【二次創作な】「ヒドゥン・アーツ・オブ・オールド・ワンズ」♯1

ニンジャスレイヤー(@njslyr)の二次創作小説です。クオリティは実際安いですがよろしければお楽しみ下さい。
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欺瞞動画の会社 @naclaqns

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2012-11-28 15:38:36
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(フォロワーの皆さんへ:今から流すのはニンジャスレイヤーの二次創作ファンフィクションです。二次創作なのでクオリティは実際安く、また原作との食い違いもある。TLの流速も早まるので、お邪魔ならミュートやリムーブ等お願いします。)

2012-11-28 15:40:26
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(読んでいただける皆さんへ:実況タグ #piyo_nj が整備されています。僕があとで見返してニヤニヤするのに非常に便利です。ぜひご利用下さい。それでは、おたのしみください。)

2012-11-28 15:42:01
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2012-11-28 15:42:22
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ホコリにまみれた書架の合間をLEDカンテラの弱々しい光が照らしてゆく。いや、その照度は意図的に抑えられていた。ずらり並ぶ重厚な装丁の背表紙は、それを開いた者に知識と…狂気を授け、そして終には破滅させんと不可解な魔力でもって誘い続ける。これらを一度に直視する事は自殺に等しいのだ。1

2012-11-28 15:45:47
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世界全土を電子ネットワークが覆い尽くし、あらゆる情報がIRC上に氾濫する時代。物理書籍はもはやレガシーデバイス以前の紙屑である。有用な情報は片端からOCR化され、そうでない物は単に破棄された。デカダン好事家かあるいはブディズム関係者でない限り、この紙束をあえて使う者は居ない。2

2012-11-28 15:52:40
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だが…それとは異なる理由で葬られた書物も確かに存在する。読者諸氏はあの忌わしい「カラテノミコン」をご存知だろうか?刑死貴族が遺した呪いの詩集「百人一首」は?かつて何万ものツジギリ死体を生んだ「ヤギュー写本」は?失われし彼の地への道筋を記す「アウターアオモリ・トライアングル」は?3

2012-11-28 15:59:48
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(訳注:「アウターアオモリ・トライアングル」は東日流外三郡誌 http://t.co/zkxPAkf8 だと思われます)

2012-11-28 16:05:43
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時の権力に危険視され、そして禁じられた魔書の数々。ここネオサイタマ大学図書館は、それら上代の叡智を封じた言わば死体安置所である。眠れる悪魔達を敢えて起こそうとする者は久しく現れず、墓守無きモルグはただカビとホコリに埋もれるままにされていた。今この時、不遜なる来客を迎えるまでは。4

2012-11-28 16:07:38
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靴音は無い。粗末なコンクリートに積もった綿ボコリがそれを吸収する。足跡のみがただ彼の来訪を記憶し、そしていずれはまた無窮の時がそれを消し去るであろう。この空間は目まぐるしく移り変わる外界のショッギョ・ムッジョからは完全に切り離されている。ここではブッダのルールさえ通用しない。5

2012-11-28 16:15:12
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彼は足を止めた。カンテラの光が書架の端にショドーされた「596」の分類番号を照らし出す。魔物の口めいた書架の狭間へと彼は歩を進める。数十秒の後、微かに響いた「フッ」という笑い声は、彼の物だったか、それとも姿現さぬ何者かの物だったか。いずれ彼はそこに目当ての書物を発見した。6

2012-11-28 16:20:59
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分類番号596、それはすなわち「食品・料理」。彼が求めたのはフレイザーが遺したもう一冊の魔道書「銀シャリ篇」でもなければ、冒涜的テーブルマナー指南本「スシ食教典儀」でもない。蟲食いのイタマエが記した「妖蝦の秘密」でもなく、あの悪名高き狂戯曲「黄衣の板長」ですらなかった。7

2012-11-28 16:27:31
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それら全てに勝る混沌がそこにはあった。書架の最上段の更に片隅、配架した者が少しでも人目に付かぬようにと祈ったに違いない位置にそれはあった。得体の知れぬ魚のなめし皮で装丁されたその書物は、紙魚に侵され、カビにまみれ、半ば風化しながら、静かに彼の目を待ち続けていた。8

