「リディアンハウス殺人事件」 - 第1章 - 【解決編】「署内にて」

作家：リディアン @arito_lydian2

第1章 【解決編】「署内にて」 #lydianhouse

作家：リディアン @arito_lydian2

署内のとある１室 ──。 辺りには書類が散乱し、飲んだ後のコーヒーの缶がいくつも並んでいる。 そしてそのほとんどが灰皿代わりとなり、タバコの灰があふれんばかりにいっぱいになっている。 部屋はタバコの煙で充満し、少し先の光景すら見えない状態だ。 #lydianhouse

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若手刑事であるセンダは、とある事件の整理に追い込まれていた。 「うーん、この事件。犯人は分かったというのに、何だろうこの違和感は…」 #lydianhouse

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センダは、いつも何かしらドジを踏んでしまうが、本質的には有能な刑事であった。 まだ配属されて１年ちょっとの若手ではあるが、これまで何度も殺人事件などを担当し、その度にトラブルを巻き起こしながらも、最後には見事に犯人を見つけ出してきた。 #lydianhouse

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しかし、今回ばかりは少々勝手が違うようだった。 犯人はすでに判明し、事件は解決したかのように見える。 しかし問題は、どうしても動機が見つからないということであった。 #lydianhouse

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さらに、どうにも腑に落ちない点がいくつも残っている。 「なぜ、あの人が・・・あんなにも多くの人を・・・？」 そうこうしていると、廊下からドシドシという足音が聞こえてくる。 センダの上司であるベスパックスが部屋に入ってきたのだ。 #lydianhouse

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ベスパックスは部屋に入ると、物凄い環境に少したじろいだ。 目の前にいるはずのセンダの顔も煙でまったく見えないぐらいだ。 少しでも換気を良くしようと、すぐに窓を開ける。 ベスパックスは煙を手で振り払いつつ、軽く咳き込みながら言った。 #lydianhouse

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ベスパ：「相当煮詰まっているようだな」 センダ：「ええ。今までの殺人者はみんな動機がはっきりしていました。 しかし、今回の事件にはどうしてもそれが見つからない ──」 #lydianhouse

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少しの沈黙の後、ベスパックスはこう言った。 ベスパ：「『正義』とは何か、考えたことがあるか？」 #lydianhouse

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ベスパ：「我々の正義とは、まず第一に犯罪を許さないこと。 そして、それを行った者が二度と犯行を起こさないようにすることだ。違うか？」 センダ：「もちろん、それはそうです」 #lydianhouse

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ベスパ：「しかし、殺人を犯す者は皆、自分は正義だと思っているのだ。 この行為は正しいことだ、と思っており、それをとがめる我々こそが悪と考えている」 #lydianhouse

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ベスパ：「つまり、殺人を行うものは、自分自身の『正義』をそれぞれが持っているということだ。 今回の犯人もそういうモノを持っていたのかもしれない。 それを見つけ出せるかどうかで、動機が解明できるかどうかということにつながるはずだ」 #lydianhouse

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ベスパ：「そこはお前の力量にかかっている。 この事件を本当に解決できたら、お前はまた一回り大きく成長するはずだ」 そう言うと、ベスパックスはセンダの肩を軽く２回叩き、部屋を出て行った。 #lydianhouse

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センダは少し落ち着こうとコーヒーに手をやった。 ずっとデスクの椅子に腰掛けているため、 身体は凝り固まり、頭は１つのことにずっと縛られたままだった。 こめかみを押し、知恵熱が出そうな頭を必死でこらえる。 #lydianhouse

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この数日間、センダを悩ませ続けている１つのこと──。 「一体なぜ、あの人があんなにも多くの犯行を・・・・？」 それは、１ヶ月前に起きたある事件のことだった――。 （第1章：終） #lydianhouse