#浬玖ぞんさば　ssのみ

浬玖 @Riku_in_W

【14.2】理性相手に好奇心が言い訳をしつつ階段を下った先で見つけたのは鎖に繋がれたゾンビ！　生きてる！　拘束されてるとは言え地下の閉鎖空間を共有したくない相手だ。しかも私たちに気づくと鎖を限界まで伸ばし襲おうとする。…と、その中の一体が手を引きちぎっ…手を！？ #浬玖ぞんさば

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【14.3】逃げるに限る。階段下でシロさんが不意に立ち止まりケットくんを引き抜き上に向けて撃った。空砲の威嚇だ。それから睨み合いじりじり階段を上る。やがて1階の廊下、なんだか全力疾走っぽい足音が聞こえるがカウントダウン。「次の空砲を合図に走りましょう…3、2――」 #浬玖ぞんさば

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【14.4】結果として空砲は鳴らなかった。直前に突然人影が私たちの間を駆け抜けたかと思うと既にがっしり手を掴まれている。シロさんも同様で共に引きずられるように走り出す。前方から鋭い言葉が飛んで思わずちらりと振り返ると妙な姿形の小柄なゾンビが数体。瞬時に状況を解す。 #浬玖ぞんさば

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【14.5】私たちが最初に相対していた方は驚いたのか既に追ってこない。前を走るこの人が誰なのかはもう気づいた。つくづく縁があるというか助けられてばかりだ。突き当たりのT字路で別れる寸前、今度こそ礼を言わねばと慌てて声を張り上げる。「あのっ、ありがとうございます！」 #浬玖ぞんさば

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【15】走って逃げて、入り込んだ部屋で息を殺す。動悸が収まりもう安全だと思うまでじっとしていた。辺りを見回すとそこには巨大な試験管のような物が無数にあり、中には液体と見たことのある動物。幾つかはゾンビ化しているようだ。容器が割れ床が水浸しになっている箇所もある。 #浬玖ぞんさば

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【16.1】ガシャーンと硬い音が響きハッとして振り返った。あの大きな容器のひとつが倒れて割れ、ゾンビが這い出てくる。そいつが液体を滴らせながら立ち上がりよろけた拍子に近くの容器をぐいと押し発生するドミノ倒し。次々と出てくるゾンビに戦慄する。囲まれてしまいそうだ。 #浬玖ぞんさば

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【16.2】こんなに多い上周囲がガラスばかりではケットくんも使えない。どうにか他の武器で突破しなければ。シロさんを真似て手早く脱いだ上着を右手に巻き付け、大きめのガラス破片を拾う。幸いこのゾンビたちは元動物であり私たちより小さい。破片を構え扉を目指して駆け出した。 #浬玖ぞんさば

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【17.1】物置で見つけたノートの中にあった文言を幾度も思い返しながら廊下を歩く。一番重要な箇所が指示語になっているが何を指すのか予想はついている。それはつまりどういう事だと考えつつ突き当たりの扉を開けた途端、一気に肌が泡立ち考え事に熱中していた頭が急速に冷えた。 #浬玖ぞんさば

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【17.2】今まで以上に危険が近い感覚、それを裏付けるかの如く倒れ伏す人影。視線が強張って人影から目が離せなかったがそれで気づいた。あの人だ。慌てて駆け寄ると危険を知らせる譫言を言うのがちらりと聞こえた。生きている。シロさんと2人で抱え上げると急いで脱出を図った。 #浬玖ぞんさば

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【17.3】運良くソファのある部屋をすぐに見つけた。椅子に寝かすとシロさんが手際良く看護の才を発揮し始める。そうなると私はもうする事がなく、手持ち無沙汰に椅子に座った。行儀が悪いが靴を脱ぎ胡座を組む。やがてどの位経っただろうか、身じろぎと共に意識が戻ってくる気配。 #浬玖ぞんさば

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【17.4】度々接触はしたがまともな顔合わせは初めてだから緊張する。慌てて椅子上で脚を組み替え正座に変えた。意識が戻った彼の人と幾つか当たり障りのない会話を経てもう大丈夫かと密かに安堵しつつ話題はあの部屋に及んだ。感じたより相当危険な場所らしく、改めて寒気がする。 #浬玖ぞんさば

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【17.5】皆無事な事に感謝していると、共に脱出しないかと誘われ思わず間抜けな顔を晒した気がする。そうだ、最初の目的はそれだった。脱出。一方でもうすぐ何かが解りそうな気もする。知りたい。シロさんが黙っているのは私が決めろという事だろう。…私にしては決心が早かった。 #浬玖ぞんさば

