twitterミステリ『呟きの罠』

作品の中でtwitterが重要な要素を担っているミステリ。 事件編完結しました、解答編は9月11日ごろから開始の予定です。 読者への挑戦もあるので、ふるってご参加ください。
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相応恣意 @aioushii

晴一なの?今どこにいるのよ?さっきカノンから「僕との約束をすっぽかすなんていい度胸だね?」って連絡があったわよ。遅れるにしてもせめて連絡くらいは……え?殺人事件に巻き込まれた?……またなの?……いいわよ、もう。私も人のこと言えないし。まずは詳しい話を聞かせてくれる? #twmys

2010-04-18 01:13:44
相応恣意 @aioushii

助かるよ、未羽秋捨警部の計らいでこうして電話させてもらってるけど、時間もないし手短に行くぞ。ええと、昨夜、麻雀の面子が足りないってことで春野先輩に呼ばれたところまでは知ってるよな?……うん、それじゃ春野先輩寺嶋さんの部屋に入ったところから話を始めることにするよ。 #twmys

2010-04-18 01:14:12
相応恣意 @aioushii

春野先輩とその部屋を訪ねたのは、深夜零時丁度だった。「悪いね。こんな時間に突然呼び出したりして。迷惑じゃなかったかい?」そう言って出迎えてくれたのは、骸骨みたいに痩せているけれど、柔和な顔つきの青年だった。春野先輩と同期らしいから、一つ上の三年ってことになるはずだ。 #twmys

2010-04-18 23:33:16
相応恣意 @aioushii

「いえ、この程度で迷惑なんて言ってたら、春野先輩の相手はできませんので」「ほほう、お天気男も言うようになったじゃないか」僕の軽口に、先輩の眼鏡が光る。「ええと、廊下で立ち話もいいけれど、時間が時間だしさ、とりあえず部屋の中にどうだい?」確かに寺嶋さんの言うとおりだ。 #twmys

2010-04-18 23:35:38
相応恣意 @aioushii

寺嶋さんや、近くの部屋の人に迷惑をかけてしまうのは申し訳ない。そう思い、部屋の中に入ろうとして――そこでようやく、僕は先客の存在に気がついた。「どうも」そう言って正座したまま軽く頭を下げてきたのは、髪を短く切り揃えた女性だった。ここって、一応男子寮じゃなかったっけ? #twmys

2010-04-18 23:37:52
相応恣意 @aioushii

「おっと、紹介が遅れたね、俺の彼女のだよ。春野は知ってるよな?」「ああ、話は散々聞かされてきたからな」苦笑交じりで呟く先輩の気持ちも分かる。座ったままの葵さんの肩に手をのせ、寺嶋さんが立っている、ただそれだけで、二人の仲睦ましい様子が僕にまで伝わってくるのだから。 #twmys

2010-04-20 23:24:12
相応恣意 @aioushii

「よし、ここで時間を潰しても仕方ないし、早速娯楽室に行こうか」言って、寺嶋さんが僕らを部屋から追い出す。結局、その時点での寺嶋さんの部屋での滞在時間は、一分にも満たないものだった。「ちなみに先輩、娯楽室というのは?」「そうか、お前は初めてなのか、まあ行けば分かるさ」 #twmys

2010-04-20 23:28:57
相応恣意 @aioushii

娯楽室は、寺嶋さんの部屋と同じ3階の、階段横の小さな部屋だった。灯りをつけて驚く。中にはなんと、全自動麻雀卓があったのだ。「すごいだろ?オンボロ寮だけど、これだけは自慢できるんだよ、ま、中古なんだけどな」確かにこれは、あまり麻雀をやらない僕でも羨ましいと思う設備だ。 #twmys

2010-04-22 23:49:34
相応恣意 @aioushii

感心するのもそこそこに、早速勝負は始まった。麻雀を覚えてからまだ間もない僕は、楽しめれば良いと思っていた。けれど、すぐにそれは、あまりにも甘い考えだったことを思い知る。「ツモ、嶺上開花」葵さんの凛とした声に、僕の顔は青ざめる。そんなの漫画の中だけの話だと思ってた…… #twmys

2010-04-24 00:35:01
相応恣意 @aioushii

安牌を切ることに徹して、そしてそれは達成できていたのに、結果は葵さんが断トツで1位、春野先輩が僅差で寺嶋さんを上回り、僕が圧倒的にビリだった。「全くだらしないな、お天気男、俺はお前をそんな風に育てた覚えはないぞ」奇遇ですね、僕もそんな風に育てられた覚えはありません。 #twmys

2010-05-08 23:06:26
相応恣意 @aioushii

「さてと、始めたばかりで申し訳ないけど、俺とはちょっと席を外すよ」「何?こんな時間に人を呼びだしといていきなり席を外すのか?」春野先輩の指摘にしては、至極もっともだ。「いやいや、本当にちょっとだけだよ。お前たち、というか正確にはカイに見てもらいたいものがあるんだ」 #twmys

2010-05-08 23:30:48
相応恣意 @aioushii

「見てもらいものだと?それは今、ここで見せてもらうことはできないのか?」「それができないんだよ、なんていうか、まあ、ちょっとした手品だと思ってもらっていいんだけどさ、事前の準備が必要なんだよ」寺嶋さんの言葉に、どことなく歯切れの悪さを感じるのは僕の気のせいだろうか。 #twmys

