不二式の最近の単発物語ツイート

誘拐犯物語の続きはどうした!って怒られそう
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不二式 @Fujishiki

彼は彼女が好きだったが、彼から見て彼女は彼をなんとも思ってはいなさそうだった。彼はいつも彼女がバイトしているコンビニに行っては彼女にレジ打ちしてもらっていた。彼女が笑いかけて言葉を投げかけて、優しく手を握って小銭を渡してくれるのがとても嬉しかった。

2012-11-04 19:27:47
不二式 @Fujishiki

彼はある日、バイト上がりの彼女を見つけた。いつも深夜のバイトばかりしている彼女がコートを羽織って外に出ると雪が降っていた。寒空を見上げて白い息を吐く彼女に、彼は温かい缶コーヒーを渡して言った。「寒いでしょ?これでも飲んで」彼女は笑顔でそれを受け取って言った。「ありがとう」

2012-11-04 19:30:57
不二式 @Fujishiki

彼は言った。「今日は早いね」彼女は苦笑いして言った。「…実は今日は私の誕生日でね、店長が気を利かして早めに帰してくれたんだ」彼は彼女が手に持っているレジ袋の中のケーキを見て言った。「それも店長からの?」彼女はまた苦笑して言った。「ううん、自分用。」

2012-11-04 19:35:58
不二式 @Fujishiki

彼は首をかしげて言った。「買ったの?」彼女は寂しそうに頷いて言った。「まあ…祝ってくれる人なんていないんだけどね」彼は黙ってそれを見ていた。彼女は遠い目をして言った。「昔ね、パパとママは私のコンサートに向かう途中で交通事故で死んじゃったんだ」彼は目を伏せて言った。「そっか…」

2012-11-04 19:39:38
不二式 @Fujishiki

彼は顔を上げて言った。「ひょっとしてそれでバイトしてるの?」彼女は言った。「まあね。助成金とかもあるんだけど、それだけじゃね…」彼女は自分の肩を抱いて縮こまった。彼は慌てて言った。「ご、ごめんね。ここでしゃべってたら寒いよね。ファミレスでも入ろっか。」彼は内心ドキドキしていた。

2012-11-04 19:43:52
不二式 @Fujishiki

「うん」彼女は笑って頷いて言った。彼はたちまち笑顔になって、傘をさした。彼女は言った。「あっ…私、傘持ってきてないや…」彼は笑顔で傘を差し出して言った。「ああ、じゃあこの傘使いなよ」彼女は申し訳なさそうに言った。「でも…」彼は言った。「僕はフード付きのコートだから大丈夫だよ」

2012-11-04 19:48:19
不二式 @Fujishiki

彼女は言った。「なら…夜遅いし、誰も見てないからさ、一緒に入ろうよ」彼はドギマギしながら言った。「えっ」彼女は言った。「…嫌?」彼は言った。「嫌なわけないよ!」彼女は笑顔になって言った。「あはは、なら入ろうよ。寒いしさ」彼女と彼は並んで傘に入って歩いた。

2012-11-04 19:52:57
不二式 @Fujishiki

傘の柄を持つ彼の手のすぐ上をちょこんと彼女が掴んでいた。手を伸ばせば届く距離に彼女がいる。彼は内心、心臓の音が彼女に聞こえてないかとドキドキしていた。彼は言った。「ここだね。24時間営業のファミレス。安いし、ここに入ろうよ」彼女は頷いた。彼はほっとして一緒に自動ドアを通った。

2012-11-04 19:56:16
不二式 @Fujishiki

ガラガラなのでどこでも座っていいというようなことを店員に言われ、二人は禁煙席の窓際に座った。彼は言った。「さすがにこの時間はガラガラだね~」彼女は言った。「うん。だからこの時間は雇ってる店員さんも少なくてさ、たくさん客が来ると困ったりするんだよね」

2012-11-04 19:59:48
不二式 @Fujishiki

彼は驚いたような声音で言った。「ファミレスでも働いてたの?」彼女は苦笑して言った。「掛け持ちしてるんだー」彼は言った。「勉強とか大変じゃない?」彼女は目を伏せて言った。「うん、まあね。学校だと眠気をこらえるだけで精一杯だし、なかなか勉強してる暇ないかな」

2012-11-04 20:03:19
不二式 @Fujishiki

彼は内心ドキドキしながら言った。「僕で良かったら、勉強くらい教えるよ。」彼女は苦笑して言った。「あはは、ありがとう。でも、なかなか時間ないし…」彼は身を乗り出して言った。「なら、テスト勉強用にまとめたノート貸してあげるからさ、これがあれば多分短時間でも勉強できるし」

2012-11-04 20:06:55
不二式 @Fujishiki

彼女は目をぱちくりさせていた。彼は不安げな表情になる。彼女は微笑んで言った。「ありがとう。なら、お言葉に甘えようかな」彼は笑顔で言った。「なあに、君が苦労してるのに比べればこんなのなんてことないって!」彼女は目を伏せた。彼は心配そうに彼女を見て言った。「どうかした?」

