ノット・ザ・ワースト・デイ、バット・アット・リースト・カースド・エニウェイ #6

翻訳チームによるサイバーパンクニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) 日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

天井を突き破り、すなわち二階の部屋の床を突き破り、「グワーッ!」もがきながら垂直に飛び出すワイバーン!それを追って垂直に飛び出すニンジャスレイヤー!「ハイクを詠むなら今詠め。既にオヌシの命運尽きた!」「グワーッ!」垂直上昇しながらニンジャスレイヤーはワイバーンを羽交い締めに!25

2012-10-23 15:58:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「バカな!バカな!ゴボーッ!」ワイバーンは血を吐き、抗った。しかしニンジャスレイヤーのグラップリングは完全に極まっており、破れない!弾丸めいて二階の部屋の天井へ飛びつつ、天地逆転!ニンジャスレイヤーはワイバーンを羽交い締めにしたまま、天井を両足で蹴る!「イヤーッ!」26

2012-10-23 16:01:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ナムアミダブツ!これは暗黒カラテ奥義アラバマオトシ!しかも通常のそれではない!重力による落下に天井を蹴った勢いを乗せた禍々しい殺戮フーリンカザン・アレンジメントが施されている!「イイイイヤァーッ!」二者は床の穴へ真っ直ぐに降下!下の回廊へ!「アバーッ!」KRAAAASH!27

2012-10-23 16:08:32
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

……回廊に穿たれた小クレーター状の穴から、ニンジャスレイヤーが回転ジャンプで脱出した。赤黒の死神は回廊に着地し、ザンシンした。「サヨナラ!」穴の中から断末魔の叫びが聴こえた。そして爆発四散音とともに、粉塵が噴き上がった。「……」天井の穴を見上げる。そして跳んだ。28

2012-10-23 16:24:39
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

SLAM!レッドハッグは扉を力任せに蹴り開けた。「いちいちカギかけやがって邪魔臭いね!」「ここは……ここかもしれない」サヌマはおずおずと展示室内に進み出た。「だといいねェー」二階、三部屋目である。レッドハッグはタバコを二本咥え、ようやく自分のライターで点火した。「急ぎなよ」 30

2012-10-23 18:08:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

レッドハッグは右手にクロームのナックルダスターを装着した。シメナワつきの漆塗り台座に仰々しく鎮座するオールドUNIXを一台ずつためつすがめつするサヌマを見やる。爪先で床を鳴らす。数分後、数十秒後、あるいはタバコひと吸い後。どのタイミングでシャドウドラゴンが乱入してくるか。 31

2012-10-23 18:17:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

フォーン!唐突にエフェクト音が室内に鳴り響き、備え付け液晶モニタに恰幅の良い紳士が映し出された。「この展示室に収められているのは、いわば、かつて我々が辿り得たかもしれない輝かしき夢の時代。宇宙時代……人々はその実現に燃え、イノベーションを積み重ねていたのです」 32

2012-10-23 18:32:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ビックリさせンじゃないよ」レッドハッグは毒づいた。展示室は広く、扇状で、出入り口は来た道ともう一端の計二つ。扇の外側の壁全体に窓。大きく、気になる。「宇宙時代……」サヌマが呟いた。「きっとここだ」一つ、また一つ。彼はデッキを確かめてゆく。33

2012-10-23 18:39:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「しかし、ネットワークIPアドレスは新世紀における新たな植民戦争の様相を……」「……」やがてサヌマはデッキを探り当てた。デッキには風変わりな形状のスロットがある。「……これだ。これです」サヌマはレッドハッグを見た。レッドハッグは情報端末を取り出した。「全く」サヌマに放った。34

2012-10-23 18:58:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「所謂『電子戦争』の結末としてもたらされた、EMP障害……汚染……各国は関与を否定しておりますが、結果として今のこの冬の時代は厳然たる事実であります。私もまた、あの日あのオーロラを……」サヌマはライター型端末の底部から端子を引き出す。そしてデッキに挿し込んだ。パワリオワー! 35

2012-10-23 19:21:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

デッキモニタにモチを右から左へ箱詰めするウサギとカエルのドットアニメーション画像が表示され、冷却音が室内を満たした。ガガッ!雷が閃き、展示室を光と闇のモノトーンに切り取った。レッドハッグの背筋に寒気が走った。ガガガッ!落雷音!近い!「!」レッドハッグは振り返る!そこには影! 36

2012-10-23 20:00:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

だが、遅かった。彼女はアンブッシュに対応できなかった。「ア……アバッ!」シャドウドラゴンの至近距離チョップ突きがレッドハッグの鎖骨を打ち砕いた。「え……レッドハッグ=サン……?」サヌマは振り返ろうとした。その首を、影めいた腕は後ろから鷲掴んだ。「アバーッ!?」 37

