「経済学的な家族ツイート」まとめ その30

担任は昔の自分に思いを馳せた。理想に燃え、ただひたすらにその道を邁進した当時の自分を。だが、高邁な理想はやがて彼を異なる道へといざなってゆく。理想と現実の狭間で揺れ動く、シリーズ第30弾公開!
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本の虫(本体) @honnomusi

経済学的な担任の転向1:担任は履歴書を凝視する。そして、目の前の面接者に目を向ける。教師「それで、うちで働きたいと?」面接者「はい、ここの理念に共感しました。ぜひ働かせてください」担任は履歴書を机の上に置いて身を乗り出す。担任(私が教師を志したのは、大学2年生のときだった)

2012-09-16 12:35:58
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経済学的な担任の転向2:担任(私は大学入学当時、経済学を学んでいた。別に、経済学が好きだったわけではない。それどころかどんな学問かも分かっていなかった。目指したのは偏差値が高かったからだ。しかし、そんな私が衝撃を受けた授業があった。教育経済学だ。)

2012-09-16 12:41:19
本の虫(本体) @honnomusi

経済学的な担任の転向3:担任(人は生まれながらにして平等ではない。しかし、教育は人々の人的資本の蓄積を助け、魅力的な職業に就くことを手助けし、貧困から這い上がる可能性を与える。家庭が貧しくても、奨学金などの支援を使って進学し、就職することができれば、新たな可能性が開ける。)

2012-09-16 12:41:33
本の虫(本体) @honnomusi

経済学的な担任の転向4:担任(私は目を輝かせながらその話に聞き入った。格差是正に役立ち、生徒との強い絆を作ることができる。私の求めたものがここにあると確信した。私はすぐに教育学部への転部を思い立ち、教員資格を取るために日夜勉学に励んだ。)

2012-09-16 12:43:56
本の虫(本体) @honnomusi

経済学的な担任の転向5:担任(その当時、私は塾講師のアルバイトをしていた。内に秘めた志だけでは人は大きな成果を残すことはできない。実践し、その手応えを感じることで、志は天高く燃え上がるのだ。私は嬉々として生徒の育成に取り組んだ。)

2012-09-16 12:46:39
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経済学的な担任の転向6:担任(そんな中、私の受け持つ生徒の中で気にしている子が一人いた。彼女は大学受験を控えていたのだが、身体の弱い子で、受験のプレッシャーもあり学校を休みがちだった。日々の薬代を負担しながらも、両親は娘の将来を思い教育を施すために私を雇ったのだ。)

2012-09-16 12:50:29
本の虫(本体) @honnomusi

経済学的な担任の転向7:担任(私は担当する生徒の誰よりも熱心に彼女を指導した。このような子を救うために、自分は教育の道を志したのだ。格差是正、親から子へと受け継がれる、形のない財産。その担い手になれることを誇りに思った。)

2012-09-16 12:54:00
本の虫(本体) @honnomusi

経済学的な担任の転向8:担任(終わりは突然にやってきた。家族から契約更新をしないという通知が来たのだ。病気の症状が重くなり、より一層薬代がかかるようになったことが原因だった。)最後の授業を終え、担任は荷物を鞄にしまう。生徒「・・・先生」担任「・・・ん?どうしたの?」

2012-09-16 12:56:58
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経済学的な担任の転向9:生徒「ごめんなさい」生徒は頭を下げた。担任「どうしたんだよ、いきなり」生徒「私がこんな病気にかかっちゃったから…」生徒は顔をそむけた。生徒「関わる人、みんなに迷惑をかけて…」担任「そんな自分を責めないで。君が元気に生きることが一番の恩返しなんだから」

2012-09-16 13:00:47
本の虫(本体) @honnomusi

経済学的な担任の転向10:担任「それに、教師と生徒の関係は今日で終わりだけど、これからは対等な立場で向き合えるわけだしね。何か悩みがあったら相談に乗るよ。」生徒「・・・」担任「だからほら、元気出してさ、ね?」

2012-09-16 13:02:34
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経済学的な担任の転向11:担任(数日後、彼女は引っ越しをしていた。家賃が払えなくなったためだ。そのことについて、私には何の相談もなかった。「これからは対等な関係」なんて、私の勝手な思い込みに過ぎなかった。私は彼女の兄貴分ではなく、ただの契約関係で結ばれた、商取引の相手だったんだ)

2012-09-16 13:05:35
本の虫(本体) @honnomusi

経済学的な担任の転向12:空き家になったドアに背中を預け、担任は頭をかきむしった。担任(教えてくれ、教育は格差を是正するためのものだろ?それなのに、奨学金を返せない学生が大量に発生するのはなぜだ?この不景気の中で教育費だけが下がらないのはなぜだ?なぜ教育格差なんて言葉が出て来る)

