#美容師ぎゅ

ぴょんて師匠作品
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ぴょんて師匠は移動。 @pinkmonster0203

1. 「無理言ってすみません」ドアを潜ると申し訳なさそうに奥から彼が顔を覗かせた。「いいんです。私もちょうど切りたかったから」そう微笑むと少し安心したようにぎこちなく笑う彼。一週間前信号待ちの舗道でカットモデルにと声を掛けられた。 #SJで妄想 #美容師ぎゅ

2012-11-26 13:23:17
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2. 猫背気味な背中、前髪の奥に隠れた伏し目がちな視線に断ろうとして脳裏に過ったアイツの顔。イキナリ別れを告げられて連絡も取れなくなった。長い髪が好きなアイツのためにずっと伸ばし続けてきた髪。早く切って忘れてしまいたかった。 #SJで妄想 #美容師ぎゅ

2012-11-26 13:29:55
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3. 「あの……」鏡の中の自分と見つめあっていると後ろから彼の声。「あ、ごめんなさい」慌てて案内されるがままにシャンプー台へと座る。そっと膝に掛けられるブランケット、見上げた先の黒いVネックのニットから覗く白い首元に思わず見惚れてしまう。 #SJで妄想 #美容師ぎゅ

2012-11-26 13:34:03
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4. 「熱くないですか?」長い指先がゆっくりと髪に触れて心地よい温度のシャワーでマッサージされていく。「大丈夫です」とくにそれ以上の会話もないまま、冷たい風に縺れた髪の毛を丁寧に解いていく彼の指先。優しく頭皮を撫でながらシャンプーされていく。 #SJで妄想 #美容師ぎゅ

2012-11-26 13:41:09
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5. 「すいません……俺、あまり話すの得意じゃないんです」そう言いながら見下ろされた視線に鼓動が跳ねて、思わず視線を逸らしてしまった。「カットしますね」シャワーチェアーを起こされ、鏡の前へと案内される。「どんな感じがいいですか?」 #SJで妄想 #美容師ぎゅ

2012-11-26 13:47:07
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6. 「短く……ショートにして下さい」鏡越しに見つめられ、他意はないとわかっていても緊張してしまう。声を掛けられた時には気付かなかった彼の視線の奥にある静かな光。「ショート……ですか?」驚いて一瞬目を大きく開いた彼がそっと毛先に触れた。 #SJで妄想 #美容師ぎゅ

2012-11-26 13:51:17
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7. 「すごく綺麗なのに……大事に伸ばしてきたんじゃないんですか」その言葉と鏡越しの優しい視線に泣きそうになって深く俯いた。「俺に任せてもらってもいいですか?希望に添えるかどうかはわからないですけど」そう告げた彼が手に取ったハサミを髪へと通す。 #SJで妄想 #美容師ぎゅ

2012-11-26 13:56:46
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8. 小気味よいハサミの音だけが響く2人だけの店内。時々鏡越しにぶつかる視線になぜだかはやる鼓動。「髪って……」ふいに口を開いた彼に視線を上げると随分と軽くなった毛先に指先で触れた。「色んな想いが詰まってるものだと思うんです」 #SJで妄想 #美容師ぎゅ

2012-11-28 12:32:21
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9. 「その人のなりが表れるものだとも思うし……あなたの髪は……」長い指先が毛先に触れて仕上げにハサミを通す。「すごく大切なものがたくさん詰まってる気がするんで……悲しんだ分だけ短くしました。後はまた、大切に伸ばしてあげて下さい」 #SJで妄想 #美容師ぎゅ

2012-11-28 12:32:26
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10. 彼が私に選んでくれた髪型は肩先で優しく毛先が揺れるボブ。重たくなりすぎたアイツへの想いを彼のハサミが軽くしてくれた。「……っ……」気を張っていた肩から力が自然と抜けていく。「奥を片付けて来ますから気が済むまで泣いて下さい」 #SJで妄想 #美容師ぎゅ

2012-11-28 12:32:42
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11. 頬を幾筋も伝う涙は伸ばした髪の分だけ募ったアイツへの想い。まだ耳に残る笑い声、笑うと細くなる眼も全部大好きだった。「……っ……」奥から響くシャワーの音はまるで私の声を隠すように静かな店内にやけに大きく響いた。「……どうぞ」 #SJで妄想 #美容師ぎゅ

2012-11-29 15:12:56
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12. 涙が乾いた頃、目の前に差し出された湯気立つコーヒー。少し甘めのコーヒーが泣き疲れた体に酷く心地がいい。「ありがとう……」「……いえ」ただ何も言わずそばに座っててくれる彼の優しさに甘えそうになって慌てて席を立った。「あの、私……帰らなきゃ」 #SJで妄想 #美容師ぎゅ