2012-10-23 20:12:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「解凍中な」シャドウドラゴンは呟き、そのままサヌマをウルシ塗りのデッキ台座に押しつけた。「アバーッ!」サヌマはもがく。だが、当然逃れる事はできない。レッドハッグは膝から床に崩れ落ちる。「ア……」「イヤーッ!」シャドウドラゴンの処刑めいた蹴りがレッドハッグの頭を襲う! 38

2012-10-23 20:15:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

レッドハッグの瞳は焦点定まらず、白目を剥きかけた。ナムアミダブツ!だが、ジゴクめいた蹴りのインパクト寸前、カジバフォースめいて、彼女は己が力を強いて引きずり出した。「ンアーッ!」彼女は顔の前で両腕をクロスし、シャドウドラゴンの蹴りを受けた。彼女は吹き飛ばされ、床を転がった。 39

2012-10-23 20:19:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

デッキモニタではウサギとカエルが平和な笑顔でモチを箱詰めしてゆく。「進行度九割六分」のミンチョ・フォント。カリカリカリ……情報端末の中身はデッキの内部ディスクへ今まさに書き込まれんとす!「アバーッ!」サヌマがもがく!パワリオワー!完了を告げるファンファーレ! 40

2012-10-23 20:24:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

シャドウドラゴンはデッキのカバーを片手で引き剥がし、内部ディスクを引き摺り出した。神経細胞めいた接続ケーブルがブチブチと音を立てて引きちぎれる。「アアーッ!」「少し黙るがいい」邪悪なニンジャはサヌマの後頭部を掴み、その顔面をデッキ台座に叩きつけた。サヌマは動かなくなった。41

2012-10-23 20:27:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

シャドウドラゴンはクローム情報端末をぬかりなく引き抜き、影めいた身体の中にしまった。それから剥き出しの内部ディスク装置を。彼は淡々とIRC通信した「回収しました。サヌマ=サンの身柄を確保。ワイバーン=サンのバイタルサインは喪失」「待て……コラァ」レッドハッグが床に爪を立てた。42

2012-10-23 20:35:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……」シャドウドラゴンは顔を横向け、レッドハッグを見る。「ゲホッ!……ゲホッ!」起き上がろうとする。シャドウドラゴンは彼女に向き直り、スタスタと歩き出した。レッドハッグは震える腕を上げ、ナックルダスターのカラテを構えようとした。「イヤーッ!」「ンアーッ!」「イヤーッ!」 43

2012-10-23 20:43:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ンアーッ!」左右ストレートをガードできず、再びレッドハッグは床へ叩きのめされた。ガガガッ!雷が閃いた。「……」シャドウドラゴンは再びスタスタと歩き、起き上がろうとするレッドハッグの顔面にカイシャクのケリ・キックを見舞う。「イヤーッ!」ガガガガッ! 44

2012-10-23 20:49:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ガ ガ ガ ガ ガ ガ ! 光の激しいモノトーン点滅が、戸口から全力疾走で飛び込んでくるニンジャスレイヤーをコマ送りめいて照らした。「グワーッ!」シャドウドラゴンは顔面に決断的低空ジャンプパンチを受け、吹き飛んだ。ニンジャスレイヤーはジュー・ジツを構え、彼を睨み据えた。 46

2012-10-23 20:56:52
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「逃がさぬぞ」ニンジャスレイヤーは言い放った。「……」シャドウドラゴンは仰向けに倒れた姿勢のまま、手を使わずに、踵を支点として起き上がった。コワイ!「SHHHH……」彼もまたカラテを構え、ニンジャスレイヤーと対峙した。 47

2012-10-23 20:58:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーはシャドウドラゴンの隙をうかがう。かつて未熟なザイバツ・ニンジャを殺し損ねたウカツが、アマクダリにのさばる邪悪な堕落ニンジャを育ててしまった。禍根は断たねばならない!「イヤーッ!」「イヤーッ!」二者は同時に踏み込む!蹴りと蹴りがぶつかり合う! 48

2012-10-23 21:09:58
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

さらにシャドウドラゴンはニンジャスレイヤーめがけ正拳を繰り出す。「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーはこれを片手でそらし、サミングを繰り出す!「イヤーッ!」「GRRR!」シャドウドラゴンは素早く上体を反らしてこれをかわし、ニンジャスレイヤーの顎を蹴り上げようとする。「イヤーッ!」49

2012-10-23 21:15:49