2012-11-28 16:34:49
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ラテン語名「Fossile SUSHI」、原書名「スシ化石」。あらゆるスシの根源を記すそれに、フジオ・カタクラは迷う事なく手を伸ばした。9

2012-11-28 16:41:54
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NINJASLAYER二次創作短編集「エイト・ミリオン・フラウズ」より:「ヒドゥン・アーツ・オブ・オールド・ワンズ」♯1

2012-11-28 16:42:32
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事の発端は一週間前に遡る。10

2012-11-28 16:48:31
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ネオサイタマ某所の雑居ビルに居を構えるマレニミル社は、常の事ながら倒産の危機に瀕していた。オフィスUNIXの前に腰掛けたフジオ・カタクラは指でデスクをトントンと叩く。モニタの会計ソフトに表示された数字はことごとく赤、そして各所より借り入れた資金の返済期限は確実に迫っていた。11

2012-11-28 16:52:59
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マレニミル社の業務を一言にまとめるなら、それは冒険と呼ぶのがふさわしい。世界各地の遺跡を巡り、時には盗掘まがいの手段で美術品や考古学的史料を持ち帰る。この商売は言わずもがな実際イチバチ・ギャンブルめいており、そしてつい最近彼らはそれに大負けした。その結果がこの赤字だ。12

2012-11-28 16:59:38
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スポンサーが経費をケチり日本国内で済ませようとしたのが災いした、とカタクラは考えていた。岡山県の神秘の魔洞…余りに手垢の付いたネタだ。愚かなスポンサーはTVか何かで俗悪なプログラムを見たのだろう、だが常客からの依頼を断る訳にもいかず、彼らは負けると分かった勝負を強いられた。13

2012-11-28 17:08:40
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フジオ・カタクラはマレニミル社唯一の社員ではあるが、本業は無論経理ではない。彼はその古文書解読の才を見込まれネオサイタマ大学卒業を待たずに社に引き抜かれた。帳簿と格闘するなどという情況は彼には不本意極まりなかったが…他に任せる社員もいない。いたが、彼らは職を辞していった。14

2012-11-28 17:16:51
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ガチャリガチャリと乱暴に鍵を外す音が鳴り、安普請のドアが勢い良く開いた。「フジオ君!スシを食いに行かんか!」ズカズカと入り込んできたのは短躯に猪首の男、脂ぎったその顔は溢れるバイタリティを隠そうともしていない。無遠慮は当然だ、彼こそはマレニミル社の経営者、ホソダ社長である。15

2012-11-28 17:26:43
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「相変わらず辛気くさい顔をしているな、フジオ君!スシだ、たまにはスシでも食って栄養を付けんと体を壊すぞ!」カタクラは訝しんだ。社の経理を一手に引き受ける彼は社長のポケットの中身を完璧に把握している。経営状況は入社以来最悪、この男にスシを奢る余裕など無い筈だ。つまり、何かある。16

2012-11-28 17:33:48
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ホソダの顔面は何かを隠し通すようにはできておらず、実際その表情は子供のように輝いている。カタクラはこの男がまたぞろ新たな、そしてろくでもない冒険に挑もうとしている事を悟った。「スシ、いいですね。どこの店ですか?」「聞いて驚くなよフジオ君。キョートだ、キョート・リパブリック!」17

2012-11-28 17:43:54
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「しかも相当の老舗だ!なに、君の精勤に少しは報いなければと…」「本題に入りましょう。準備には時間が要ります」「ムッ…」企みを看破されたホソダは渋々といった具合に尻のポケットから紙片を取り出した。新聞の切り抜きであろうか。モノクロ写真には凪いだ水面に浮かぶ黒い岩礁が写っている。18

2012-11-28 17:50:11
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「琵琶湖だ。つい先週の事だが…この地方に大きな地震があった。元々戦争の影響で地殻は不安定だったのだがな、今回はいつもと違った」カタクラはホソダの言葉を聞きつつスクラップ記事を読み進める。「地震がこの岩礁を隆起させたと?」「少なくともその記事にはそう書いてあるな。ところで…」19

2012-11-28 17:56:25