アルシェリでついのべ140文字SS
やぁクラン、君の観たがってたマチネのチケットが手に入ったんだよ、アルトが彼女と喧嘩したらしくて(笑)…という俺の電話が終わらぬうちに「アルトー!今日の劇場の近くに美味しいスイーツのお店がね♡」という妖精の声。振り返った俺の瞳はアンバーの視線に絡め取られた「すまん、ミシェル」
2012-11-05 00:22:52桜、終わっちゃったわねとシェリルは緑の枝を見上げて呟いた。残念な気持ちも判るが新緑の下のほうが彼女の髪色が映えて美しい気がする。「花は散るから美しいんだ」と言い添えると「そうよね」とにっこり笑った。花より断然綺麗だ…と口を開きかけたオレに彼女は「桜餅食べたーーーい」と身を捩った。
2012-11-05 09:33:34母がかつて愛した庭の桜の木の下に妖精が佇む。ざあっと強い風が吹き、桜吹雪が彼女の姿を隠すから、不安に駆られて思わず白い手首を掴む。けれど振り返った彼女はそれはまぶしく笑っていて、その微笑みの強さに、彼女は消えてしまわないのだと安堵した。強く抱きしめ彼女の存在を確かめる、幾度も。
2012-11-05 10:31:37「この寝ぬる夜の間に秋は来にけらし 朝けの風の昨日にも似ぬ」おはようメールの文面は和歌の引用だった。アルトが居る惑星では季節が変わったらしい。返信は短く「飛ぶのが楽しみね」と送った。爽やかな風を翼に受けて舞い上がるバルキリーが見えたような気がした。
2012-11-05 10:27:52「これ読んでから」「お風呂入ってから」「髪を整えてから」「電気消してから」あといくつ待たされたら一番欲しいものに辿りつけるだろう。一体何回「良い?」と聞けば「良い」と言ってくれるのだろう。自分の温度で温まった布団の中、猫みたいに擦り寄る彼女に体温が移っていく。待てにも限界がある。
2012-11-05 22:15:30「シェリル」大腿の表面をぽんぽんと叩いて呼ぶ、ここに座って欲しい意思。「別にここでいいわ」少し困らせたくてぴったりと寄り添うように隣に腰掛ける、見上げて格別の笑顔を浮かべる。そう言ったら困るって知ってる。「…」「座って欲しい?」「…」「言わないと座らないから」私の特等席は、隣?
2012-11-05 22:02:20① 「ん…」目覚めると、時計の針すっかり上を向いていた。久しぶりにせっかくまるっと一日オフなのに、寝過ごしちゃった、と頭をがしがししながら身体を起こす。「!? いたたた…!」髪の毛と指が絡まってしまって、そっとそれを外す。なんだって今日はこんなに絡むのだろう、と指を見た。「…?」
2012-11-06 01:05:06②指に、見たことないリング。どうして? 「…誕生日おめでとう、シェリル」声にはっとしてその方向を見ると、寝室の扉に寄り掛かったアルトが私を優しい瞳で見ていた。「なあに…、これ」「誕生日、だろ」左薬指に光るきらきらの指輪。私のそばにそっと座ったアルトが、ぎゅっと私を抱きしめた。
2012-11-06 01:07:32③「…今年も祝えてよかった。来年も、再来年も、これからもずっと、祝わせてな」頭も抱き込まれて、泣きたくなった。アルトと指を絡めて、キスをする。「 ありがとう、アルト…!」涙は浮かんでいるけれど、一番の笑顔でアルトにお礼を言う。銀河一まぶしくて、キラキラの朝。
2012-11-06 01:09:53休日、いつものように買物計画を練る彼女を呼ぶ。「たまには部屋で過ごさないか?」「何よソレ勿体無いじゃない」「そうでもないぞ。ゆっくり飯食って本を読んだりDVDでも見るのも悪くないだろ、一緒に」「…ストロベリーパイは」「仰せのままに」ふわり微笑む姿に今日はいい1日になる予感がした。
2012-11-04 16:36:48①たまにシェリルに言われる。「アルトはいつもみんなに優しすぎ」って。でも、それはちょっと違うんだ。俺は確かに周りの人間に平等に接してる。たとえそこにシェリルがいようと、シェリルだけを特別扱いしないし、嫌いなやつにも特別変な態度をとろうとはしてない。
2012-11-06 01:18:02②けれど、どんなときでも、心の一番奥深く、肝心なところには鍵をかけて、決して見せないようにしてる。ミシェルにすら見せないものを、お前には見せてる。だってシェリル、俺の心の鍵はお前「だけ」にあげる、って、もうずっと昔に決めてんだ。
2012-11-06 01:18:11アルトとシェリルへのお題:いわゆる天使ってやつ/(そのとなりの席に誰がいたの)/そうじゃなくて、またね、でしょ? http://t.co/rIWYbxgf ふおお、全部書けそうだww
2012-11-06 09:08:54肩甲骨は、かつてそこに羽のついた翼があった名残だという。 だとしたら、シェリルのはいわゆる天使ってやつの、名残だと思う。けれど、彼女の羽根はなぜ残っていないのか? 妖精なのだから、羽根があっても不思議じゃない。いつ、もげてしまったのだろう。そう考えると、俺の背中もちりりと痛んだ。
2012-11-06 09:21:08アルトは、飲み会からの午前さま。どんなに遅くなったって朝帰りはしたことがないけれど、どんな場か知ってるから少しやきもき。酔ってさっさとソファにくずおれたアルトから剥いだ上着には、タバコとかお酒とか、私じゃない人の匂い。飲み会だからそうもなるだろけど。(そのとなりの席に誰がいたの)
2012-11-06 09:26:08ふたりで出掛けるのは幾度めだろう。もう俺は覚えていない。けれど、シェリルは覚えているんだろう。そして別れのたびに、シェリルは静かな微笑みを浮かべ、控えめに言う。 「それじゃ、アルト、今日はありがとう。...さよなら」だから俺は言い返す「そうじゃなくて、またね、だろ?」
2012-11-06 09:33:50そしてシェリルは安心した微笑みを見せるのだ。ああ、俺はこの微笑みが欲しくて、わざとこんなことを言うように仕向けているのかもしれない。俺に依存したシェリルの俺との別れの不安が消えたときの安堵が、ほしいのだ。しかし、本当に依存しているのはどちらなのだろう?
2012-11-06 09:33:51