2010-05-31 23:47:18
相応恣意 @aioushii

「そうは言うが、準備が必要なら予め準備しておけば良かったろうに、お前らしくもない」「はは、これは手厳しい。でもさ、これは二人の協力も必要なことだからさ」「俺たちの協力だと?」春野先輩が怪訝そうな声で尋ねる。「ああ、ちょっとの間でいいから二人の携帯を貸してほしいんだ」 #twmys

2010-05-31 23:54:48
相応恣意 @aioushii

「携帯を貸せだと?何をする気だ?」春野先輩だけでなく、僕も同じ疑問を抱く。「そ、大丈夫。勝手に中を見たりはしないからさ」「それは当然だろ。だが逆に、それならなぜ携帯をお前に預けにゃならんのだ」僕が言いたいことを乱暴な口調ではあるけれど春野先輩が代わりに言ってくれる。 #twmys

2010-06-02 00:29:45
相応恣意 @aioushii

「うーん、今は言えないんだけれど、とりあえず、携帯が発する電磁波の影響を抑えるため、とでもしておこうかな」なんとも胡散臭い理由だ。「……ふん、お前がそこまで言うのなら何かあるんだろうな。いいだろう、お前に携帯を預けよう」言って、春野先輩は携帯を寺嶋さんに投げつけた。 #twmys

2010-06-02 00:32:20
相応恣意 @aioushii

そうなると僕も倣わないわけにはいかない。こんな時間に電話をかけてくる人がいるとすれば目の前の春野先輩くらいだし、不便はないだろう。「サンキュー2人とも。後でちゃんと返すよ」そう言って、寺嶋さん葵さんとともに部屋を出た。それが生きている寺嶋さんを見た最期の姿だった。 #twmys

2010-06-02 00:38:36
相応恣意 @aioushii

立派な雀卓があっても、流石に二人では遊べない。せめてあと一人でもいれば、三人麻雀ができるのだけれど。思いながら、春野先輩と他愛ない話をしながら時間をつぶす。どれくらい時間が経っただろうか。おそらく数十分だったと思う。「お待たせしました」部屋に葵さだけが帰ってきた。 #twmys

2010-06-03 23:18:58
相応恣意 @aioushii

「おい、寺嶋はどうしたんだ?」「すみません、まだ準備に時間がかかるらしくて……」申し訳なさそうに頭を下げながら、葵さんが答える。「まだかかるって、一体寺嶋のやつは何を企んでるんだ?」呆れ声で先輩が尋ねる。「それが……私にもよくわからなくて」困惑気味に葵さんは答えた。 #twmys

2010-06-08 23:36:16
相応恣意 @aioushii

「分からないだって?」「ええ、あとは一人でやるから、お前は先に戻ってろって言われたもので」葵さんの返答に、先輩はため息をつく。「これだけ時間をかけて、まだ待たせるのか、あいつは。一体何を企んでいるんだ?」僕も先輩のぼやきと同意見だった。いい加減、待ちくたびれてきた。 #twmys

2010-07-03 00:04:01
相応恣意 @aioushii

「それじゃあ葵さんは、この時間まで、寺嶋さんと一緒に何をしていたんですか?」寺嶋さんがやろうとしていることそのものは分からなくても、そのヒントくらいはわかるかもしれない。そう思って、尋ねる。「結局私は、部屋の片づけをしていただけなのよ。特に変わったことはしてないわ」 #twmys

2010-07-03 00:04:44
相応恣意 @aioushii

「部屋の片付けでこんなに時間をかけたんですか?」思わず声が出る。この部屋には時計がないし、携帯を持っていかれたので体感時間になってしまうが、1時間以上は待たされたはずだ。「あら、でもまだやっと2時になったばかりよ」そう言って葵さんが取り出したのはiPhoneだった。 #twmys

2010-08-03 23:39:31
相応恣意 @aioushii

葵さんは画面を叩いたり、弾いたりと独特の仕種でiPhoneを操作する。間近で見るのは初めてのその様子にはちょっと憧れてしまう。お金さえあればなあ……「今、彼にはメールを送ったんで、もう暫くここで待ってくれませんか?」iPhoneの操作を終えた葵さんはそう頼んできた。 #twmys

2010-08-10 23:58:59
相応恣意 @aioushii

「ここまでくれば、皿まで喰らうさ、仕方あるまい」先輩がそういうのなら僕に拒否権はない。そんなわけで僕らは、三麻に興じた。暫くは、何事もなく時間が過ぎていった。少なくとも一時間くらいはそうしていたと思う。その間、僕も先輩も、そして葵さんも一度も席を立つことはなかった。 #twmys

2010-08-11 00:10:50
相応恣意 @aioushii

「いくらなんでも遅すぎるだろ!あ、それロン、国士無双」痺れを切らした春野先輩が叫び、そして僕は点棒を切らす。「いい加減、あいつからの返事はないのか?」「ええ、彼からの返信はまだ……あ、でも待ってください、もしかしたら」そう言って、彼女は何やらiPhoneを操作する。 #twmys

2010-08-16 23:51:35
相応恣意 @aioushii

「あ、やっぱり呟いてます」そう言って葵さんは名刺を差し出すようにiPhoneを僕らに見せてくれた。そこには、以前1度だけ見たことのある画面が広がっていた。「あ、これ、twitterってやつですよね?」「ええ、それでこれが彼の呟きよ」そう言って、彼女は画面を指差した。 #twmys

2010-08-17 00:01:56