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高橋源一郎氏自身による、’’新著『悪と戦う』メイキング’’

非常に貴重な内容だと思われますので、文献として残す為、急遽まとめました。読者の方とのやりとりは割愛しました。編集の際は、予告編および本文のみで、お願いします。
小説 高橋源一郎 文学
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高橋源一郎 @takagengen
予告編① あと少し、24時頃から「メイキングオブ『「悪」と戦う』」という連続ツイートを始めます。毎日、同じ時間に少しずつ、二週間ほど続ける予定です。中身は、ぼくの新作に関するあらゆること。具体的には始めてみないとわかりません。なにしろ、ふだん寝てる時間帯だから、起きられるか……。
高橋源一郎 @takagengen
予告編② ツイッターを始めて4カ月、なんとなくわかったことがあります。それは、ツイッターの「公共性」が、小説の「公共性」とよく似ていることです。いや、「小説」の「なにをやってもかまわない」という性質が、ツイッターのそれとよく似ているといっていいかもしれませんね。
高橋源一郎 @takagengen
予告編③ ツイッターという「歩行者天国」で、ギターを抱え、通りすがりの人に歌うおじさん(「なに、あの人? お客いないじゃん」)をやってみます。一つ決めているのは、ツイートすることは、ふだんぼくが原稿として書いているものと同等以上のクオリティーにすること。そしてそれを無料で配る。
高橋源一郎 @takagengen
予告編④ 昨日(今日?)、ツイッター上で、岡田斗司夫さんと町山智浩さんの間でちょっとした「論争」がありました。岡田さんが「社長の岡田さんに月1万円ずつ払う社員でできている会社」を作ろうとしたことに、町山さんが「違法ではないか」と言ったのです。確かに町山さんの言う通り、違法です。
高橋源一郎 @takagengen
予告編⑤岡田さんはなぜそんな変なことを思いついたのか、岡田さんは、社員から1万円ずつ集めた会社(そこでは岡田さんが社員にスキルを教えます)からの金で生活し、その代わり、どこかへ原稿を書く場合はすべて無料で書こうと考えたのです。ひとことでいうなら、「商品経済からの離脱」です。
高橋源一郎 @takagengen
予告編⑥ どんな表現も「商品経済」から逃れられないとするなら、岡田さんの「会社」は単なる夢想にすぎないのでしょうか。「商品経済」はきわめてよくできたシステムです。しかし、ぼくは、「商品経済」の「外」に、可能性を見いだそうとする岡田さんの強い願望がわかるような気がしたのです。
高橋源一郎 @takagengen
予告編⑦ 岡田さんの「会社」もまた、新しい「共同体」への希求の現れでしょう。そして、そういう人を見ると、人は「なんておかしなことを考えてるんだ、狂ってる」と言ったりするのです。でも、狂ってなきゃできないこと、狂ってなきゃ見えないこともあるんですけどね。
高橋源一郎 @takagengen
予告編⑧ 最初のツイート以外にはなにも決めていません。ふだん原稿を書く時と一緒です。キース・ジャレットみたいに即興です。途中で立ち往生するかもしれないし、子どもたちが寝ぼけて書斎に侵入してくるかもしれない。その時はごめんなさい。それでは、「午前0時の公共性」をお待ちください。
高橋源一郎 @takagengen
メイキングオブ『「悪」と戦う』① この間、ゼミで村上春樹さんの『1Q84 』BOOKⅢを読んで、みんなの感想を訊いた。みんなはそれぞれ、テーマやメッセージや隠された謎やその解釈についていろいろしゃべってくれた。なかなかのものだった。その時、T君が、突然こんなことを言い出したのだ。
高橋源一郎 @takagengen
メイキング② 「テーマもメッセージもなにもないと思うんです。空っぽなんだと思うんです」。「じゃあ」とぼくは言った。「そこにはなにがあるの?」。すると、T君は、「村上さんは、小説を書いているんだと思う。というか、小説を書きたいんだと思う。ただそれだけ。他にはなんにもなし」
高橋源一郎 @takagengen
メイキング③ 「いちばん大切なのは、小説を書くこと、他はどうでもいい!」。T君の発言は、みんなを困らせた。なにがなんだかわからない。でも、ぼくはものすごくおもしろいと思ったんだ。村上さんのその本が、そうであるかは置いておくとして、T君は、ふつうの人が思いつかないことに気づいた。
高橋源一郎 @takagengen
メイキング④ ふつう、小説で大切なことというと、作者が言いたいことや、物語や、テーマや、文体やら、ということになる。でも、T君によれば、小説は、なにも積んでいなくても、ただそれだけで価値がある、積載物ではなく、それを積んでいる本体(車体?)の方に意味がある、のだ。
高橋源一郎 @takagengen