2012-11-04 20:12:41
不二式 @Fujishiki

彼女は言った。「うん…嬉しいんだ。こんな親切にしてもらえること、滅多にないからさ…」彼は言った。「そっか…あ!そうだ!ケーキ!」彼女は首をかしげて言った。「え?」彼は慌てて言った。「だって!今日誕生日なんでしょ?もう23時45分だよ?終わっちゃうよ!」

2012-11-04 20:16:54
不二式 @Fujishiki

彼は店員の方を向いて大声で呼んだ。「すいませーん!」店員はすっと駆け寄ってきて言った。「ご注文はお決まりですか?」彼は言った。「ケーキって15分以内で持ってこられますか?」店員は言った。「ええ、大丈夫ですよ」彼は言った。「良かった!ねえ、君は何が食べたい?」

2012-11-04 20:20:36
不二式 @Fujishiki

彼女は照れながら言った。「ええっと、じゃあ、チーズケーキで」彼は言った。「じゃあ僕もチーズケーキを!あ、あとロウソクってありますか?」店員は言った。「ああ、お誕生日ですか?そのためのロウソクなら、一本20円程度でお付けすることができますが」彼は言った。「じゃあそれも!」

2012-11-04 20:25:09
不二式 @Fujishiki

店員はハッとして言った。「ひょっとしてお誕生日って今日ですか!?」彼女はびくっとしつつ頷いた。店員は言った。「大変!もうすぐ持ってこないと食べる時間がないですね!すぐ持ってきますね!」店員はたったったと走って厨房へと行った。彼は笑って言った。「良い人だなあ、店員さん」

2012-11-04 20:28:22
不二式 @Fujishiki

彼女は笑って頷いて言った。「良かった。今日は久しぶりにいい誕生日を過ごせそう」彼は微笑んだ。店員は早歩きでケーキを持ってきた。彼女は驚いて言った。「えっ!ワンホールじゃないですかこれ?」店員は言った。「だって、一個だとロウソク立てられないでしょう?ケーキ代は私が出しますから!」

2012-11-04 20:34:26
不二式 @Fujishiki

彼女は困った表情で言った。「そんな…悪いですよ…今日のシフトだって変わってもらってるのに…」店員は微笑んで言った。「せっかくの誕生日でしょ?それに彼氏も一緒なんだし!これは先輩である私のおごりよ!」彼女は笑って言った。「ありがとうございます…」

2012-11-04 20:37:14
不二式 @Fujishiki

店員はウインクして言った。「その代わり!私の誕生日はシフト変わってね!」彼女は笑って頷いた。店員は言った。「さあ!ロウソクに火を点けますね!」ロウソクに火が灯り、店員が指を鳴らすと、店の電気が消え、真っ暗になった。彼女は困った顔で言った。「え…先輩、これって…」

2012-11-04 20:40:23
不二式 @Fujishiki

店員は笑顔で言った。「大丈夫、店長とお客様にはちゃんと許可もらってますよ!」彼女はロウソクの灯りの中で彼をチラリと見た。彼は微笑んで彼女を見て、歌い出した。「ハッピバースデートゥユー ハッピバースデートゥユー」すると周りの客や店員まで口ずさんでいる。

2012-11-04 20:45:56
不二式 @Fujishiki

「ハッピバースデーディア七美ちゃーん ハッピバースデートゥユー」大喝采の中、彼女はロウソクの火を消した。一瞬真っ暗になり、また店内に明かりが灯る。彼女は泣いていた。彼は心配そうに言った。「大丈夫?」

2012-11-04 20:49:22
不二式 @Fujishiki

彼女は言った。「ううん、悲しいんじゃないの…嬉しいの…パパとママがいなくなってから、こんな温かい誕生日迎えられたの初めてだったから…ありがとう…みなさん…」彼は言った。「さあ、顔を上げて。朝倉さん。ケーキ食べよ。誕生日もうすぐ終わっちゃうしさ」

2012-11-04 20:51:48
不二式 @Fujishiki

彼女は頷き、ケーキを食べ始めた。彼女は微笑んで言った。「美味しい…ちょっとしょっぱいけど」彼は笑った。店員はうっとりして言った。「はあ…いいなあ。彼氏と一緒に誕生日。しかもこんなにたくさんの人に祝ってもらえるなんて!この幸せものー!」店員が彼女の頭を拳でぐりぐりした。

2012-11-04 20:57:31
不二式 @Fujishiki

彼女は笑って言った。「やめてください先輩ー痛いですよー!」彼はドギマギしながら言った。「あ、あのー店員さん…実はその件なんですけど…僕は彼氏じゃなくて…」店員は言った。「え?彼氏じゃなかったの?」彼女はきょとんとして言った。「いいえ?彼氏ですよ?」彼は驚いて言った。「え!?」

2012-11-04 21:01:00
不二式 @Fujishiki

彼女はそっと彼の耳に吐息をかけながら言った。「今日から彼氏です。いいですよね?」彼は真っ赤になりながら頷いた。

2012-11-04 21:04:49