キリング・フィールド・サップーケイ #4

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

KREEEEEKKKK!耳障りな軋み音を立てて、廃駐車場のドアが外から開かれる。ヤクザベンツが数台並び、デソレイションの逃走経路を塞ぐように威圧的なライトを閃かせていた。窓からはクローンヤクザたちがトミーガンを構える。ベンツ軍団の前に腕を組んで立つのは、アマクダリの追っ手。 23

2012-10-07 21:22:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ドーモ、デソレイション=サン。ホットショットです。……お前のごとき下等な野良ニンジャがサーカディアン・スリーを殺し、追っ手を殺し続けて、ここまで逃げおおせるとはな。組織はお怒りだ。ゆえに、この私が遣わされた」アマクダリ・ニンジャはごきごきと指の骨を鳴らしながら歩み寄った。 24

2012-10-07 21:29:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ドーモ、デソレイションです……どいつもこいつも、くだらねえ。さっさとやろうぜ」暗黒武道家は捨て鉢なコッポ・ドーを構えた。その口は黒装束に覆われ、表情は一切読めない。真白いサイバネアイだけが不気味に光る。ホットショットはほくそ笑む。久々にカトン・ジツを思う存分使えるからだ。 25

2012-10-07 21:34:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」ホットショットは神秘的パターンで腕をしならせた。すると炎に包まれた6メートルの金属鞭が瞬時に生成され……白熱した液体飛沫を撒き散らしながらデソレイションに襲い掛かる!「イヤーッ!」デソレイションは紙一重でこれを側転回避!飛沫が彼の背中と腕の肉をわずかに焦がす! 26

2012-10-07 21:46:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ヒュパウン!ヒュパウン!ホットショットは鞭を素早く引き戻すと、野蛮な猛獣を威圧的する猛獣使いの如きポーズで、廃駐車場のコンクリート床を叩いた。ぼとぼとと金属液体が溶け落ち、コンクリートが燃えるが、鞭自体が燃え尽きることは無い……カトン・ジツによって生み出された武器だからだ。 27

2012-10-07 21:51:34
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

デソレイションは鞭の動きを追い突撃を試みるが……ヒュパウン!機先を制する鋭い一撃が床に叩きつけられる。彼はこれを間一髪でバック転回避した。……脚が痛む。死にたくねえ。後ろに下がる。敵が距離を詰める。大きく動けばヤクザの弾幕で蜂の巣。広さはどうだ。いけるか。もっと誘い込め。 28

2012-10-07 22:00:39
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

デソレイションは鞭攻撃をかわしながら、油断の無いスリ・アシで後方へじりじりと下がる。一方のホットショットは、獲物を追い詰める昂揚感に満たされながら、敵の退路を少しずつ奪ってゆく。(((相手はジツを持たぬサンシタ……このまま間合いを保って戦えば、敗北可能性が見当たらん…))) 29

2012-10-07 22:05:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

デソレイションは廃駐車所の中央付近まで下がる。背後にはスクラップカーが積み重ねられ、もはや退路無し。肉の焦げる匂いが、錆び付いた大気を満たす。ホットショットが一気に止めを刺すべく、鞭を振り回した時……不意にデソレイションは腰溜め姿勢から両腕を高く掲げた!「サップーケイ!」 30

2012-10-07 22:11:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「グワーッ!?」ホットショットは一瞬ひるんだ!敵が真白い閃光を放ったかのように思えたからだ。……しかしそれは実際違った。次の瞬間、デソレイションとホットショットの姿は廃駐車場から消え……純白のショドー紙に墨絵で描かれたかのごときモノクロームの荒れ野で対峙していたのである! 31

2012-10-07 22:17:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

廃駐車場の外では、クローンヤクザたちが一斉に首をかしげていた。突如、もやがかかったように廃工場内の見通しが悪くなり、ホットショットの描いていた炎の軌跡が消え失せたからだ。びゅうと侘しい風が吹き、戦場跡の夜露にも似た冷気が、クローンヤクザたちの背中を撫でた。 32

2012-10-07 22:23:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……さあ、カラテしようじゃねえか」デソレイションは再びコッポ・ドーを構える。足元には彼が殺めた者たちの物言わぬ死体や骸が転がり、崩れた石灯籠の横では首の無いオイランが音の無いシャミセンを弾いていた。時折横殴りのノイズめいた突風が吹きつけ、二者の輪郭を頼りなく揺らめかせた。 33

2012-10-07 22:30:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ジツを持っていたのか!?」ホットショットは白黒に変わり果てた己の姿に驚きつつ、鞭を振り下ろそうとした。だがカトン鞭は消えていた。デソレイションが邪悪な笑みを浮かべる。「おれのジツだ。そして、てめえのジツは無しだ」硬質ラバーめいた黒い覆面が、僅かに引き伸ばされてしわを作る。 34

