奥出直人氏によるデザインの精神性とモダニズムから考えるデザイン思考とイノベーションの組織的実践について

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Naohito Okude @NaohitoOkude

Goteborgsの主要産業であったVolvoが中国資本に。CEOは中国から、経営メンバーはそのまま残る。20世紀産業の終焉のニュースをVolvoゆかりの街で聞くとは。今日はお昼はSjomagasinetで。午後はHagaという古い町で北欧の骨董屋巡り。夜はBjorns Bar。

2010-08-03 18:34:55
Naohito Okude @NaohitoOkude

今日はこれからBebop Antik。北欧モダニズムの逸品そろいの店。早く閉まるみたいなのでだめなら明日。Hogaという古い町を20年くらい前から再開発したところにある。北欧とイタリアのモダニズムはドイツバウハウスとかなり違う。アメリカの消費文化と合わせてまな板にのせたい。

2010-08-03 23:19:13
Naohito Okude @NaohitoOkude

スウェーデンをレファレンスにしているが、経済や社会体制をという訳ではない。Volvoの凋落をみても、またバルト三国への貸し付けの焦げ付きなどの発表を見ても経済状況は大変だ。資本主義という嵐の中で北欧的な部分最適の政策は今後かならずしも通用しないだろう。だが、問題はそこにはない

2010-08-03 23:24:39
Naohito Okude @NaohitoOkude

伝統からの離脱をどのように行っていったのか。モダニズムのデザインとはなにか、という話は結構難しいし、明確な答えがあるわけではない。だが誰でもが認識できる抽象的なパターンで造形をおこなったものはモダニズムを感じる。江戸の模様のいくつかにはモダンを感じるのはそのためだ。

2010-08-03 23:28:53
Naohito Okude @NaohitoOkude

この感覚が機械と結びついたのが二〇世紀モダニズムだ。有機的な構造と結びついて表現のダイナミズムが豊富になっている現代建築はコンピュータの造形力(計算力)と結びついている。この抽象的な造形力はいわゆる装飾や伝統的工芸、あるいは宗教的造形とは違っている。これをミメーシスと言う。

2010-08-03 23:32:53
Naohito Okude @NaohitoOkude

そっくりだというミメーシスもあれば、関係ないのに形が似ているねえ、というアナロジーもある。これはこれでとても大切で面白いのだが、今回は割愛。で、ミメーシスを目指さない表現がモダニズムとすると、その存在理由は何か?ということになる。形や部分のバランス、色、質感などすべてが調和する。

2010-08-03 23:35:30
Naohito Okude @NaohitoOkude

人間がこのように調和したものあるいは表現と向き合ったとき、一体何が起こっているのだろうか?非常に主観的であり、心理学的でもあるこの問題を議論することなしに、機械にからめとられたモダニズム表現を自分たちの生活に取り戻すことは出来ない。そして、この魅惑的造形力は資本主義の原点なのだ。

2010-08-03 23:37:39
Naohito Okude @NaohitoOkude

資本主義との関わりは川崎和男さんのblogで読んでもらうとして、いま確かめてみたいのはモダニズムと精神性との深い関係である。良くできたデザインには精神性が宿る。まあこれは誰も意義はないだろう。建築も同じだ。機能や美や感情喚起をこえた何かを人は良いデザインから感じる。

2010-08-03 23:45:10
Naohito Okude @NaohitoOkude

ここで誤解して欲しくないのは、これこれこうした理由でデザインしているから良いデザイン、という話ではない点だ。もっと主観的な感じである。いいな、とおもって自分のものにしてしまう感じ。ここを巧みに利用して高級品のデザイナーはお金持ちの顧客の「魂」を揺すぶって財布のひもを開けさせた。

2010-08-03 23:47:36
Naohito Okude @NaohitoOkude

だが精神性のあるデザインの使い道は金持ちに贅沢品を売るだけではないはずだ。ある調査で無駄使いと嬉しかったことの関連を調べたところ、割と相関しているということがわかったという。機能と効用では割り切れないのだ。マーケティングにおいてこのことを主張したのは経験マーケティングである。

2010-08-03 23:52:08
Naohito Okude @NaohitoOkude

大量生産して、広告でものを売る時代から、消費者のセグメントをきめてターゲットを明確にして、さらに感情に訴えかける広告をする。こんな時代が大分続いた。だが、人が物を買ったり使ったりするときにもっと深い感情がある。行動経済学は感情の揺れ動きを計算して見せたが、さらに繊細な局面を見る。

2010-08-03 23:55:31
Naohito Okude @NaohitoOkude

回りくどい表現でモダニズムと精神性の話を書いているが、いわゆる通常のデザイン史における単純な伝統からモダニズムへの流れを相対化しようという試みでもある。歴史学はここ30年にわたって、単線的な世界史の議論を相対化してきた。複数の文明がそれぞれの歴史をもっている。デザインも同じだ。

