ファスト・アズ・ライトニング、コールド・アズ・ウインター #4

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

マグライトが照らす冒涜的アトモスフィアのトンネルを進みながら、デッドムーンは思い出したように小型の機械を手渡す。小さな液晶パネルと、ダイヤル状のインターフェイス。「アリアドネの糸だ。互いの位置を掴み、道程を記録する。はぐれたらマグロの仲間入りだぜ」「成る程」 23

2012-09-19 21:34:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アリアドネと言えば、以前、ダイダロスというニンジャがいた。死んだようだが」ニンジャスレイヤーは珍しく無駄話を切り出した。デッドムーンは歩きながら肩を竦めた「実際、このダイダロスには、しっかりミノタウロスもいるってわけさ……それもウジャウジャとな……」(訳註:ギリシア神話) 24

2012-09-19 21:41:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「それはゾンビーか」「ゾンビーで、ニンジャだな」とデッドムーン。「深淵におわしますリー先生は、徘徊する野生化ゾンビーニンジャなぞ、お構いなし……上層の住人は自己責任で暮らしてる。ナリコが鳴れば、シャッターを降ろして息を潜め、行き過ぎるのを待つ」「住人か」「そう……生活」25

2012-09-19 22:09:39
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

トンネルを抜け、スロープを下ると、前方に明滅する蛍光ボンボリの明かり。膝を抱えて座る痩せこけた男が二人を見上げる。ニンジャスレイヤーは警戒したが、デッドムーンは首を振った「生活さ……」「リー先生への通報の……」「そういう好奇心を摩滅させた連中なんだ」どろりと濁った瞳。 26

2012-09-19 22:21:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ネオン看板。通気パイプ。廃モールのシャッター街を思わせる……だが、それよりも余程ゴタついて圧縮された猥雑な通路が彼らを出迎えた。デッドムーンは身振りで進行方向を示し、進む。右手にはオートマチック拳銃。「ゾンビーが出たら頼むぜ……今の俺は無力な市民なんでな」「了解した」 27

2012-09-19 22:27:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

デッドムーンは小型端末を参照した。水色のバックライトが彼の顔をゴーストめいて照らす。「最近行き倒れの回収をしたエリアへのルート……マグロチェンバー区画に隣接してる。その時は余分なモノを回収する余力が無かったんだが、恐らく手付かず……あれから手が入ってなけりゃ、イケるかもだ」 28

2012-09-19 22:34:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……ダンゴ」嗄れ声。朽ち潰れた壁に見えた場所が実際シャッターであり、スルスルとめくれ上がった。奥から骸骨めいた老人が身を乗り出した。「ダンゴ。実際安いけど」「また今度な」デッドムーンは手を振った。ニンジャスレイヤーもそれを横目に、後に続く。遠くで水の流れる音。 29

2012-09-19 22:41:58
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

再びの下り斜面。壁には色褪せた「質屋すぐに」のミンチョ文字。「リー先生はいつ、こんな場所を?」「そう昔じゃない」デッドムーンは答えた。「人間は綺麗な場所を汚くするのが得意だよな……」斜面を下り、「火災発生時閉鎖」と薄く書かれた隔壁の裂け目をくぐると、急に気温が下がった。 30

2012-09-19 22:53:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「涼しくなってきたろ」デッドムーンはジャケットのジッパーを上げ、マグライトを振った。「まだ先だ。無駄な脇道が多い。アンタに忠告する必要は無いだろうが、はぐれないよう頼むぜ」「うむ」隔壁を越えて以降、途端に生活者の気配は絶えた。ニンジャスレイヤーは別の存在を感じている。 31

2012-09-19 23:04:47
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

彼らはドーム状の天井の下、開けた空間に出る。明かりを微かに受ける天井には「第三施設」のカンジ。何の三番目なのか、何の施設なのか、その意味するところは、電子戦争以前の過去に置き去りなのだ。奥にあるゲートをデッドムーンは指差す。「この先にエレベーター」スタスタと歩いてゆく。 32

2012-09-19 23:13:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーはやや遅れてその後に続く。パワリオワー!その時、突然のけたたましい電子音が鳴り響いた。「何だ?」デッドムーンが振り返った。ドーム天井にライトがせり出し、広間を煌煌と照らす!パワリオワー!光と轟音がニンジャスレイヤーのニンジャ第六感を遅らせた。KRAASH! 33

2012-09-19 23:16:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「グワーッ!?」次の瞬間、ニンジャスレイヤーは落下した!足元の床が崩れたのだ!「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーはフックロープを放つ!だが、フックがかかった淵もまた崩れた!「ニンジャスレイヤー=サン!」覗き込むデッドムーンが見る見る小さくなり、闇に呑まれた。「アリアドネだ!」 34