2012-09-16 13:09:44
本の虫(本体) @honnomusi

経済学的な担任の転向13:担任(それから数年後、私は教師になった。だが、私はこの道にはもう余り期待していない。教師として、私の理想を実現できるようになるには何十年かかるか分からない。その間に、あの子のような理不尽に直面して、この志は息絶えてしまうかもしれないのだ。)

2012-09-16 13:16:50
本の虫(本体) @honnomusi

経済学的な担任の転向14:担任(一刻も早く結果を出さなくてはいけない。確かな手応えを感じてこそ、志は天高く燃え上がり、偉大なる結果を残すことに繋がるのだ。)面接者から話を聞いた担任。しばらく相手の顔を見つめた後で、微笑を浮かべる。担任「なるほど、君の志はよく分かった」

2012-09-16 13:19:03
本の虫(本体) @honnomusi

経済学的な担任の転向15:立ち上がって、担任は手を差し出した。担任「今日から、君と私たちは仲間だ」面接者は笑顔になり、担任とがっちりと握手をする。担任「・・・ようこそ、スナッチャーズへ」

2012-09-16 13:21:04
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政治経済学的な息子の直訴1:母「・・・準備はいい?」息子「うん」息子は手に抱えた神束をもとに頷く。数週間前、息子の自宅にPTAの役員たちが集まっていた。息子は担任の粉飾決算について説明する。役員「・・・なるほど、話は分かりました」役員は眼鏡を外す。

2012-09-16 13:53:32
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政治経済学的な息子の直訴2:役員「PTAの会員からの署名を集めた上で、調査を依頼します。報告に関しても厳しくチェックゆくつもりです。保護者の会費が外から分からないことのために使われるのは問題ですからね。会員から特別に反対が出ることもないでしょう。」

2012-09-16 13:57:10
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政治経済学的な息子の直訴3:息子「それにはどれぐらい時間がかかるんですか?」役員「そうね、一ヶ月ぐらいかしら」息子「ええっ、そんなにかかるんですか?!その間に証拠を消されてしまうかも・・・」役員「焦る気持ちは分かるわ。でもね、こういう大きな問題の解決には時間がかかるの。」

2012-09-16 13:59:33
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政治経済学的な息子の直訴4:役員「先生方だって日々の仕事に追われているわ。だから、保護者の人たちの賛同を得ないことには調査を依頼してもなかなか動かないの。人の責任を追求するならなおのことね。そういう団結がしやすいように、私たちPTAは日々の活動によって繋がりを確保しているの。」

2012-09-16 14:04:09
本の虫(本体) @honnomusi

政治経済学的な息子の直訴5:役員「それに、調査を依頼するのはこうしてまぎれもない数字になって、紙として出ているものよ。隠そうとしても、一度公に出してしまったものを隠すのは無理よね。この食い違いについて納得ゆく説明が出るまで、私たちは追求の手を緩めるつもりはありません。」

2012-09-16 14:06:22
本の虫(本体) @honnomusi

政治経済学的な息子の直訴6:役員「学校側が非協力的な態度を取ってきたとしたら、こちらとしてもより厳しい対抗措置を取ることになるでしょうね。仮に領収書などの物的証拠が残っていなかったとしても、圧力をかけ続けて何としてでも犯人を見つけ出すわ。」

2012-09-16 14:10:43
本の虫(本体) @honnomusi

政治経済学的な息子の直訴7:役員たちが帰った後、母親は洗濯物を干していた。背後から息子が声をかける。息子「ねえ、母さん」母「何?」息子「あの人凄いね。戦う気満々だった」母「子供のためならいくらでも戦うのが母親なのよ」振り返りながら続ける。母「まあ、子供育てるのも戦いだしね」

2012-09-16 14:15:59
本の虫(本体) @honnomusi

政治経済学的な息子の直訴8:ドアをノックする息子。中から教員が出て来る。息子「本日の12時からアポを取らせていただいた者です。教頭先生と〇〇先生はいらっしゃいますか?」教員「ああ、〇〇先生はね、今日入院したって連絡がありましたよ」息子「・・・え?」

2012-09-16 14:20:35
本の虫(本体) @honnomusi

政治経済学的な息子の直訴9:担任(・・・なぜだ?なぜ俺はこんなところで仰向けに倒れている?確か最後に会議をしていて・・・っ!!)頭痛を感じて顔をしかめる。声「・・・どうした?」担任はハッとして目を開けた。転校生「記憶でも飛んだか?偽善者め」転校生の邪悪な笑みがそこにはあった。

2012-09-16 14:39:01