山本七平botまとめ/【虚報とは何か④】/日本を破滅させたのは「虚報」/~虚報を発し、国民の目を欺きつつ、敵に自らの意図を提供していた大本営~

山本七平著『私の中の日本軍(上)/すべてを物語る白い遺髪/251頁以降より抜粋引用。
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山本七平bot @yamamoto7hei

1】なぜ私がこれをくどく言うのかといえば、日本を破滅させたのは虚報だからである。 といっても、私はこれを、いわゆる「国民をだました」という点で問題にしているのではない。<『私の中の日本軍』

2012-10-22 02:57:41
山本七平bot @yamamoto7hei

2】虚報の恐ろしい点は、内部の人間に幻影を与えてめくら以下にしてしまうだけではない。たしかにこれも恐ろしい。 よく「国民をめくらにした」という言い方がなされるが、これは誤りで、本当は何も見えないのなら、手さぐりでも歩けるのである。

2012-10-22 03:27:53
山本七平bot @yamamoto7hei

3】身のまわりにも正確な情報はいくらでもあり、探す気になれば手に入り、見つけようと思えば見つかるのである。在日中国人や朝鮮人は、そうやって正しく終戦を予測していた

2012-10-22 03:57:42
山本七平bot @yamamoto7hei

4】恐ろしいのは虚報という麻薬をうたれて幻影を見せられてしまうこと、いわば対象を「変身」させて見せられてしまうことで、こうなると、もう本当に何もかもわからなくなる。

2012-10-22 04:27:53
山本七平bot @yamamoto7hei

5】しかしさらに恐ろしいことは、内部の人間がそのようになるに比例して、外部に対しては的確な情報を提供して、すべての意図を明らかにしてしまう結果になるからである。

2012-10-22 04:57:42
山本七平bot @yamamoto7hei

6】これは今でもよく理解されていないようだが、アメリカの情報将校などには、このことが、考えられぬくらい不心議なことであったらしく、前にも書いたM中尉などは、肩をすくめて「わからん」と言うのだが、一体何か「わからん」のか未だにわからない人もいるのではないであろうか

2012-10-22 05:27:55
山本七平bot @yamamoto7hei

7】前にも言った通り、その者のもっている情報の総量を知っている者には、そのうちのどれを発表し、どれを隠したかは一目瞭然である。 そうなると、この発表した部分と隠した部分を対比さえすれば、相手の意図、目的、実情、希望的観測、潜在的願望といったものが、手にとるようにわかるのである。

2012-10-22 05:57:41
山本七平bot @yamamoto7hei

8】同時に彼ら、特に情報関係の者は、日本国内では通用する虚報を瞬時に見破るのである。 なぜかというと、虚報は、欠落部分を日本人だけに通用する常識や通念で無意識のうちに創作して補わないと成立しないので、それがない彼らは、かえってすぐに見破るわけである。

2012-10-22 06:27:49
山本七平bot @yamamoto7hei

9】従って発表部分を検討するだけでもわかる場合が多いのである。これはちょうど、最初にのべた軍司令官には「わが方の損害」を欠落させた報告は通用しないのと同じで、常識や通念が根本から違う者には虚報は絶対に通用しない

2012-10-22 06:57:44
山本七平bot @yamamoto7hei

10】そしてこのことは、太平洋戦争の初めから終りまで、ついにだれも理解しなかったらしいし、今でも理解していないように思われる。

2012-10-22 07:27:55
山本七平bot @yamamoto7hei

11】というのは浅海版「百人斬り」を見た瞬間に、ベンダサン氏がなぜこれを即座に「フィクション」と断定したか…その理由をまだ誰もつかんでいないからである。だがこれは後述することにして、まずここでは、虚報を出すと、どういう結果になるかを記しておこう。

2012-10-22 07:57:41
山本七平bot @yamamoto7hei

12】これを最近のことを例にとって説明してみよう。ある新聞の中国関係の報道に偏向があるとされ、話題になったことがあるが、たとえその報道が虚報であっても、それは、その新聞社のもっている中国関係の情報の総量はだれにもわからないから、結局は水掛論で終るであろう。

2012-10-22 08:28:08
山本七平bot @yamamoto7hei

13】だがその総量を確実に把握している者がいるのである。言うまでもなく中国政府である。 どの機関によりどういうルートを通じて流そうと、情報源を握っている者には、これは確実にわかる。中国政府は、おそらく非常に細かい点まで的確に把握しているであろうと思われる。

2012-10-22 08:57:46
山本七平bot @yamamoto7hei

14】それは「南京事件」の”報道官”として登場する中国人が、いつも同一人物だからである。従ってこの一事に限っても、与えた個々の情報のどの部分が公表され、どの部分を欠落させたかは、調べさえすれば、手にとるようにわかるわけである。

2012-10-22 09:28:04
山本七平bot @yamamoto7hei

15】…発表部分と欠落部分を彼らは非常に正確に対比分析ができるわけである。これさえできれば、相手の潜在的願望から秘匿した意図まで的確に見抜くことができ、そこへ時々、自分の分析が正しいかどうか判断する為、わざとある種の情報を流せば、全てが的確に把握できるのである。

2012-10-22 09:57:45
山本七平bot @yamamoto7hei

16】これの具体的な一例をあげれば「林彪は生きている」である。これははじめから非常にあやしげな情報だが、おそらく故意に流したのであろう。これにダボハゼのようにとびつく者があれば、とびついた者に内在する希望的観測が把握できる。

2012-10-22 10:28:05
山本七平bot @yamamoto7hei

17】希望的観測は潜在的願望や秘められた意図から生ずるものだから、今までの分析と、投げた情報へのとびつき方から、相手の意図は的確につかめるわけである。

2012-10-22 10:57:45
山本七平bot @yamamoto7hei

18】戦場では「意図」を見抜かれた者が破滅する。 大日本帝国陸軍は、われわれ下っ端に「企図ノ秘匿」「企図ノ秘匿」とロがすっぱくなるほどお説教をしながら、大本営自身が国民に虚報を発表することによって、敵に正確な情報を提供しつづけたわけである。

2012-10-22 11:28:04
山本七平bot @yamamoto7hei

19】というのは、日本人にはわからなくても、彼らは、大本営のもっている情報の総量はほぼ正確につかんでおり、虚報はすぐに虚報と見抜き、隠した部分と明らかにした部分と誘導を図った部分とを明らかにできたからである。

2012-10-22 11:57:44
山本七平bot @yamamoto7hei

20】従って国民が何もかも見えなくなるに比例して、彼らの目はますます的確にこちらを見抜いていくのである。

2012-10-22 12:28:04
山本七平bot @yamamoto7hei

21】日本の陸海軍の首脳は、今でも、自分で何かをしたつもりでいるかも知れないが、実は、潜在的願望も秘匿した企図もすべて見技かれ、その希望的観測を巧みに誘導されて、真珠湾から終戦まで、文字通り鼻面をつかんでひきずりまわされていたのであろう、と私は思っている。

2012-10-22 12:57:45