オペレイション・レスキュー #8
サブジュゲイターは体勢を立て直し、迫り来る敵に対応しようとする。ニンジャスレイヤーの燃えるような目は……その殺意は、敵を一方的に服従させる為に作られ、事実これまで一度の挫折もなく淡々と勝利してきたこのバイオニンジャの心臓を、死神めいた冷たい霊的鉤爪で鷲掴みにしていた。 1
2012-07-05 14:51:38「イヤーッ!」サブジュゲイターは炸裂スリケンを投擲!「イヤーッ!」まるでそれを見越したかのように、既にニンジャスレイヤーはスリケンを投げ終わっていた。BOOM!炸裂スリケンはサブジュゲイターの目と鼻の先で迎撃され、爆発!「グワーッ!」 2
2012-07-05 14:54:54この局面での炸裂スリケンへの過度の依存は実際悪手であった!サブジュゲイターは全身から出血し、身悶えする!非凡なニンジャ回復力がすぐに治癒して行くが、ニューロンの動揺は彼自身も驚くほどに深い!「貴様は何者だ!」サブジュゲイターは叫んだ「私は秩序そのものだ。秩序へ牙を剥くか!」 3
2012-07-05 15:01:15「イヤーッ!」「グワーッ!」拳がサブジュゲイターの顔面に叩き込まれる!よろめくサブジュゲイターを追撃するかわり、ニンジャスレイヤーは拳を握り仁王立ちした。そして低く言った「秩序だと?企業?システム?……何するものぞ……芝居の書き割りにも劣る虚飾を傘にきるか、道化め!」4
2012-07-05 15:19:28ヨロシサンの最新プログラムをニューロンに直接刻み込まれ、強靭でしなやかなバイオ筋肉とあいまって、並のニンジャ憑依者では相手にならぬカラテを生まれながらに身につけたサブジュゲイターであったが、今やニンジャスレイヤーは、彼のエリート・カラテを呑み込もうとしていた……憤怒によって! 5
2012-07-05 15:28:27彼の怒りとはニンジャへの怒りであり、即ち、突き詰めればそれは理不尽な抑圧に対する怒り、他者の命をいたずらに弄んで省みぬ者たちの無自覚な悪意に対する怒りであった。彼はサブジュゲイターの、ヨロシサン製薬の行いのその先に、象徴的な邪悪を見出していた。彼はジュー・ジツを構え直す……。 6
2012-07-05 15:36:24サブジュゲイターはもはや壁を背にしていた。彼はハイドラを見た。音を立て、失われた上半身が再生した。「グワーッ!」震えながら起き上がる。傍に立つディスカバリーがサブジュゲイターを見た。「アンタの助けにはならんな、こいつはもう。俺も痛い思いをしたんだ。納得してくれねえか」「何……」7
2012-07-05 15:41:30「ハイドラ!わかるか!」「ボス?」ハイドラはフォレストを見返す「アンタと戦ってたな、俺は。苦しいし腹が減った」ハイドラは床に散らばる己の四肢を見た。「夢じゃねえのか。これ以上やったら死んじまう」「バカめ……」フォレストは俯いた。ディスカバリーは言った「な?感動的再会ってわけよ」8
2012-07-05 15:46:27サブジュゲイターは上を見た。クローンヤクザの最後の一人が心臓を撃ち抜かれ、手摺を乗り越えて落下するところだった。サブジュゲイターはディテクティヴを見る。数箇所を撃たれており、気力で立っているような有様だが、サブジュゲイターの視線に気づくと不敵に笑い、ガン・スピンをして見せた。9
2012-07-05 16:00:38「ヌゥーッ!」サブジュゲイターは唸った。カラテを。目の前のニンジャスレイヤーを排除するカラテを……ニンジャスレイヤーがワン・インチ距離に接近、中腰に……「イヤーッ!」「グワーッ!」突き出された拳が腹部を直撃!ポン・パンチだ!サブジュゲイターは身体をくの字に折り曲げ吹き飛ぶ! 10
2012-07-05 16:09:07「グワーッ!」KRAAAASH!三たびニンジャの衝突を受けた壁が、ついに砕ける!サブジュゲイターは壁を粉砕しながら奥の闇に落ちていった。「イヤーッ!」フォレストが間髪いれず回転ジャンプし、穴の淵に飛びついて、その奥の闇を凝視した。「……地下水路」「水路か」とディスカバリー。11
