ノット・ザ・ワースト・デイ、バット・アット・リースト・カースド・エニウェイ #2
放たれたミサイルはまっすぐにバッテラ冷凍トレーラーをめがけて飛んだ。「イヤーッ!」レッドハッグは回転ジャンプし、斜め前の鉄骨輸送トラックに飛び移った。KABOOM!冷凍トレーラーにミサイルが着弾、爆発!ナムアミダブツ!「イヤーッ!イヤーッ!」レッドハッグはスリケンを投げ返す!23
2012-10-04 22:16:32カカカカカ、火花が散り、鬼瓦武装ヘリがわずかにバランスを崩す。ニンジャの投げるスリケンは銃弾よりも強いが、攻撃ポイントを絞り込む必要がある。レッドハッグはタバコを吐き捨て、片膝をついてさらにスリケンを投擲する。ジワジワとその口元に覆面が生成され、マフラーめいて布がなびく。 24
2012-10-04 22:21:45鬼瓦武装ヘリは射出前のミサイルの誘爆を怖れ、機銃掃射に切り替えた。2門のガトリングガンが迫り出し、レッドハッグを狙う。「!」レッドハッグは背後……つまり進行方向前方からの殺気をニンジャ第六感で感じ取る。ナムサン!検問バリケードが築かれ、数人のヤクザがバズーカ砲を構えている!25
2012-10-04 22:24:23「戦争でもしようッてのかい……」スリケンをさらに投擲。やがて鬼瓦武装ヘリのローター1基が火を噴き、バランスを崩した。レッドハッグはそのときすでに鉄骨輸送トラックから跳んでいた。別の車両?否……ハイウェイ高架から飛び降りたのだ!1秒後、彼女がいた場所をヤクザロケット弾が通過! 26
2012-10-04 22:27:30彼女はそのまま高架下のストリートへ着地。着地時に前転して全ての落下衝撃を殺すと、起き上がって走り出した。マンションからさほど離れる事ができなかった。どこかで体勢を整えたいが……役に立ちそうな協力者は……クラクズー?遠い。そしてカネがかかる。バーワー洞?冗談もいいとこ……。27
2012-10-04 22:45:44「ウェーゲホゲホ!」端末をいじりながら、狭い路地を選んで移動する。敵の正体がわからない。始末が悪い。「ブラザーフッド」の七人は一人残らず殺した。だから、あれは終わった事だ。別の連中が……複数のニンジャを、武装ヘリを惜しげも無く投入してくるような……。 28
2012-10-04 22:57:40最近のネオサイタマの闇の勢力図の変遷はドラスティックで、謎めいている。地域ごとの組織の再編成……粛正……フリーランスだったものが幹部に納まり、逆に、権力を欲しいままにした者がネオン看板に逆さに吊るされて見せしめになっていたりする。それら再編成の奥、さらに糸を引く何かがある。29
2012-10-04 23:00:22とにかくまず、戦う相手の正体を……。情報屋なり、何なりから……。情報端末のナビゲーションはたいした助けにならなかった。彼女は端末をしまい、顔を上げた。そしてカタナに手をかけた。ビルから飛び降り、彼女の目の前に着地したのは、赤黒装束のニンジャであった。 30
2012-10-04 23:09:05「ドーモ。ニンジャスレイヤーです」機先を制し、流れるようにアイサツしたのは赤黒のニンジャであった。レッドハッグはこれによりアンブッシュと逃走の選択肢を奪われた格好だ。彼女はアイサツを返す。「ドーモ。ニンジャスレイヤー=サン。……レッドハッグです」路地裏に殺気が満ちる。 31
2012-10-04 23:14:16ニンジャスレイヤーはジュー・ジツを構えた。レッドハッグは朱塗り鞘を構え、すり足で間合いを調節する。……ニンジャスレイヤー。噂に聞いた事はある。かつてネオサイタマでニンジャ狩りを行っていたとされるが、レッドハッグがニンジャになった時、既にその存在は都市伝説めいてぼやけていた。32