2012-09-19 23:20:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ヌゥーッ……」落下!落下!やがて竪穴の側面には明滅するライトが並び出す。闇から光の中へ投げ落とされながら、ニンジャスレイヤーはコートを振り捨て、空中で身を捻ってキリモミ回転した。回転はやがて色彩を生み、底部にヒラリと着地した彼は、赤黒のニンジャ装束を身に纏っていた。35

2012-09-19 23:44:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

どれほどの高さを落ちた事だろう?ここはいわば円筒の底だ。ニンジャスレイヤーはジュー・ジツを構える。装束を身に纏ったのは、イクサの為だ。落ちながら彼は下方にニンジャソウルの存在を感じ取っていたのだ!一秒後、目の前のゲートを壁ごと破壊し、肥満した4メートルの巨人が突入してきた!36

2012-09-19 23:50:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「AAAAARGH!」手に持つ棍棒状の無骨な金属を振り回す肥満した死肉は、ニンジャスレイヤーを見下ろし、緑の目を輝かせた。頭髪は生えておらず、額から上には皮膚も無い。白い頭蓋骨が無造作に露出しているのだ。そして鼻から下を覆う、江戸戦争めいた鋼鉄製のメンポ! 37

2012-09-19 23:54:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「フゴーッ!フゴーッ!」巨人が肩を揺するたび、メンポから白い息が立ち昇る。生者めいて呼吸しているのか?そしてこの凍るような寒さ! ニンジャスレイヤーは「忍」「殺」とレリーフされたメンポを取り出し、装着した。「……現れたか」「フゴーッ!フゴーッ!」 38

2012-09-19 23:58:47
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

屍肉巨人は騎士の敬礼めいて棍棒を正中線上に構え、オジギした。ニンジャなのだ!「……ドーモ……タイフォーン……デス」「ドーモ、タイフォーン=サン。ニンジャスレイヤーです」彼はオジギを返した。礼節を示す敵にはアイサツで応じるべし。古事記にも書かれた鉄則!たとえゾンビー相手でもだ!39

2012-09-20 00:05:52
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

オジギから身を戻すや、タイフォーンの金属棍棒が異様なモーター音を鳴り響かせた。シュイイイイイ……見よ!棍棒にはダイヤル錠めいた恐るべき金属塊が更に埋め込まれている。それが内部機構によって高速回転しているのだ。何の為に?知れた事!ネギトロめいて敵を残虐グラインド殺する為だ! 40

2012-09-20 00:12:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは側転した。コンマ1秒後、彼がいた場所をネギトログラインダー棍棒が通過!床を砕く!「フゴーッ!」タイフォーンがよろめく!そのこめかみに深々と突き刺さったスリケン!ニンジャスレイヤーは側転しながらスリケンを投げていたのだ!「フゴゴーッ!」 41

2012-09-20 00:21:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

通常のニンジャであれば、あるいは致命傷になりえたスリケン傷だ。だがニンジャスレイヤーの戦闘経験は告げている。ゾンビーの耐久力を侮るわけにはゆかぬ。何程の事もあるまい!「フゴーッ!」横殴りに襲いくるネギトログラインダー棍棒!「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは回転跳躍した! 42

2012-09-20 00:24:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ネギトログラインダー棍棒を跳び越し、丸太めいた腕を蹴って更に跳躍!「イヤーッ!」先程と逆側の側頭部に飛び蹴りを叩き込む!「フゴーッ!」タイフォーンの上体が仰け反る!だが、耐えた!なんたるニンジャ耐久力!「フゴーッ!」空中のニンジャスレイヤーめがけ、下から上へ!棍棒が襲い来る!43

2012-09-20 00:33:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは両腕をクロスし、ブレーサーでこれを受ける!ガギギギ!耳障りな音と火花が散り、ニンジャスレイヤーは吹き飛ばされた。ニンジャスレイヤーは飛ばされた先の壁を蹴ろうとした。だがタイフォーンは棍棒を構えたまま、驚くべき対応速度で突進して来たのだ! 44

2012-09-20 00:36:39
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーは咄嗟にクロス腕で再度打撃を防御した。ガギギギギギ!「ヌゥーッ!?」ふたたび飛び散る火花と耳障りな音!ニンジャスレイヤーは壁と棍棒とに挟まれた!「フゴーッ!」タイフォーンが棍棒を押し込む!ネギトログラインダーがニンジャスレイヤーのブレーサー装甲を苛む!45

2012-09-20 00:39:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「フゴーッ!」ガギギギギ!耳障りな音と火花はブレーサーの悲鳴であり、血液だ!ニンジャスレイヤーは耐えた。打開策を見出さねばならぬ!「ヌゥーッ!」「フゴーッ!」ガギギギギギ!ニンジャスレイヤーは燃える目を見開く。地上ではアキモトが、エーリアスが待つ!マグロを必ず持ち帰るのだ! 46

2012-09-20 00:43:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(「ファスト・アズ・ライトニング、コールド・アズ・ウインター」 #4 終わり。#5 に続く)47

2012-09-20 00:43:41