2010-08-04 08:56:01
Naohito Okude @NaohitoOkude

複数のモダニズムがあり、複数の「デザイン史」がある。ヨーロッパモダニズム以外は「伝統」の一括りで語ってしまう粗雑な議論への異議申し立てだ。日本の一般的なデザインがジャポニズム(伝統)かミニマリズム(ヨーロッパモダニズムで解釈できる日本)に分裂してしまっている事への懐疑でもある。

2010-08-04 08:59:22
Naohito Okude @NaohitoOkude

こんなことどうでもいいと思うだろう。だがグローバル時代を迎え、資本主義の勃興が各地で始まり、伝統的衣服を脱ぎ捨ててファッションが始まり、伝統的生活をこえてモダンリビングが始まっている。表現としてのモダニズムの胎動があるのだ。これを「歴史の終わり」と見るべきではない。

2010-08-04 09:03:56
Naohito Okude @NaohitoOkude

歴史の終わりとは欧州共同体欧州連合という流れの影の立役者であるコジェーブの考えをアメリカの政治学者フクヤマが展開し、資本主義と民主主義の発達が社会主義を一掃し「歴史」は終わったとする考えだ。アメリカ帝国主義を指示する保守的な言説である。だが僕ら結構このイデオロギーに捕まっている。

2010-08-04 09:17:16
Naohito Okude @NaohitoOkude

民主的な社会を求める気持ちが政治的なイデオロギー闘争を無用にする。これは正しい。だが民主主義にも資本主義にもそれぞれの形がある。伝統から単一の抽象的なシステムになっていくわけではない。この議論は難しいので分かりにくいかもしれないが、複数の民主主義と複数の資本主義があるのだ。

2010-08-04 09:23:25
Naohito Okude @NaohitoOkude

多様なモダニズムという考えは多様な民主主義と多様な資本主義の存在から生まれてきている。人間に備わった創造的能力が、自分が置かれた民主主義と資本主義のコンテキストに合わせて、あたらしい表現を見つけ出していく。この仕組みが人間社会の中に埋め込まれている。ここに注目したい。

2010-08-04 09:26:14
Naohito Okude @NaohitoOkude

人間のこの能力が人間が人間として存在することを可能にする。その証がデザインだ、というのが都合のいい話だが、デザイン思考の根底にある。「歴史の終わり」の社会における業務遂行のエリートであったダニエル・ピンクやリチャード・フロリダは僕と同世代に近いが、彼らの本の前書きが面白い。

2010-08-04 09:28:39
Naohito Okude @NaohitoOkude

勉強をして良い成績をとって出世をしなさいという両親の期待を背負って勉強して良い大学に入り超一流のロースクールをでて、「歴史の終わり」の社会をまっしぐらに駆け抜けていたときに、自己実現できないむなしさを感じ、平等でも金銭的豊かさでもない創造的になることの価値を知る。ここがポイント。

2010-08-04 09:31:23
Naohito Okude @NaohitoOkude

で、話はとても難しくなるのだが、シュンペーターへ。20世紀の資本主義と民主主義と社会主義の動きは社会主義という官僚組織に飲み込まれる。官僚とはリスクをとらないそろばんをはじく会社員も含む。この流れをとめるのがイノベーションだというのがシュンペーターの予言だ。

2010-08-04 09:34:34
Naohito Okude @NaohitoOkude

社会主義は亡びたが、リスクを取らない組織体は残った。これを資本主義と民主主義の勝利とみるのか?リスクを取らない組織体は衰退する。外部システムとのエネルギーの交換がなければ、システムは徐々に活力を失う。どこかに活力を創造するところが必要だ。GEとP&Gという巨大官僚組織が動いた。

2010-08-04 09:41:01
Naohito Okude @NaohitoOkude

創造的な活動を組織内に持つ。そのことで活性化を図り組織の生き残りを可能にする。シュンペーターのイノベーションへの21世紀的回答がデザイン思考である。ゼロが一になる瞬間を組織の中に持たせるのだ。この方法は劇薬である。だがこれが株主に対してリスクを最小にしつつ利益を最大化する答えだ。

2010-08-04 09:46:28
Naohito Okude @NaohitoOkude

この話をすると、経済理論好きからコメントが来てしまって面倒だが、基本的にはリスクとは損をすることだけではなく利益が上がったときもリスクと呼ぶ。ようするに不確実性のことで、その反対概念は確実性だ。だが、日常世界感覚ではリスクとは損をすることだ。なのでリスクの反対は利益になる。

2010-08-04 09:50:03
Naohito Okude @NaohitoOkude

ポルトフォリオはこうした日常的感覚から逃れるための方法でもあり、リスクのあるものをここにいれて一元管理をする。するとアップサイドリスク(儲かる)ダウンサイドリスク(損する)が組み合わされ、結果として利益がでる可能性が高くなる。これが金融における不確実性からの脱却である。

2010-08-04 09:53:09
Naohito Okude @NaohitoOkude

さて、問題は核心に入ってきたが、イノベーションはポルトフォリオ管理するべきなのか?デザイン思考はポルトフォリオ管理するべきなのか?儲かるか儲からないかわからないからひとまとめにして、結果として利益を最大化しようという試みをするべきなのかどうかである。

2010-08-04 09:55:40