電鉄業の多角経営の過去と未来

電鉄業の多角化経営の歴史的意味について、現在の持株会社との違いや、会計操作という観点からの思いつきをツイートしたところ、思いがけずありがたい反応をいただいたので、流してしまうのも惜しいと思いまとめておきました。@sakura_ariake さん、@semakixxx さんに感謝します。
電鉄 償却 会計 多角化 持株会社 日本不動産業史 不動産
bokukoui 6026view 2コメント
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  • 戦前電鉄業の多角経営についてツイート
  • ふと、前から何となく思っていたことを、文字にしてみようと思い立ち、長々とツイートを始めました。
  • 墨東公安委員会 @bokukoui 2012-11-28 22:43:12
    日本の電鉄会社は多角経営の典型とされ、戦前からそうだったといわれる。ただ、調べてみるとその形態はかなり違う。今の電鉄会社は、バスや不動産や百貨店などを別会社化し、電鉄本体が事業持株会社となっている(阪急は完全に持株会社)。しかし戦前は基本的に、電鉄がみな直営していた。(続く)
  • 墨東公安委員会 @bokukoui 2012-11-28 22:47:13
    (承前)持株会社が禁止されていなかった戦前でも、多角経営の電鉄会社がその形を採用しなかったのだろうか。それは良く分からないが、非常に乱暴な仮説として今考えているのは、いろいろな事業をごっちゃにすることで、会計操作をしやすかったのではないか、と小生は今考えている。(続く)
  • 墨東公安委員会 @bokukoui 2012-11-28 22:52:27
    (承前)戦前の日本には、公認会計士による監査制度がなかった。当時はそもそも公認会計士制度がなく、計理士と呼ばれていた。さらに株式の分割払い込み制度と、社債の発行制限(払込資本金以上の社債を発行できない)のため、十分な資金調達には配当を継続しなければならなかったのである。(続く)
    • このツイートの意味のつながりが分かりにくいかも知れませんので、ちょっと補足しておきます。
    • 戦前の株式制度では、額面50円(これが一番多い)の株券でも、会社設立時には12円50銭(四分の一)しか払い込まなくてよく、その後会社の事業拡張に応じて払い込みを株主から徴収する、という制度でした。少ない資本でも創業しやすくする意味があったといえます。
    • しかし会社の業績が振るわないと、会社による追加払い込み徴収の要求に対し、株主は払込を拒否する場合があります。そうなると株は失権するのですが(株は競売される)、会社としては予定の資金調達が失敗することになります。なので、資金調達を順調に進めるためには、どうしても高配当の継続が必要になります。
    • 株主にしても、追加払い込みに備えて資金をプールしておく余裕なんてそんなにありませんから、往々追加払込に対しては、その株券を銀行に持ち込んで、それを担保に払込資金を借りることになります。なので、株主にしても払込に応じることにリスクのある場合が少なくなく、配当の少ない株に対してはシビアな姿勢を取るわけです。
    • さらに、それでは株ではなく社債で資金調達だ!と考えても、戦前の商法では社債発行の限度額が払込済資本金以下に制限されていましたので、株主から追加徴収しないと社債も発行できなくなるのです。だから、払込済資本金ギリギリまで社債発行済みの会社があると、あの会社はそろそろ払込をとるぞ、払うくらいなら株売っちゃえ、という事態になることもあるのです。
    • カネ余りで投資先を探すのに苦労する現在と違い、昔は貧乏だった=経営資金の調達も大変だったわけです。なので、内部留保も償却も無視して配当したり、挙句には粉飾決算で蛸配、ということもよく起こるわけでした。
  • 墨東公安委員会 @bokukoui 2012-11-28 22:59:35
    (承前)したがって、蛸配してでも配当する粉飾決算へのインセンティヴと、それを可能にする制度の未発達があったといえる。ので、多様な事業を展開し、その間で数字を遣り繰りすることで、経営者がもっともらしい状況を株主に示しやすかったのではないか、という気がするのである。(続く)
  • 墨東公安委員会 @bokukoui 2012-11-28 23:07:43
    (承前)小生は現在、阪急の経営状況を洗いなおしているのだが、営業報告書では会計が「電鉄部」「地所部」に別れている(電灯とか宝塚温泉とかは電鉄部に繰り込まれている)。ところが、社債の利子がなぜか、電鉄部と地所部できっちり折半されて支出に計上されている。(続く)
  • 墨東公安委員会 @bokukoui 2012-11-28 23:14:49
    (承前)別に社債で得た資金を、電鉄部と地所部できっちり等価に使っているわけではあるまい。つまり恣意的に支出額を決めているとしか思えないのである。また大正時代の阪神電鉄で、電車で使う電力の費用を、兼業の電力業の売上に計上していたような節がある。他にも利子を隠している事例が。(続く)
  • 墨東公安委員会 @bokukoui 2012-11-28 23:18:13
    (承前)なお、戦前の電鉄業は基本的に、「減価償却?それって何?おいしいの?」の世界である。というわけで、戦前の電鉄業の多角経営は、もちろん儲けるのが最大目的だが、それほど儲からなくても何となく「盛業中」に見せる効果もあったのではないか、と思うのである。(続く)
  • なお、戦前の鉄道の銷却については、以前小生のブログで「東名の築堤は崩れても新幹線が崩れないのは 償却の意義と歴史」という記事を書きましたので、ご関心のある方はご参照いただければ幸いです。
  • 墨東公安委員会 @bokukoui 2012-11-28 23:20:14
    (承前)まあつまり、今せっせと戦前期の電鉄会社の各部門別収支状況を洗いなおしているのだけれど、営業報告書を見ても文字通りに受け取れない事例が多く、いろいろ検討しなぇればならず大変という話。それでも阪急はまだ、情報を出さない南海鉄道に比べれば、まだ判断しやすいほうで・・・(続く)
  • 訂正:検討しなぇれば→検討しなければ