2012-07-05 16:11:55なんたる事か?壁を隔てた向こうは川の流れる天然の洞穴であった。天然であるが、岩壁には警戒色のペイントや「出禁」のカンジが施されている。ニンジャスレイヤーはザンシンを解き、振り返るディスカバリーを見た。「水を引き込んでいるんだ、この施設に」ディスカバリーは言った「逃げられたな」12
2012-07-05 16:15:02「やるか、お前ら。やらねえよな」ガンドーが銃底で首を叩きながら近づく。「やるなら今度だ。わかったな」よろめく長身を、ニンジャスレイヤーが咄嗟に支えた。フォレストは編笠を被り、マチェーテをしまった。「援軍要請によくぞ応えた。素晴らしい戦果だ。その点、感謝させてもらいたい」 13
2012-07-05 16:33:08UNIXモニタが点滅し、ナンシーのメッセージが映る。「念の為ここのデータを全消去」「だとよ」ガンドーは言った。「カートゥーンではこの後、施設が自爆したりするンだ。だからさっさと退散したほうがいい」 「……」「今日は何人やった?1、2、3、4、5……殺し損ねもあるが、十分だろ」14
2012-07-05 16:45:00「アイエエエ」サーバー機器の陰で、生き残りサラリマンが震えた。「殺すな」ニンジャスレイヤーがフォレストを見た。フォレストは答えず、いまだニンジャスレイヤーを睨むハイドラの肩をどやした。「撤退する。戦果報告と軍法会議は後だ」「ボス……そいつは誰だよォ」「新入りだ」「後輩か!」15
2012-07-05 16:50:02ビョーキトシヨリヨロシサンビョーキトシヨリヨロシサンビョーキトシヨリヨロシサンビョーキトシヨリヨロシサンビョーキトシヨリヨロシサンビョーキトシヨリヨロシサンビョーキトシヨリヨロシサンビョーキトシヨリヨロシサンビョーキトシヨリヨロシサン目覚めたか。サブジュゲイター=サン」 17
2012-07-05 17:14:38サブジュゲイターは己のいる場所を認識しようとした。安らぎフートンを跳ね除け、立ち上がった。患者キモノを着せられている。部屋の隅には己のニンジャ装束が畳まれていた。茶室めいてごく狭い。窓も無い。壁と同じ水色の四角い扉、目の高さに格子窓がある。その向こうに人影がある。 18
2012-07-05 17:31:35「お前は無事救助された。社員数名と共に。大儀であった」「ここは」サブジュゲイターは声の主を訝しんだ。合成音声めいた、だが不快では無い、ともすれば音楽的な声であった。格子の向こうで来訪者が答える。「ヨロシサン製薬本社だ。お前はネオサイタマに移送された」「今は……いつです」 19
2012-07-05 17:36:26「予測外インシデントが重なった結果であるから、お前はケジメやセプクをせんでいい。お前は社の安全保障の要であるから」「失礼ですが……貴方は?」「休むがよい、サブジュゲイター=サン。ただ休むがよい。社に忠実であれ」「貴方は……」フードを被った人影の正体は定かで無い。 20
2012-07-05 17:39:37「お前の野心ももっともである」人影は唐突に言った。サブジュゲイターは背筋に氷を当てられたような衝撃を受けた。「お前は優れた存在であるゆえに」「……」「だが、お前はヨロシサンのニンジャを知らぬ。私を知らぬ。それがお前のウカツであり、不幸であった。私はお前をアワレに思う」 21
2012-07-05 17:43:47「貴方は?」「休め、ただ休め、サブジュゲイター=サン」「貴方は……」人影は身を翻した。再び眠気が襲ってきた。サブジュゲイターは倒れた。 22
2012-07-05 17:45:15かつてオフィスであった廃ビルのフロアにおいて、光源はUNIXモニターと、そこへLAN直結した小型ドロイドの赤い光のみ。弱い電子の灯りが、モニタを覗き込むナンシー・リーの顔を一色で照らす。その側でニンジャが一人アグラし、もう一人は、大の字に身を投げ出す格好で仰向けに寝ている。 24
2012-07-05 18:00:50