わいたんべさんの「なぜ、専門家が過剰とも思える対応をするのか」

まとめろーのお告げを聞いたので( ̄∇ ̄)
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Y Tambe @y_tambe

んーと、「なぜ、専門家が過剰とも思える対応するのか」について。

2012-11-07 16:22:19
Y Tambe @y_tambe

僕は毎年、学生を相手に細菌学の実習をしてまして。その実習では、こちらで準備したブドウ球菌とかサルモネラとか大腸菌とかを培養させたり観察させたり、あるいは学生の鼻とか手とかノドの菌を培養させたり観察させたり(他にもこまごま)してます。そのとき、学生に必ず注意するのは(続

2012-11-07 16:39:01
Y Tambe @y_tambe

承前)「この実習で使ってる中でいちばん『怖い』のは、サルモネラとかではなくて、君らの体から分離してきた菌だから、取り扱うときは一層気を付けるように」ということ。

2012-11-07 16:40:27
Y Tambe @y_tambe

何で、そっちの方が怖いかというと「正体が判らないから」です。教官側で準備してる菌株については、それがどういう細菌で、どういう性質のものかが判ってる。けど、そうではないところから分離してくる菌株は、その菌種が何なのかが判らない(続

2012-11-07 16:43:23
Y Tambe @y_tambe

承前)で、菌種が不明のものを扱う場合には、想定される可能性の中で「最悪の可能性」に備えて、取り扱う必要がある…例えば、普通の大腸菌だけなら煮沸処理だけでも十分に殺せるけど、芽胞を作る菌の可能性もあるからオートクレーブが必須。どっちか判らない段階なら、オートクレーブが必須。

2012-11-07 16:47:46
Y Tambe @y_tambe

(実際には、普通に大腸菌処分するときもオートクレーブですが)

2012-11-07 16:48:28

Y Tambe @y_tambe

ここで一つポイントなのは、単に「最悪の可能性に備えて」ではなくて、「想定される可能性の中から最悪の可能性に備えて」というところで、ここらへん、専門家は「想定の仕方」を知ってるので、例えば「ヒトの手で混ぜるんなら、まず黄色ブドウ球菌が危なそうだな」とかになる。

2012-11-07 16:51:21
Y Tambe @y_tambe

まぁともかく、市販のヨーグルトとか納豆とか発酵食品の場合と、家庭で作られる発酵モノの場合、決定的な違いになるのは、「入ってるものの正体が判っているかどうか」の違い。

2012-11-07 16:54:45
Y Tambe @y_tambe

こういうことを言うと、「いや、ウチで作ってる酵素ジュースには何がいるか判ってるから…乳酸菌と酵母と…」とか、そういう人がいるかもしれません。が、そもそも「乳酸菌という菌がいる」という辺りからして、あまり判ってない証拠というか…あれは特定の菌種を指す用語ではないのです。

2012-11-07 16:58:00
Y Tambe @y_tambe

一口に「乳酸菌」と呼ばれてるものですら、球菌から桿菌から、生物学的に見ると種のレベルどころか属や科を超えて、ばらばらなものをひとまとめにして扱ってる。他方、病原菌については、種の違い(黄ブ菌と他のブドウ球菌)どころか、同種でも菌株の違いで(O157と他の大腸菌)で異なる。

2012-11-07 17:01:49
Y Tambe @y_tambe

そこらへんを、きっちり同定してやるのは家庭では無理です…というか、大学の学生実習とかでもある程度、対象を絞り込んでやらないと、しんどい。

2012-11-07 17:04:51
Y Tambe @y_tambe

しかも「酵素ジュース」みたいなヤツだと、材料も違うし、混入してる菌種も違うし、発酵条件も異なるので、一体どんな菌が増えてるのか特定が出来ない。つまり正体が判らない。正体が判らない以上、「想定される可能性の中で、最悪の可能性に備えて」対処する必要があるというのが専門家の立場になる。

2012-11-07 17:07:41
Y Tambe @y_tambe

そういうスタンスから言うと、実は、黄色ブドウ球菌とか、あるいはO157なんかの可能性を指摘するのだって「一概に間違ってる」とも言えないのです…僕はちょっともにょるけど。

2012-11-07 17:09:50
Y Tambe @y_tambe

あとまぁ「常在菌」という言葉、いかにも無害なイメージを与えがちかもしれないけど、これも勘違いしちゃいけないところ。

2012-11-07 17:11:08
Y Tambe @y_tambe

ヒトの常在菌は、「常在」つまり、普段と変わらない場所に、あんまり変わらない数、変わらない状態でいるときは、それほど害を与えない場合が多い。けど、状況が変わればその限りではありません…日和見感染なんてのはその典型だけど。

2012-11-07 17:13:19
Y Tambe @y_tambe

食中毒との関連で言えば、例えば、元々、手に食中毒性の黄色ブドウ球菌が常在してる人がいたとして、その人の手を直接なめたとしても、それで食中毒になるわけではない。けど、そのヒトが洗わない素手で握ったオニギリを、生暖かいところにずっと置いておいてから食べると食中毒が起こりうる。

2012-11-07 17:15:43
Y Tambe @y_tambe

よく言われる「食中毒予防の三原則」の「付けない、増やさない、殺す」を思い出しながら、もう一度考えると……「素手でかき混ぜて(付ける)発酵させた(増やす)野菜ジュースを生のまま(殺さない)飲む」ということなんだよね。

2012-11-07 17:18:32

Y Tambe @y_tambe

実習の話に戻って、学生から分離した菌の危険性を考える時、まずは「病気ではない(だろう)ヒトから分離した常在菌なので、*それほど*毒性が高くない株が多いだろう。けど、食中毒毒素作る黄色ブドウ球菌とかも分離されてくるケースがあるので要注意。(続

2012-11-07 17:22:16
Y Tambe @y_tambe

承前)またそういう『怖い』菌でない弱毒性の菌だったとしても、培養して数が増えてる分、危険になりうるので、取り扱いには十分気をつけて」という感じになる。

2012-11-07 17:23:39

--〆は「もやしもん」

Y Tambe @y_tambe

マンガ「もやしもん」の主人公みたいに、肉眼で見て、どの菌種がどれだけ生えてるか判るんなら、多分、酵素ジュースだろうが何だろうが、見ただけで安全か危険かを判断できるんだろうけどなぁ。

2012-11-07 17:30:08
Y Tambe @y_tambe

しかし「もやしもん」でも、O157を見つけて食中毒を未然に防いだ話のときは、大腸菌が「ドレッシングの中にいたから」ということから推定してるんだよね。見た目の違いでなくて。そこらへん、よく練れてるよなあ、とホント感心する。

2012-11-07 17:36:19

--参考