『もしドラ』著者が語る「偉大な小説家に必要な視点」

『もしドラ』著者の岩崎夏海さん@huckleberry2008 と、編集者の加藤貞顕さん@sadaaki の会話が面白かったので。岩崎さんの経験から語る「偉大な小説家に必要な視点とは?」 岩波少年文庫のドンキホーテはこちら→http://www.amazon.co.jp/%E3%83%89%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%AD%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%86-%E5%B2%A9%E6%B3%A2%E5%B0%91%E5%B9%B4%E6%96%87%E5%BA%AB-506-%E3%82%BB%E3%83%AB%E3%83%90%E3%83%B3%E3%83%86%E3%82%B9/dp/4001145065
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岩崎夏海 @huckleberry2008

おれは無類の正論吐きだった。ある時その圧倒的な不利さにめまいがした。おれ、どんだけ修羅の道歩いて来たんだよ……それで、不必要なことを言うのをやめた。いつもニコニコ笑って他者の話に心からの関心を寄せるようになった。友だちが百人できた。

2012-09-16 23:22:33
岩崎夏海 @huckleberry2008

その後、縁あって小説を書くことになる。ところがそこで予想外のこと――いや、薄々分かっていたことが起きた。小説を格上でおれを助けてくれたのは、修羅の道を歩いてきたおれ自身だった。そして、それが修羅の道だと気づき、日和って宗旨替えをしたおれだった。

2012-09-16 23:24:01
岩崎夏海 @huckleberry2008

過去のつらかった経験が、おれを助けた。その時に思った。「人生って捨てるところがないなぁ」。大根と一緒で、全てのパーツを美味しく頂くことができるのである。試練も、困難も、不幸でさえも。

2012-09-16 23:25:03
岩崎夏海 @huckleberry2008

最近また、余計なことをするようになった自分がいる。でも、そういう自分をなんとなく信じられる自分もいるのが以前とは違うところ。あ、おれバカやってんな。でも、そのバカなことが、あとでおれを助けてくれるかもな。だから、他人から見ても、いや、おれから見てもバカなことをする。

2012-09-16 23:26:42
加藤 貞顕 @sadaaki

@huckleberry2008 修羅の道の話、おもしろいです。修羅の道から日和ったことがどう小説を書くのに役立ったか、できればもうちょい知りたいです。

2012-09-16 23:35:43
岩崎夏海 @huckleberry2008

@sadaaki 簡単に言うとメタの視点を持てた。正論吐きと正論吐きなどくそくらえという二つの視点を持てたことで、視点のレイヤーが一段メ上がった。その俯瞰の視点から見ると、両者が社会の中でどのような機能を担っているかの理解が進んだ。それはキャラ造形に振幅を与えた。

2012-09-16 23:39:46
岩崎夏海 @huckleberry2008

@sadaaki よく本の解説をしないという小説家がいるけど、そんなのかっこわりいぜ、という視点を持てた。以前の正論吐きならそれはできなかった。

2012-09-16 23:41:59
岩崎夏海 @huckleberry2008

@sadaaki 小説家は小説で語るべきだという考えと、小説家は小説の内容を十全に解説する必要があるという二つの視点を同時に持つ、これが小説家として成長を促した。振り向くと、歴史上の偉大な小説家はみんなその視点を持っていた。で、あ、おれ、ここまで来たんだという実感が持てた。

2012-09-16 23:42:50
岩崎夏海 @huckleberry2008

@sadaaki 小説家はそういう確信がないと前に進めない。確信がより所でありエンジン。人間が一生に一作は小説を書けるというのは、この確信があるから。自分のしてきたことだからと確信が持てた時、人は小説を書ける勇気を抱ける。

2012-09-16 23:44:01
加藤 貞顕 @sadaaki

@huckleberry2008 なるほどなるほどおもしろいです。このぼくへのメンションと、その次の解説しない小説家の話、どっちもブロマガの1記事になりそうなトピックスですね。おおお、まだ次が。メンションだとみんなが見えないからもったいないですよ!

2012-09-16 23:44:20
岩崎夏海 @huckleberry2008

@sadaaki 名前を出して悪いけど、近藤 麻理恵さんの「人生がときめく片づけの魔法」は人が一生に一度しか書けないという種類の小説。誰も気づいてないけど。だから魂がこもっていたので、読む人が感化された。山本氏の例のあれもそう。だから、もったいないなと思った。

2012-09-16 23:45:56
岩崎夏海 @huckleberry2008

@sadaaki まあ、近藤さんも山本さんも小説家じゃないからいいのかもだけど。おれはまあ小説家でもあるので、そういうのは書きません。歴史上の偉大な小説家はなぜかそういうのは書かない。あ、続けて書く人は、という意味です。一作だけなら偉大な小説家は多い。ミッチェルとか。

2012-09-16 23:47:41
加藤 貞顕 @sadaaki

@huckleberry2008 たしかに継続はポイントですね→「一作だけなら偉大な小説家は多い。ミッチェルとか。」

2012-09-16 23:51:50
加藤 貞顕 @sadaaki

@huckleberry2008 いやあ、めちゃくちゃおもしろいですよ。もうひとつ質問いいですか。自作の十全な解説っていうのは、実際に、作品とは別に普通に解説するってことですか? 「歴史上の偉大な小説家はみんなその視点を持っていた」ってのもちょっとよくわからないのですが。

2012-09-16 23:51:01
岩崎夏海 @huckleberry2008

@sadaaki 自分の作品へのとんちんかんな批評について反論したりするのがだいじなのです。「ドン・キホーテ」後編はそれをコンセプトに書かれ、歴史上ナンバーワンの作品になった。

2012-09-16 23:55:12
加藤 貞顕 @sadaaki

@huckleberry2008 なるほど。そうなんですね。「ドン・キホーテ」、はずかしながら未読なので、読みます。俄然興味がわきました。

2012-09-16 23:58:50
岩崎夏海 @huckleberry2008

.@sadaaki 「ドン・キホーテ」の完全版は超絶長いからまずは岩波少年文庫版から読んだ方がいいですよ。

2012-09-17 00:01:07
加藤 貞顕 @sadaaki

@huckleberry2008 おお、そうなんですね。ご指導ありがとうございます。

2012-09-17 00:06:18
岩崎夏海 @huckleberry2008

メンションを入れるとメンション相手をフォローしていない人には見えない仕様なのか。知らなかったです。

2012-09-16 23:51:44
加藤 貞顕 @sadaaki

.@huckleberry2008 そうなんですよ。みんなに見えるようにしたいときは、いまやってるみたいに.をつけて書くといいです。このやりとり面白かったから、だれかがtogetterしてくれないかなあと期待age。

2012-09-16 23:53:34