【展開型の静かな秋】福間健二 2factory15

配分型から展開型へ。書こうとしていることに当たりをつけて、そこに浮かんでくる「対象」の要素、「対象」とつながる要素を分配して書く「配分」よりも、行き当たりバッタリに進む「展開」が勝っていく。だいたい、そういう書き方をしているけど、意識して、「配分型」と「展開型」だとやってみました。でも、目標がなくなって、迷子になりすぎないように、エミリー・ディキンソンの「その名は秋」まで行こうというのが、隠し球。音楽は、アリシア・キーズ。静かな秋。でも、This girl is on fire という彼女の声が耳からはなれない秋でもあるってことで。 http://www.youtube.com/watch?v=bCfSRJENSnc&feature=branded
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福間健二 @acasaazul

たましい。エクスタシー。自分の外に出る。だれの影を追うのか。十四回目の発作のあと、病気の犬になる快感を運んでいる。吠えるだろうか、こいつ。瞬間性の、秋の作家が起き上がって、いきなりの、夜。地球では、こんなことが起こる。月は、黙っている。(展開型の静かな秋1)#2factory15

2012-10-28 08:39:22
福間健二 @acasaazul

ブルームーン、見ていてくれても教えてくれない。水の半分入ったこのボトルがだれに追われる影なのか。ザ、笑っちゃうけど、セツ、後戻りはしない。できないのではなく、そう決めたのだ。川べり、ウサギいない。もうない、やさしい目に見つめられること。(展開型の静かな秋2)#2factory15

2012-10-29 08:51:46
福間健二 @acasaazul

だったら、挫ける心も折れる心もないことにして、何羽かの仲間に合図を送る展開型だ。作ること。角度をずらすこと。好きな娘に着せたいシャツを盗んで、思い出せない夢のなかに忘れてくること。飛べない密度。閉じない逃避行の、雨の日。パンを食べる。(展開型の静かな秋3)#2factory15

2012-10-30 06:42:22
福間健二 @acasaazul

おむつ、使うかどうか。雨がやみ、老いた母たちは外に出してもらって上機嫌だ。階段のない建物。エレベーターを動かす暗証番号を忘れた少女の、行きたいと夢見た国の港町の大きな耳たち。津波だ。ニュースを聞いた。まだ自分の泥を感じることができる。(展開型の静かな秋4)#2factory15

2012-10-31 08:20:34
福間健二 @acasaazul

真夜中をちょっとすぎて、ボブ・ディランが聞こえる。巣穴に戻れない耳たち。その港町は半世紀前の黒い港町から進化した証拠のスカートを脱ぎ、あれっ、船でやってきた者にやさしくしない。天使におやすみも言わない。自分が生きるのに精一杯だからだ。(展開型の静かな秋5)#2factory15

2012-11-02 12:05:52
福間健二 @acasaazul

血であがなうべきこと、なんてない。どんなに大きなあらしでも、それで世界が終わるわけではない。帰り道のわからなくなった何でも屋のボビー、ほんとうはどこでも囚人だった。この秋は、刺青をした娘たちと歩いている。もう捕まらない。空、靴が飛ぶ。(展開型の静かな秋6)#2factory15

2012-11-02 12:06:20
福間健二 @acasaazul

すること。ほとんどないような気がして、寒さだけを感じていた。午後七時四十分。順番に風呂に入り、「あったまった」と線をつなぐ人たちがいる。この展開は、バラ色の顔に会ってほっとすることができない。接着剤、ホッチキス、谷間の霧、使えないのだ。(展開型の静かな秋7)#2factory15

2012-11-03 08:36:07
福間健二 @acasaazul

そのなかに人がいる。そう感じた。でも、いなかった。ここでもほっとするわけではないが、展開型だ。床から壁の絵へと影を動かし、疲れた目を精算して、生まれることのできないものを思う。いま、銀座。溶ける。通りの、おおぜいの生きる人たちのなかに。(展開型の静かな秋8)#2factory15

2012-11-04 10:01:35
福間健二 @acasaazul

値段の高いビールのあとのお芝居。きみときみの友だちが出ている。ぎりぎりに機能を保つシステム。人力でやれること、もっと考える。夜の路地の、痒いところ。ポテトサラダと野菜炒めの上手なきみが好きだよ。港町で死んだ詩人のことを思い出して、前へ。(展開型の静かな秋9)#2factory15

2012-11-05 08:28:07
福間健二 @acasaazul

風邪気味の、まちがった濃度。秋に閉じ込められたきみたちは、「まちがった」という言い方はいけないと考える。残念でした。たましいは、挫折しません。愚かな入れものを去り、無条件にどこにでも行く。雨のなか、エミリーの「朱色の車輪」に乗ってね。(展開型の静かな秋10)#2factory15

2012-11-06 06:40:37