【二次創作な】「グッドバイ・マイ・アストロノーツ」#5&エピローグ
星屑めいたカラテ粒子を散らしつつ、エンデバーは遠ざかってゆく。「悪いなあ、利用しちまったみたいでよ。でも俺も命がけだったんだ。いずれ野垂れ死ぬからさ、それで勘弁ザッ、ザザッ」ザーッ…。IRC通話が途切れる。ニンジャスレイヤーは流星を見送った。やがてそれは宇宙の闇に紛れた。24
2012-09-22 15:53:25アラート音がニンジャスレイヤーを現実へと引き戻した。酸素、バッテリー、燃料…全てが一〇パーセントを下回っている。敵マザーシップは崩壊し、脱出ポッドを奪う目論見は潰えた。彼は誰も居ない宇宙に独り取り残された。つい先程までのエンデバーと同じように。「いや、同じではない。ナラク!」25
2012-09-22 16:01:05彼の両目瞳孔がセンコめいて細くなり、同時に暗黒の炎が灯った。禍々しくもどこか穏やかに燃える炎だった。ニンジャスレイヤーは、ゆっくりと、だが決断的に高度を落とし、降下軌道に入った。26
2012-09-22 16:03:55スイングバイを繰り返しつつ数年かけて太陽系を脱出したエンデバーは、ボイジャーを追い越したあたりでカラテ粒子の放出をストップ。既に血中カラテは極限まで落ちている。彼は新陳代謝を止めセルフコールドスリープに入った。可能な限りの軌道計算は済ませた、後は運次第だ。彼はそれで納得していた。
2012-09-22 16:12:29何千年、何万年が経過したか?永遠の眠りと共に宇宙の果てを目指すはずだったエンデバーは、何者かに揺り動かされ目を覚ました。バイザー越しに彼が見たものは、大きなハスの花だった。「アーア…ダメだったか。ニルヴァーナまで来ちまった」「オッ、起きた。ニルヴァーナ?たぶん違うんじゃないかな」
2012-09-22 16:19:39ぼやけた視界が徐々に戻ってゆく。ハスの花に見えたのは、アグラ姿勢のニンジャだった。淡いピンク色のニンジャ装束、顔面は銀色のメンポに覆われている。「ドーモ、ザ・ヴァーティゴです。漂流してたから拾ったんだけど…もしかしてまずかった?余計な事した?」
2012-09-22 16:23:52「いや、いいんだ。どうせアテなんて無えしな。ドーモ、ヴァーティゴ=サン」「オット!ザを忘れちゃ嫌だぜ、俺はパラレルめいたあいつらとは違う。唯一無二なんだ」「…シツレイ、ザ・ヴァーティゴ=サン。エンデバーです。ニルヴァーナじゃなかったら、ここはどこなんだ?」「実は俺も迷っちゃって」
2012-09-22 16:31:07「…迷った?」「聞いてくれよ、なんか星間戦争とかでさ、カニ星雲まで行けって言われてさ、でもそんなのわかんないじゃん?幸いまだ聖遺物はあったからミーミーに頼めたんだけど…」エンデバーは天を見た。歪んだプラネタリウムは、しかし彼にとっては単なる地図だ。「あっちじゃねえかな」「えっ?」
2012-09-22 16:38:18「オッサン、ワカルの?」「だいたいだけどな。もうちょい取り舵だ」「すげえな!…なあ、案内頼めないかな。かにパルサーのマーメイド達が実際危ないらしいんだ。タコ星人の宇宙戦艦に包囲されてるとかで…」「イクサか」「うん」「カラテか」「うん」「…やろうじゃねえか。腕が鳴るぜ」「話早え!」
2012-09-22 16:45:44「カニ星雲だろ?タンホイザーゲート抜けたほうがハヤイぜ」「何だそれ」「任せとけって。こちとらアストロニンジャなんだ」エンデバーはザ・ヴァーティゴからミーミーの手綱を受け取る。不安げだった足取りは一気に加速、星々が後ろに…やがて前に流れてゆく。「ハラ減ったなあ」「キッシュでいい?」
2012-09-22 16:52:44「しばらくかかるぜ。なんかオハナシしてくれよ」「じゃあこんなのどう?ニンジャ殺しのニンジャ、その名もニンジャスレイヤー!」「…面白そうじゃねえか」「単行本持って来てたっけ…英語版だこれ。翻訳しなきゃ」「いいさ、時間はたっぷりあるんだ。ちょっとづつ読もうや」
2012-09-22 16:59:22