2012-10-07 22:35:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何だ!何だこれは!?ゲン・ジツの類か!?」ホットショットは後ずさりしながら、腰に吊ったアイクチ・ダガーで己の掌をえぐった。ゲン・ジツに対する最も一般的な対処法。だが結果は、掌から吹き出した黒い血がサンスイめいたサツバツ空間に垂れ、水に溶ける墨のように雲散しただけであった。 35

2012-10-07 22:42:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」デソレイションがスリ・アシで距離を一気に詰める。脚の負傷ゆえ完全ではないが、敵を至近距離の打ち合いに持ち込むには十分な速度。何も問題は無い。殺し屋稼業を営んでいた時も、万全な状態で戦ったことなど数えるほどしかない。これはスポーツなどではなく殺し合いなのだから。 36

2012-10-07 22:47:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」ホットショットは覚悟を決め、眼前の敵に対しカラテを繰り出す!カトン・ジツのみではない確かなワザマエがそこにある!だがデソレイションはシャウトすら発さず、淡々とコッポ・パリングでこれを捌く。そして……「イヤーッ!」痛烈な掌打!続けざまに肘打! 37

2012-10-07 22:55:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「グワーッ!」ホットショットは回転しながら後方へ吹っ飛び、廃れた石灯篭に命中!だがそこに物理存在感は無く、やはり水に溶ける墨の如く灯篭は消え失せた。地面に倒れた敵へと、デソレイションが歩み寄る。「イヤーッ!」反射的にホットショットは、カトン・スリケンのモーションを取る。 38

2012-10-07 23:00:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

……否、カトン・スリケンは生み出されない!全てのジツは打ち消されているのだ。「アホウめが!」デソレイションは鳩尾を蹴り飛ばす!「グワーッ!」ホットショットは目を剥きながら十数メートル転がって逃げる。だがどこまで転がっても、無限のサップーケイが続いているかのように思われた。 39

2012-10-07 23:03:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ガハッ!……ジツが!私のジツが働かない!何たる卑劣なジツか!」ホットショットは黒い血を吐き立ち上がった。平衡感覚喪失をニンジャ平衡感覚で辛うじて相殺しながら。「もっと言え。卑怯な戦い方はおれの十八番だ。何でもいんだよ。勝てりゃあな。モンドムヨーだ」デソレイションが近づく。 40

2012-10-07 23:10:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イイイヤアアアーッ!」ホットショットはアイクチ・ダガーを構えながら、ジュー・ジツを構えて突撃!デソレイションはこれをコッポ・パリングで捌いた後、ほとんど無意識の反射のようにカラテを働かせ、相手の手首を捻ってへし折ると、そのまま顔面に再度の掌打を叩き込んだ「イヤーッ!」 41

2012-10-07 23:15:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「グワーッ!」再び吹っ飛ぶホットショット!「まったく、おれにお誂え向けのジツだ。テメェ、さっきまでの威勢はどうした。ボール見せろ。ニンジャソウル見せろ。扱い方を知らねえのか。おれも最近知ったんだがな、オイランみてえに扱えばいいのさ」デソレイションは処刑人じみた足取りで迫る。 42

2012-10-07 23:21:34
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「殴ってよォ……蹴ってよォ……」デソレイションは敵を足蹴にしながら言う「……足腰立たなくなる位までブン殴ったらなァ、そのうちしおらしく、言うこと聞くようになったぜ……このジツもな……イヤーッ!」再び無慈悲な鳩尾蹴り!「グワーッ!」サッカーボールめいて転がるホットショット! 43

2012-10-07 23:26:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ホットショットは再び血咳を吐き立ち上がる。無音。圧倒的な無音。暴威の風が吹きぬける。デソレイションとホットショットの胸を詫しく突き抜ける。ホットショットはヤバレカバレの目つきを作る。カラテだ。叫び突撃する。音が消えた。デソレイションは邪悪な笑みを浮かべる。カラテが交錯する。 44

2012-10-07 23:30:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ホットショットのカラテストレート。捌く。前方回転踵落とし。捌く。バックナックル。捌く。再度の逆バックナックル。捌き、がら空きの腹部に膝蹴り。ホットショットの体が揺らぐ。続けざまのボールブレイカー。ホットショットは声の無い叫び声を上げる。その脚を掴もうと、骸が骨の手を伸ばす。 45

2012-10-07 23:39:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

デソレイションはザンシンを決める。前屈みになったホットショットは、小股で数歩前に歩いた後……倒れ爆発四散した。「呆気ねえ」デソレイションが無表情で呟く。びゅうと侘しい風が吹き、ホットショットの爆煙を吹き流した。ザリザリザリと横殴りのノイズ。視界が乱れ、サップーケイが消える。 46

2012-10-07 23:43:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

……クローンヤクザたちが廃工場跡に乗り込んだときには、すでにデソレイションの姿は無かった。ただ、ホットショットのものと思われる爆発四散跡がひとつ。デソレイションは炎上するセダンの横を抜けて強引に逃げ出し、道路に立ちはだかって車を止め、運転サラリマンを殺してこれを奪っていた。 47

2012-10-07 23:49:45