ノット・ザ・ワースト・デイ、バット・アット・リースト・カースド・エニウェイ #6
BRATATATATATATATAT……ZAPZAPZAPZAP!「ふざけるなよ……ロケットランチャーだ!持って来い!」「いやァ、それはちょっと」隣のタバタがビークルの通信機を取った。「モシモシ、対応し切れないです、無理です。増援お願いします」「行っちまうぞ!」「デスネー……」2
2012-10-23 23:47:30サーチライトに照らされる中、嘲笑うようにヘリは機首を巡らせ、博物館上空へ離脱した。粉々にガラスを砕かれた窓から、影めいたものがヘリに飛び移ったのをシンゴは目撃していた。不吉であった。そんな真似をするのは……「今の何スか」タバタがシンゴを見た。「アア?」「跳んだでしょ」3
2012-10-23 23:57:15「ああ跳んだな」「それって……」「ああ、ああ、ああ」「もしかして49課マターじゃないですか」「報告するならしろや」シンゴはしかめ面をした。「お前がやれ」「嫌ですよ僕だって」「……」シンゴは頭を掻いた。「ハァ!?」タバタが通信機に向かって素っ頓狂な声を出した。「撤退!?ナンデ?」4
2012-10-24 00:00:21シンゴは欠伸を噛み殺した。「何だかなァ……いえ、ハイ。ハイわかりました。わかりましたハイ、オタッシャデー」タバタは通信を終え、肩を竦めた「何スかこれ」「……」シンゴは博物館を睨んだ。「気に入らねえなァ」「デスネー、痛ッ!」シンゴはタバタの頭を張った。「何スか!」「気に入らねえ」5
2012-10-24 00:11:42「アアア!」タバコを壁に押し当てて消すと、レッドハッグは再び大の字に床に寝そべった。銃撃を逃れた彼らは三階の廊下にいた。「何だアイツら!」「撤収する」ニンジャスレイヤーは言った「面倒が増えるぞ」彼はサヌマを背負っている。額を割られているが致命傷ではない。応急処置は済ませた。7
2012-10-24 00:25:10「面倒?」レッドハッグが顔をしかめた。「もう腹一杯だよ!アタシャ死ぬ」レッドハッグは憮然として言った。「致命傷だ」「そうか」ニンジャスレイヤーは低く返した。彼の負傷もまた、重い。再生した装束の下は惨い有様であろう。「端末が……」ニンジャスレイヤーの背で、サヌマが弱々しく呟いた。8
2012-10-24 00:34:23「起きたか。あまり喋るな」「ダメでした……奪われて……」サヌマは震えた。「何もかも無駄に……終わりです……」「……」ニンジャスレイヤーはレッドハッグを促し、廊下を歩き出した。「始まりだ」「え……」「それとも、放っておくか?」「……嫌ですよ……」「ならば、始めるのだ。今から」 9
2012-10-24 00:39:27「アタシはアイツをブン殴ったよ」レッドハッグが起き上がった。「アタシの勝ちだ」彼女の声音からは、しかし、納得から程遠い心情が伝わる。彼らはオツヤめいて重苦しい歩みを進めた。屋上へ通ずる階段を登る。 10
2012-10-24 00:45:46雷雨は通過し、ぬるい風が屋上の彼らの頬を撫でる。マッポ包囲網の明かりが少しずつ剥がれてゆくのを、彼らは見下ろす。「何だい」不審げにレッドハッグが言った。「隠蔽だ」「何だって」「警察機構を動かす程の相手だ」「……」「マッポが去れば、恐らくアマクダリの別働隊が現れる。長居は無用」11
2012-10-24 00:54:45「アマクダリ!ここンとこ、なにかっちゃァ、アマクダリ、アマクダリだ」レッドハッグが言った「気に入らないね」「残念ながら」とニンジャスレイヤー、「それは先方も同様だ。オヌシは既に、否応無しにセクトと敵対した格好だ」「ハ!」レッドハッグは笑った。「ああそうかい、ああそうかい!」12
2012-10-24 01:00:24「身を潜め、傷を治せ」ニンジャスレイヤーは言った。「セクトは恐るべき敵だ」「休暇がずいぶん先に延びた」彼女は目を細め、ニンジャスレイヤーを見た。「最悪の24時間だった。十分最悪だ。でも、まだ最悪の最悪があるんだろうね」「そうだ」ニンジャスレイヤーは頷いた。「そういう事になる」13
2012-10-24 01:09:15「……連絡する」レッドハッグはニンジャスレイヤーを指差し、言った。ニンジャスレイヤーはもう一度頷いた。レッドハッグは屋根の縁まで歩いて行った。黒髪がバサバサと風に踊る。彼女は下の竹林を見やった。「さあて……あの子のこと、拾って帰らないとね」 14
2012-10-24 01:18:00(「ノット・ザ・ワースト・デイ、バット・アット・リースト・カースド・エニウェイ」インターミッション 終わり。)15
2012-10-24 01:31:40