しかし今相手にしているのは、サモナークラスの中でも最強のオン・ミョージ。超ヤバイ級の使い手アヴェ・セーメーのニンジャソウルである。呼び出されたシキガミは魔獣などではない。伝説に語られる幻獣そのものであった。 13
2012-10-21 20:29:14「どうしたショーナゴン、怖気づいたか?アッパーハイクを詠んでやろうか?」レディ・ムラサキは愉快そうにそう言った。この時代、ハイクは現代のような簡潔な様式を取っておらず、より字数の多いロンガーハイクが一般的であった。 14
2012-10-21 20:30:55ロンガーハイクは前半部分のアッパーハイクと後半部分のアンダーハイクに分かれており、時としてそれぞれを別々の人物が詠むこともあった。レディ・ムラサキのこの言葉は、辞世の言葉を残すのを手伝ってやろうか、という意味の皮肉である。 15
2012-10-21 20:32:34ヤバイ級のクノイチ、ショーナゴンにこのようなことを言えるのは、この国広しといえど、レディ・ムラサキくらいのものであろう。 16
2012-10-21 20:33:32平安時代は、パワーワードの時代である。中でも貴族階級は誰もが最低でもスゴイ級のパワーワードの使い手であり、求婚も政争もそのほとんどがパワーワードを込めたロンガーハイクの応酬によって行われていた。 17
2012-10-21 20:35:55優れた歌は、時として人の命を奪うこともある。たとえば、エンペラー・ムラカミの時代に行われた歌合わせデス・マッチでの出来事はあまりにも有名だ。 18
2012-10-21 20:38:38「シノビ・ラブ」をテーマとしたハイク勝負、歌人のミブノ=サンが「コイスチョー/マイネーム・イズ/スタンディング...」の歌を読んだのに対し、一方のカネモリ=サンは「しのぶれど/カラージェネレート/マイラビン...」の歌を詠んだ。 19
2012-10-21 20:39:23両者の実力は拮抗し、決着は容易につかなかった。ぶつかり合ったパワーワードが、床を焼き、タタミを焦がし、風を巻き上げ、エボシハットを吹き飛ばした。 19
2012-10-21 20:41:58「アバババーーーーーーーーッ!!!」突如として、ミブノ=サンの全身から血が吹き出した!彼は立ち上がり回転し、やがてそのまま爆発四散!!! 21
2012-10-21 20:46:23なんたることか!ハイクに込められたパワーワードが、一人の貴族を死に至らしめたのである!!! しかし、このような事例は決して珍しいものではない。 22
2012-10-21 20:48:42現に、ショーナゴン自身不可抗力ではあるが、同じような手法で2人の貴族を死に至らしめている。1人はタダノブ=サンであり、もう1人はあの「スリー・シップス」の二つ名で知られるキントー=サン。どちらもチョーテーの有力幹部「フォーナゴン」のキンダチである。 23
2012-10-21 20:50:31つまるところ、ショーナゴン相手にハイクを詠むというのは命がけのことなのである。しかし、それをレディ・ムラサキはいとも軽々しく言ってのける。それだけの自信が、彼女にはあるのである。まさしく、伝説的ポルノ作家の面目躍如と言わなければなるまい。 24
2012-10-21 20:52:12「………………」ショーナゴンは答えない。この程度で諦めるつもりはなかったし、ハイク勝負でムラサキを倒せるとも思っていないからだ。ただ黙って、ムラサキが次に取る行動を見定めようとしている。 25
2012-10-21 20:55:42「………………フッ」相手のそんな意図を、ムラサキの方でも読み取ったのだろう。「いいだろう。では見せてやる」彼女はそう言うと、おもむろに手をかざし、四聖獣の一角レッドゴリラに合図した。 26
2012-10-21 20:58:09レッドゴリラは低く唸り、巨大な足音を響かせながら庭を横切る。その先にあるのは一台のカウ・トラックである。品の良いエイトリーブスの車体。その屋根には、この時代の流行、平安ゴシック様式の豪壮な屋根が輝いている。 27
2012-10-21 21:07:59「ハッ……!」鍛え上げたニンジャ第六感が、ショーナゴンに最悪の予感を告げた。「ヤメロー!」彼女は跳躍し、空中で錐揉み回転!「シンジレイク!」口にするのはシマネの名所!ムラクモソードが光って唸る! 28
2012-10-21 21:09:23「フフフ……そうだ、その通り。チューグー・テーシはこの中にいる」ミチザネの稲妻が光り、それをカウ・トラックの屋根が反射する。不気味な空の下で見る平安ゴシック様式の屋根は、貴人の乗り物のものというより、さながら霊柩車のそれである。 30
2012-10-21 21:20:19「さあショーナゴン、本気を出せ。それともこのまま人質もろとも、四聖獣の餌食となるか?」「クッ……!」ショーナゴンは空を見た。曇天は先程よりもその暗さを増している。モンキーアワーが過ぎ去り、チキンアワーへ移ろうとしているのだ。太陽が、沈む時間である。(まだなのか……!?) 31
2012-10-21 21:24:32「タイザン・フクン!」ナゴンスレイヤーが叫ぶ。四聖獣が一斉に空へと舞い上がり、ショーナゴンへと襲いかかった!先鋒はレッドゴリラ!先ほどの仕返しとばかりに岩のような拳を振り下ろす。「イヤーッ!」バク転するショーナゴン、ペーパーヒトエの天才的回避!
2012-10-21 21:30:19続けざま、パープルタコの触手がムチのようにしなる!「イヤーッ!」ブリッジするショーナゴン、ワンタッチバクハツのカミワザ的回避! 33
2012-10-21 21:32:04しかし、そこに現れたブラックドラゴン!顎を大きく開き、ショーナゴンを飲み込もうとする。「!」側転中のショーナゴンにはなすすべがない!オール窮す!ショーナゴンをブラックドラゴンの暗い影が覆った!! 35
2012-10-21 21:38:25