲)、つまり四式中戦車で実用化の道が探られた。
2012-09-07 01:45:19わざわざ砲に機関銃をくっつけるだけで、何故これだけ大げさのように研究しているのか。それは旧軍戦車が持ち合わせる特性が一つの障害になっていた為だ。
2012-09-07 01:46:58日本の戦車砲は「肩当照準機構」という諸外国には無い独特の機構を持ち合わせていた。これは旧軍戦車が敵の陣地帯に突入してトーチカ等を破壊するのが第一の目標であり、敵トーチカ等の対戦車兵器に対等に撃ちあえるよう、照準を一人で素早く行う必要があったために開発された機構だ。
2012-09-07 01:51:39このため戦車砲には、砲塔全体を旋回する機構の他に肩で簡単に砲を動かせる肩当照準機構がついていた。これは諸外国にはない独特の機構なのだが、肩で簡単に戦車砲を動かせるため、そのまま同軸に機関銃を装備すると射撃時の反動がもろに砲手にかかる。
2012-09-07 01:55:36その上、砲の反動を抑える為に戦車砲の回転軸は砲の中心に一致させてあるので、機関銃は必然的にこの回転軸のかなり離れた所に搭載されることとなる。そのせいで機銃射撃を行うと射撃時の反動が回転モーメントとなり、反動による砲架の回転を抑えながら射撃する必要性に駆られるのだ。
2012-09-07 01:59:33そのため反動を抑えるための制退機を開発する必要性があり、同様の双連式砲を採用した一〇〇式三十七耗戦車砲と一式三十七耗戦車砲の双連機銃では諸外国の例を見ないほどの大型の制退機を搭載することとなった。九八式軽戦車「ケニ」、二式軽戦車「ケト」、特二式内火艇等がそれに当たる。
2012-09-07 02:05:52このように試製双連式四十七耗戦車砲は順調に開発されていたものの、四十七耗戦車砲を既に威力不足であり、昭和18年当初の研究計画でさえ五十七耗戦車砲搭載を本命として開発が進められており、それは最終的に昭和18年の研究計画の改正で四十七耗砲搭載計画は完全に潰えたのであった。
2012-09-07 02:09:56@Nyarlathotep_44 お疲れさまでした。旧軍戦車の主砲同軸機銃は、100式37mm砲の1939年研究開始が最初なのでしょうか。
2012-09-07 02:22:21@baron_yamaneko だと予想できますね。初の搭載例も九八式軽戦車のそれだろうと思われます。五式中戦車のそれも大型性退機を搭載しているようで、旧軍車両の肩付式砲の大半がこの双連式の改良をされたのではないかと思われます。
2012-09-07 02:25:53@perie_JP 私が撃ったことがないので、兵の主観に左右される精度の話は残念ながら分かりませぬ。
2012-09-07 02:01:06@Nyarlathotep_44 @perie_JP 走行中に射撃するのがハンドル旋回などでは極めて困難なのに対し、肩当てなら訓練次第でなんとかなったという話は聞きます。
2012-09-07 02:19:46@Nyarlathotep_44 戦車砲の肩当照準機構は、日本以外でも採用例はあるようです。米軍のM2A4はギア解除して砲架を肩当て操作できますし、チェコのLTvz38(独軍の38t)も砲架に立派な肩当がついてるので多分いけるはず。
2012-09-07 02:38:21@baron_yamaneko あら、そうなのですか。M2A4は明らかにギアがイカれた時の緊急用なんでしょうけど、チェッコのLT-38が肩当対応なのは初めて知りましたね。他国はどうやって反動による各種負担を制御しているのかが気になります。
2012-09-07 02:45:34@Nyarlathotep_44 図面見たことないですが、英軍のクルセーダー巡航戦車も俯仰角は肩当て照準だとのこと。http://t.co/rIdhZuqk にFletcher,David (1989)“Universal Tank”を出典で書いてあります。
2012-09-07 02:44:26クルセーダーが肩当とは初めて聞きました QT @baron_yamaneko: @Nyarlathotep_44 図面見たことないですが、英軍のクルセーダー巡航戦車も俯仰角は肩当て照準だとのこと。
2012-09-07 02:48:49クルセーダー巡航戦車の場合、肩当照準方式が行進射を行う英軍の戦車運用に合致していたとのこと。銃眼狙撃や行進射などで精密照準をしようとすると、肩当てが選択肢になったのでしょうかね。一方米軍はM3軽戦車で行進射用にジャイロスタビライザーを使った
2012-09-07 02:50:28