メイキング⑤ なんだか抽象的な話になっちゃいそうだなあ。いかんいかん。具体的な話をしてみよう。「小説しかない」という小説の、最近のもっともいい例は東浩紀さんと桜坂洋さんの『キャラクターズ』だと思う(もちろん、「小説しかない」わけじゃなく、それ以外のものもたくさん詰まっているが)。
高橋源一郎 @takagengen
メイキング⑥ ぼくは『キャラクターズ』の評価が低いことに、というか、際物扱いされることにほんとにガックリしていた。東さんの『クォンタム・ファミリーズ』は「文学作品としては」『キャラクターズ』よりずっと上かもしれないが、「小説の強度」としては、『キャラクターズ』の方が上だ。
高橋源一郎 @takagengen
メイキング⑦ 『キャラクターズ』をの読者は(というか、批評する側は)、例外なく困惑する。作者がふたりいること、にだ。ぼくたちは、作者というものは一人であり、その一人しかいない作者のメッセージを解読することが「読む」ことだと「思わせられている」。
高橋源一郎 @takagengen
メイキング⑧ もしふたりの作者が、作品内で勝手に、それぞれの道を行ってしまったら、読者はどう解読していいのか、自信をもって言うことができなくなってしまうだろう。でも、それでいいのだ。わからなくっても。というか、わからなくするために、作者は、小説という手段を用いているのだ。
高橋源一郎 @takagengen
メイキング⑨ 小説というものは、ほんとうは「『私』は、『私』以外の他人、『私』以外の『私』を実は理解できない」ということを証明するために書かれているからだ(とぼくは思っている)。だから、誰が書こうとほんとうは小説なんか意味がわからないのだ(他人の考えていることがわかりますか?)。
高橋源一郎 @takagengen
メイキング⑩ なのに、ふだんぼくたちは、わかったような気がしてしまう。他人が考えていることがわかるような気がしてしまう(そんな気にさせてしまう点こそ、多くの小説の重大な「罪」)。そんなぼくたちの目の前に、ふたりの作者が書いた一つの作品が現れる。ただそれだけでぼくたちは不安になる。
高橋源一郎 @takagengen
メイキング⑪ ふたりの異なった意見を持つ他人が目の前にいる。面白いのは、そのふたりがお互いに理解し合ってはいないように見えることだ。だから、ぼくたちは不安になる。彼らの間にコミュニケーションがないように、ぼくと彼らの間にも理解し合えるものはなにもないのではないか。
高橋源一郎 @takagengen
メイキング⑫ 以前、ある雑誌で阿部和重さんと中原昌也さんが「共作」するという話が出た。実現はしなかったけれど(たぶん)、その話を聞いた時、ぼくは「さすが」と思った(「馬鹿なことやってる」という反応が大半だった)。小説がほんとうはなに(でありうる)のか彼らにはわかっていたのである。
高橋源一郎 @takagengen
メイキング⑬ 小説はひとつの「公共空間」だ。公共空間とは「複数の、異なった、取り替え不可能な『個』がいる空間」だ。なぜ、そんなものを書こうとするのか、それはぼくたちが日々「公共空間」を生きているからだ。もしくは、いま生きている世界に「公共性」を取り戻したいと考えているからなのだ。
高橋源一郎 @takagengen
今日の予告編① 昨晩は「メイキングオブ『「悪」と戦う』にお付き合いねがい、ありがとうございました。びっくりするくらい反響がありました。一晩でフォロアーも500人以上増えました。今晩も、「歩行者天国」で、24時スタートの予定です。
高橋源一郎 @takagengen
予告編② 昨日は、小説について一般的な話をしました。今晩は、もっと具体的なことを呟くつもりです。『「悪」と戦う』を執筆していた時に起こった「事件」、そして、45年前に大江健三郎さんの小説に起こった「事件」、その二つについてツイートする予定です。変なことを言わないよう気をつけます。
高橋源一郎 @takagengen
予告編③ 最初のツイートと大まかな内容は決めていますが、やってみないとわかりません。昨日も言ったように、すべて即興。準備なし、メモなし、すべて記憶が頼りです。途中で立ち往生したらその日はそれでお終い。間違いは、後で訂正します。
高橋源一郎 @takagengen
予告編④ 準備なし、メモなしは、講義や講演も同じで、だったら90分は大丈夫なはずですが、どうも30分ちょっとが限界みたいです。100メートル競争や潜水泳法みたいに、無呼吸でしゃべってる感じだからです。体にはよくありませんね。
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コメント

🗡💃さくら🗡💃 @iiijinzenjiii 2010年5月9日
RT @takagengen: メイキング3の⑲ 「弱者」は「守るべきもの」だと社会は言います。でもその「守る」は「排除する」という意味です。「弱者」とは「ふつうではない人々」のことです。しんちゃんがなるかもしれなかった「障害者」、「老人」、「病人」、もしかしたら「在日外国人」や「女・子ども」もそうかもしれない
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