  • 墨東公安委員会 @bokukoui 2012-11-28 23:22:26
    (承前)以前、別な報告のために調べた京成は、もっと営業報告書の情報が読み取りやすかった。京成は戦前の電鉄会社としては償却もしていたほうで、情報開示に明朗会計という今日的課題では「進んでいた」のだろうか。でもコンプライアンスの点じゃ、東京市会で一大疑獄も起こしたな。(続く)
  • 墨東公安委員会 @bokukoui 2012-11-28 23:25:41
    (承前)ともあれ、昔の企業経営にはそういった問題が付きまとっていて、敗戦後の商法の大改正でそれが大きく変わったそうです。戦後改革にはそういう面もあったのだけれど、憲法だの民主化だのについて、あまりそういう視点は聞かないような気がします(小生が知らないだけでしょうが)。(続く)
  • 墨東公安委員会 @bokukoui 2012-11-28 23:26:17
    訂正:憲法だの民主化だのについて→憲法だの民主化だのに比べて
  • 墨東公安委員会 @bokukoui 2012-11-28 23:29:13
    (承前)とにかく、皆が抱いているような企業や経営のイメージが必ずしも根が深くなく、もっと違った蓄積の上に現存する企業も建っていることがあるのではないか、ということで。過去の悪しき規制や既得権益を打ち破れ、というフレーズは耳当たりがいいですが(実際負の遺産はあるにせよ)、(続く)
  • 墨東公安委員会 @bokukoui 2012-11-28 23:32:03
    (承前)実はその打ち破るべきとされているものの像が幻影だったり、別な意味を持っていたり、そういうことも多いと思うのです。規制の源流を戦時体制に求める「1940年体制」論などは規制緩和論者に好まれましたが、経営史の研究上では否定的な見解のほうが多いと思います。(続く)
  • 墨東公安委員会 @bokukoui 2012-11-28 23:34:16
    (承前)というわけで、もっと研究をしなければいけないことが多いですね。直接には、如上の課題にも、昭和初期に資本主義の改革を唱えた革新官僚の更なる研究が必要だと思います。ので「革新官僚列伝」刊行を希望します。以上。(え、結論がないって? それを今考えてるんですよ・・・)
  • このままなら尻切れトンボで終わった所でしたが、ありがたいことにご意見を下さった方が複数おられましたので、以下に記録させていただきます。
  • 桜有明 ‏@sakura_ariake さんとの対話
  • まず、桜有明‏さんの「蛸配してでも配当する粉飾決算へのインセンティヴと、それを可能にする制度の未発達があったといえる」というツイートに関連してされたコメント。
  • 桜有明 @sakura_ariake 2012-11-28 23:43:12
    @bokukoui 今はもうなくなったけど、かつて「建設利息」(会社成立後開業前でまだ利益が出ていない時期に特別に株主に支払える利息)なんつうものがあったのも配当へのインセンティブを示すものだったのかなあと思ったり。戦後の経営者にかかる配当圧力に比べると驚くばかりでしょうねえ
  • 墨東公安委員会 @bokukoui 2012-11-28 23:46:17
    @sakura_ariake 建設配当5%は今から見るとすごいですよね。新会社は建設配当が認められるけれど、既存会社の増設では駄目なので、わざわざ別会社を建てて建設配当して、完成してから合併する、なんて業もよくありましたし。資本の乏しい社会だったということなのですね。
  • もう一つ、「持株会社が禁止されていなかった戦前でも、多角経営の電鉄会社がその形を採用しなかったのだろうか」についていただいたコメントを。

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