テニプリでDQパロ～導かれし者たち７～

煌＠ＤＱ11ネタバレ注意 @kou_DQ

一匹の魔物が転げるような勢いでチトセの前に現れました。「なんね…！」「そ、それが…！人間が、シライシ様のところに乗り込んだと知らせが…！ナイトがやられたようです！」「なっ…！？」チトセの目が大きく見開かれました。リョーマもその言葉に驚きます。 #テニプリＤＱパロ

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シライシを護っていた鎧の騎士はリョーマですら苦戦した手練れです。ただの人間が敵うはず…元よりあの塔に入る手段すらないはずなのに。「チトセ様っ！？」リョーマが呆然としている間に、チトセは物凄い勢いで走り去っていきました。リョーマたちなどもはや見向きもせずに。 #テニプリＤＱパロ

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魔物も慌ててチトセの後を追います。取り残されたリョーマたちは、ただお互いの顔を見合わせました。「シライシ…」「大丈夫なのかな…」チトセの所業に心を痛め、ルビーの涙を流していたシライシの姿が脳裏によぎります。「…とにかく、ここを出よう」 #テニプリＤＱパロ

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リョーマたちは来た道を戻ります。地獄の帝王を倒した高揚感は、先ほどの出来事ですっかり冷めてしまいました。「…あ！」リョウが高い声をあげます。「どうしたの？」「宝箱！」「…へ？」「さっき見つけた宝箱、今度は開けられるかも！エスタークが守らせてたお宝だよっ！」 #テニプリＤＱパロ

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リョウは踊りだしそうな笑顔で宝箱の方へ走り出しました。ユキムラが思わず吹き出します。「あはは、リョウは流石だね」「ある意味尊敬に値するな」「…恥ずかしい…」そんなみんなの姿にリョーマも思わず微笑を浮かべます。一行に和やかな空気が戻りました。 #テニプリＤＱパロ

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リョウがなにやら小さな壺を抱えながら戻ってきました。「それが」「うん。宝箱に入ってた」「何それ」「よくわかんない…ユウシ」「おう。どれどれ…わぷっ！？」ユウシが蓋を開けた瞬間、物凄いガスが飛び出してきました。直撃したユウシが咳き込みます。 #テニプリＤＱパロ

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「な…なんやこれ…？」「そのガス、延々湧いてくるみたいなんだよ」「先言えや！」「俺だけガス浴びたとか悔しいじゃん！」「どんな理屈じゃ、どあほう！！」言い合う二人は放っておいて、リョーマたちは壺を眺めます。「ガスが噴き出す壺かあ…、なんか聞き覚えがあるような」 #テニプリＤＱパロ

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「…リバーサイドの学者ではないか」ヤナギが呟きます。「そういえば…」「気球の材料、と言ってましたね」「あげたら？あの人に」「我々には無用の長物だしな」「そうだね」リョーマは壺をしまうと、口論中の二人をたしなめ、鉱山を抜け出しました。 #テニプリＤＱパロ

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「おお！それこそまさに太古の文献に描かれしガスのツボ！」リバーサイドの学者が目を…正確には眼鏡を輝かせました。「是非それを譲ってください！」リョーマは頷いて壺を差し出しました。「これで気球が完成する…！皆さん、ご協力に感謝いたします！」 #テニプリＤＱパロ

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学者がお礼にととってくれたリバーサイドの宿屋で、リョーマは星を眺めていました。「…眠れないの？」いつの間にか横に立っていたイヴの言葉に頷きます。「シライシさん…大丈夫かな…」「…わからない。不測の事態みたいだし…ルビーの涙はマニアには高価で取引されるからね」 #テニプリＤＱパロ

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「じゃあ…そのために…！？」「可能性は高いよ」「そんなことの、ために…」リョーマはがっくりと肩を落としました。「人は愚かだと、チトセは言っていた。俺も、そう思うよ」イヴがリョーマの横に腰を落とします。「人のため、誰かのために、それ以外が傷つくこともいとわない」 #テニプリＤＱパロ

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「良い魔物もいる、悪い人間もいる。いつか両者が歩み寄る日は来るのかもしれない。…だけど、俺たちはまず手の届く場所から護っていくべきだ。理不尽な理由で滅ぼされようとしている人間を護るのが、勇者である君の使命だよ」「……はい」 #テニプリＤＱパロ

