MC9太郎ナラティブ
@Gno_penO
魔術師は頷き、専用の採血ナイフで左手首を抉る。零れる血で地面に歪な紋様を描く。ケビンは畏れとともにその光景を見つめる。魔術師は慣れた手つきで止血の包帯を巻くと、他の二人に下がるよう促す。シュウシュウと音が聴こえ始める。紋様が沸騰しているのだ。やがて煙が立ち上り、奥へと流れだした。
2013-02-09 15:53:18
MC9太郎ナラティブ
@Gno_penO
浮浪者の言葉通り、左の道を暫く進むと、更に分かれ道、その先にまた別の分かれ道、と続いている。湿気と悪臭がひときわ強い。微かな鼾の音も聴こえる。「まるで迷路だ」ケビンが呟いた。「迷いやしない」浮浪者は足を止めた。「虱潰しにするんだ。一つ一つ」彼は魔術師を見た。「ここだ。急げよ」
2013-02-09 15:47:37
MC9太郎ナラティブ
@Gno_penO
「眠りの魔術の雲は空気より重い。下に流れる」浮浪者が魔術師のかわりにケビンに説明した。「ゴブリンは下へ下へと穴を伸ばす。お誂え向きだ」「そんな事じゃ大雨や洪水に困るな」ケビンは言った。浮浪者は笑う「奴らにはどうでもいいのさ」そして目の前で剣を振って見せた「さあ。手分けしてやるぞ」
2013-02-09 16:07:49
MC9太郎ナラティブ
@Gno_penO
「手分け?」「そうだ。殲滅だ」浮浪者は無雑作に頷いた。「全部?」魔術師が眉根を寄せた。浮浪者は答えた。「そうとも。残してどうする。後で面倒だ」「……」「ま、言わんとする事はわかる。こいつと違って、」ケビンを指差し、「俺にはわかる。お前の気持ちはな。だが、慣れない奴から死ぬんだ」
2013-02-09 16:23:57