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【17.6】「残ります」と、そう告げると目の前の人は知り得た事を話しましょうと言ってくれた。願ってもない。メモ出来る物を取り出し、真剣に聴く事を表す為に正座しようとしたがそう言えば既にその格好だったので背筋を伸ばす。何だか2人が楽しそうに笑う。私もつられて笑う。 #浬玖ぞんさば

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【17.7】色々話してもらい、最後に気恥ずかしかったが互いの無事を祈って包容した。生きていれば何処かで会える。散々助けてもらったのに私が返せるものは何もない事が心残りだ。背を向け合い歩み出す。せめて、次会う人に迷いなく手を差し伸べられるようになろう。 #浬玖ぞんさば

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【18.1】裏庭に出た。人が立っていた。一瞬、脱出した筈のあの人かと思ったが全く違う女軍人さんだった。情報と交換で救急箱をくれると言うがそれに入るものならシロさんがだいたい持っている。断ると何も言う暇もなく去ってしまった。 #浬玖ぞんさば

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【18.2】長い廊下の向こうで床が隆起し動いている…？　目を凝らすと人の腕がちらりと見えた。ハッとして駆け寄るとそれは床に開いた巨大な口だ。呑まれる。予想外の事態に身が竦みかけるが急いで足場を確かめ腕を掴んで一気に引き上げる。何とか間に合ったようで本当に良かった。 #浬玖ぞんさば

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【19.1】古びた階段の途中で思い切り踏み抜いた。足が嵌りどうにも動けない。シロさんの手を借りて抜け出そうと奮闘しつつ、ふと階段下に目を向けるといつの間にやって来たのかゾンビが明らかに私たちを狙っている！　彼女に知らせようと振り仰ぐがその目も私の背後を厳しく睨む。 #浬玖ぞんさば

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【19.2】嫌な予感満載で振り向けばやはりそこにもゾンビ。挟まれた。「…使いましょう」素早く状況を捉えたシロさんが虎の子のケットくんで狙いを定める。弾数が少なく温存していたがそうも言っていられない。轟音が空気を震わせ、ゾンビ含め階段や手摺の木片が纏めて吹っ飛ぶ。 #浬玖ぞんさば

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【20】しばらく忘れていた目眩が酷くてふらふらする。かつて応接間であっただろう部屋を見つけこれ幸いと休んでいるのだが、思い出せば酷くなる目眩のやつが頭痛や気分の悪さまで併発し出して実に不快だ。休まる気がしない。とは言え、せめてゾンビの気配がなくて良かった。 #浬玖ぞんさば

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【21】収まる気配のない目眩と併発する体調不良が本当に辛い。そっちの方に気を取られていたのでしばらく気付かなかったが、そのうちまるで体の内から蝕まれるような痛みまで感じ始めた。シロさんが貴重な内服薬を数種くれたが一向に効く様子もなく、一体どうすれば良いんだろう。 #浬玖ぞんさば

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【22】見覚えのある場所に出た。動植物の標本が並んでおり、記憶が正しければ館に入ってすぐ訪れた筈の部屋だ。あの時なんとなく回収した紙片は今でも持っている。あれから情報も増えたのだ、改めて取り出し横目で眺めつつ部屋を見渡すと以前は気付かなかった物が見えてくる。 #浬玖ぞんさば

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【23】手術室のようなその部屋は妙な機材で溢れていた。そこで見つけた一枚の紙片、一度流し見た後に何かが引っかかって読み返す。…身体、機械化？　抗ZV実験で有効性確認出来ずとあるのはつまりZV化したということか。雷鳴と共に蘇る記憶。あの時の答えの大枠がここにある。 #浬玖ぞんさば

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【24】再び裏庭で軍人さんと会う。没個性的な印象で以前と同一人物かどうか判断がつかない。提示された取引も同じく中の情報と救急箱の交換だ。しばらく考え今度は取引に応じることにした。体調の悪さは相変わらずで、大して効かないとは言え薬があるならば多い方が良いだろう。 #浬玖ぞんさば

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【25.1】吹き抜けのここは恐らく礼拝堂だ。何とはなしに高い天井を見上げるが目眩で殆ど焦点が合わない。目線を戻し先を行くシロさんを追おうとしたとき、突然彼女がハッと頭上を振り仰いだ。つられて私も再度目線を上げようとするがそれより早く「走って！」と緊迫した声が飛ぶ。 #浬玖ぞんさば

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【25.2】どこから降ってきたのか腕が刃物と化したゾンビが私とシロさんの間に音を立てて着地した。近い。合流は無理だと判断し近い扉を目指して体を翻す直前、ゾンビの腕がさっくりとシロさんを切り裂くのが見えた気がした。背を向け惰性で数歩走ったのち血の気が引いて硬直する。 #浬玖ぞんさば