2012-10-04 23:20:31要するに、ニンジャを殺しに……レッドハッグを殺しに来たという事か?「アンタがソウカイヤを滅ぼしたってのは本当かい」レッドハッグは言葉を投げた。「そうだ」ニンジャスレイヤーは答えた。レッドハッグは言った「……キョートのザイバツ・シャドーギルドが実際やったって話もあるよ」 33
2012-10-04 23:26:21「"詳しい"な」ニンジャスレイヤーは低く言った。「どちらの説を取るか、イクサの後に決めるのも良い。だが」「……」会話しながら、両者は隙を窺う。殺気を堰き止めたダムが決壊する瞬間を。「カネが目当てか?」ニンジャスレイヤーが言った。レッドハッグは目を細めた。「カネ?」34
2012-10-04 23:35:05「オヌシがすり替えたライターだ、レッドハッグ=サン。私の調べでは、今回の件に関わるアマクダリ下部組織のニンジャにオヌシの名は無い。欲をかき、組織悪に荷担するか?」「ライター?」「おうむ返しをやめてもらおうか。時間の無駄だ」 35
2012-10-04 23:47:29「ライターって……ちょっと待ちな!」レッドハッグはカタナを抜き、ニンジャスレイヤーに切っ先をつきつけた。そのまま、ジャケットの懐に手を入れた。「人聞きの悪い事言ってンじゃないよ。これはアタシの……アタシの?」取り出したライターを見て、彼女は眉根を寄せた。「ハン?」 36
2012-10-04 23:56:16BOOM!その時だ。遠方から飛来した磁力弾丸が頭部に直撃し即死する光景を、レッドハッグは幻視した。ヤクザバウンサー時代の鍛錬と「ブラザーフッド」との闘いの中で研ぎすまされたニンジャ第六感である!「イヤーッ!」彼女は咄嗟に斜めに跳び、壁を蹴ってさらに上へ跳んだ。KABOOM!37
2012-10-05 00:01:54「イヤーッ!イヤーッ!」彼女は爆風から逃れるように壁から壁へ跳び、ビル屋上に着地した。下の路地は爆風と粉塵で霞んでいる。ニンジャスレイヤーはどうなった?BRATATATATATAT!「ンアーッ!」レッドハッグの背中を銃弾がかすめた。彼女は屋上を転がった。BRATATATAT!38
2012-10-05 00:05:01ナムサン、彼女のすぐ頭上を旋回するのは先程の鬼瓦武装ヘリだ。なんたるしつこい追跡!そして磁力弾丸攻撃は当然、ミョルニールだ!飛来角度からあのニンジャが狙撃姿勢を取る位置を割り出さねば……だがヘリをまずどうにかするのが先決だ。さらなる銃撃が襲いかかる!BRATATATATAT!39
2012-10-05 00:12:42「イヤーッ!」レッドハッグは側転で回避しながらスリケンを連続投擲!カカカカカカ、鬼瓦武装ヘリのローターが火花を散らす。4基のローターを半分にでもしてやれば、さすがに墜ちるだろう。「イヤーッ!イヤーッ!」カカカカ……「イヤーッ!」ヘリから黒い影が回転ジャンプで飛び降りた。 40
2012-10-05 00:17:35「イヤーッ!」レッドハッグは着地した新手へカタナ攻撃を繰り出す!「イヤーッ!」巨大な鞭状武器がカタナを跳ね返す。「イヤーッ!」レッドハッグはさらなる攻撃を諦め、隣のビルへ飛び移る。忌々しきは鬼瓦武装ヘリ! 41
2012-10-05 00:24:56レッドハッグのニューロンが加速し、次に取るべき行動を探す。武装ヘリの銃撃が一瞬止むと、先程の新手がビルの縁に進み出、下のレッドハッグを見下ろし、オジギした。ウェットスーツめいたサイバネ装束を身につけ、上半身は裸。灰色の皮膚。流線型のニンジャヘルム。「ドーモ。ワイバーンです」42
2012-10-05 00:31:21(「ノット・ザ・ワースト・デイ、バット・アット・リースト・カースド・エニウェイ」#2 終わり。#3 に続く)43
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