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翌日。リョーマたちの目の前にあったのは巨大な気球でした。「アナタたちのお陰で完成した気球です。是非、アナタたちの旅にお役立てください」数人が操作方法を聞いている間に、ユキムラやリョウが早速乗り込みます。 #テニプリＤＱパロ

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「浮上させるで…！」ユウシがガスのツボを操作すると、気球にガスが貯まり、やがてカゴがふわりと浮かび上がります。「…浮いた！」「スゴい！！」「お気をつけて！」学者の見送りを受けながら、リョーマたちは空へ空へと向かっていきました。 #テニプリＤＱパロ

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気球はたくさんの仲間と馬車を乗せながらも、危なげなくふわふわ空を行きます。「さて、これからどこに行く？」「うーん…天空の剣を探したいところだけど、手掛かりがなあ」「アツシどう？」「…それが、今までみたいな強烈な力がどこにも見当たらなくて」「困ったな」 #テニプリＤＱパロ

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「…俺、行きたいところがあるんだけど」リョーマが小さく呟きました。「行きたいところ？」「……シライシヒル」「あ…」エスタークの根城で魔物が言ったあの言葉が、リョーマにはずっと気にかかっていました。「もう、遅いかもしれないけど」「…いや、…行ってみよう」 #テニプリＤＱパロ

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ユウシの操作で気球はシライシヒルの傍に着地しました。リョーマたちはシライシがいるはずの塔を眺めますが、誰も顔を出す気配はありません。懐から取り出したあやかしの笛が、リョーマの吐息でまたひとりでにメロディを奏でました。 #テニプリＤＱパロ

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「そん、な…」「っ酷い…」「……」部屋は滅茶苦茶に荒らされていました。綺麗に飾られた家具はぼろぼろになってひっくり返り、壁にはひび割れすらあります。部屋の入口にこびりついたどす黒い染みは、きっとあの騎士の…。「これを…人間が…？」 #テニプリＤＱパロ

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リョーマは勇気を出して部屋に一歩入りました。シライシの姿どころか、誰の気配も…。「っ…何かいる」リョーマは辺りを見回し、ずたずたに裂かれたベッドの下を覗き込みました。「あ…お前ら、は…」そこにはあのスライム、ケンヤが縮こまっていました。 #テニプリＤＱパロ

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あちこちボロボロのケンヤにホイミをかけると、ケンヤは小さく謝礼を言いました。あの元気いっぱいに騒がしかった姿からは想像もつかないしおらしさです。「…ケンヤ、何が…」「……いつも通りやったんや、あの瞬間までは」 #テニプリＤＱパロ

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いつものようにお茶をしながら、ふたりで他愛ない会話を楽しんでいた午後。突然響いたのは騎士の呻き声でした。驚いたシライシが振り返って見たものは、すでに事切れて倒れ込む騎士の姿。そしてその後ろにいる、凶悪な表情をした人間たち。 #テニプリＤＱパロ

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「お前が…エルフか…」人間の一人がゆっくりと足を踏み出します。「に、人間が何の用や！シライシには指一本触れさせんど！」ケンヤが精一杯声を張り上げ、シライシの前で護るように跳び跳ねます。ですが人間は何かをぶつぶつ呟きながら近づいてきました。 #テニプリＤＱパロ

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シライシの良く聞こえる長い耳が、その言葉をとらえます。「ルビーの涙を奪え、エルフを殺せ」人間は延々とそう呟いていました。「っ…アイツら…正気やない…」シライシは気づきました。あれらは『何かに操られている』と。「ケンヤ、下がるんや！」「でもっ」「下がれ！」 #テニプリＤＱパロ

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人間が剣を振るいました。シライシは素早くケンヤを抱え込みます。その肩を剣先が切り裂きました。「ぐぁっ…」「シライシ！」傷は深くありませんでしたが、シライシはぐっと唇を噛み締めて痛みを堪えます。「寄越せ、ルビーの涙を流せ…」人間が再び剣を振り上げます。 #テニプリＤＱパロ

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「な、何しとんねん、こんボケェ！！そんな無茶なことしてシライシが死んでもうたら、涙も何もあれへんのやで！？」「ケンヤ、無駄や…」「シライシ！？」「この人間たちは正気やない…聞く耳なんかもたん」「ならせめて俺が噛みついたる…！」「あかんで、ケンヤ」「せやかて！」 #テニプリＤＱパロ