2012-11-29 15:13:01
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13. 「あ、はい。今日はありがとうございました」上着を持って来てくれた彼からそれを受け取り、店のドアを開けるといつのまにか降り出していた雨。「あ……」2人同時に空を見上げて声を上げた。「傘あったかな……」慌てて店の奥へと戻った彼。 #SJで妄想 #美容師ぎゅ

2012-11-29 15:13:04
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14. 「すいません……傘無かったです」奥から申し訳なさそうに戻ってきた彼に首を振って雨足を強めていく空を見上げた。「こんなとこで良かったら雨が止むまでいて下さい」彼の言葉に頷いてレジ横のソファへと腰を下ろした。 #SJで妄想 #美容師ぎゅ

2012-11-29 15:13:07
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15. 薄く店内に流れ始めた静かな曲に耳を傾けながら雑誌のページをパラパラと捲る。ふと顔を上げるとハサミを愛おしげに仕舞う彼の横顔に視線が釘付けになる。まるで愛しい人の頬を撫でるようにハサミを撫でる指先。「どうかしましたか?」 #SJで妄想 #美容師ぎゅ

2012-11-29 15:20:22
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16. 視線に気付いた彼が窮屈そうに振り返る。「何もないです」慌てて視線を逸らしてもしばらくすると無意識にまた彼を追う視線。「あんまり……見ないで下さい。見られるの苦手なんです」クシャクシャと大きな手のひらで髪を握りながら背を向けた彼の背中。 #SJで妄想 #美容師ぎゅ

2012-11-29 15:24:36
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17. 抱き締めたい衝動に駆られた自分に酷く驚いて読み掛けの雑誌に突っ伏した。「何してるんですか?面白い人ですね」声を上げて笑う彼が向かい側に深く腰を下ろした。「泣いたり雑誌に顔を埋めたり見てて退屈しないですね」 #SJで妄想 #美容師ぎゅ

2012-11-29 15:35:25
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18. ふっと表情を崩した彼は髪を切っていた時とは違って少しだけ幼く見えて何だか可愛く見えた。「どうして、私に声を掛けてくれたの?」その言葉に少し考え込んだ後ゆっくり口を開いた彼。「わからないです。ただ髪が綺麗だったから」 #SJで妄想 #美容師ぎゅ

2012-11-29 15:46:32
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19. 「貴女が……どんな人か知りたくなりました」一瞬だけ目を伏せてついで真っ直ぐに見つめながらそう告げられた。「俺が声を掛けた時、悲しげに伸びた髪に触れた貴女の笑顔が見たくなったんです……変、ですよね」小さく呟いて彼はそのまま黙り込んでしまった。 #SJで妄想 #美容師ぎゅ

2012-12-03 15:19:43
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20. 「雨……止んだか見て来ます」横を過ぎて行こうとした彼の服の裾を咄嗟に掴んでいた。「変……じゃない」「え?」戸惑いの声を上げた彼に抱き付いて、広い背中にそっと額をすり付けた。「俺が言った意味……わかってますか?俺は……」 #SJで妄想 #美容師ぎゅ

2012-12-03 15:26:04
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21. 「貴女に……一目惚れしたんです」抱きついた手を解かれ、ゆっくり振り向いた彼の視線は酷く切なくて。「卑怯ですよね。弱ってる時に優しくするなんて……でも、貴女の笑顔が見たかったのは嘘じゃないですから」 #SJで妄想 #美容師ぎゅ

2012-12-03 15:32:27
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22. 頬に触れようと伸ばした指先をキュッと握り締めて、ドアの方へと向かおうとした彼の背中をもう一度強く抱き締める。「だから……俺が言った意味わかってるんですか?」「……わかっててしてるんだもっ……」振り返った彼に強引に引き寄せられて合わせられる唇。 #SJで妄想 #美容師ぎゅ

2012-12-03 15:39:34
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23. 「んっ……」息継ぐ暇もないほどに繰り返されるキス、首に手を回すとさらに深くなっていく。ふと感じた感触に唇を離すと気まずそうに視線を逸らされて体を離す彼。「すいません……すぐ治まりますから」天井を見上げて深呼吸を繰り返す背中に指先で触れる。 #SJで妄想 #美容師ぎゅ

2012-12-03 15:46:54
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24. そのまま抱きついて指先を下へと滑らせた。「ちょっ……俺の気持ちに流されないで下さい。こんなことしちゃダメですよ」私の手を掴む彼の手が熱い。「流されてなんかない……私も同じ気持ちだから」「途中で止めてあげられませんよ?」 #SJで妄想 #美容師ぎゅ

2012-12-03 15:57:32
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25. 黙ったままでいると音を立てて口付けられた後、鏡の前抱え上げられる。「貴女が大事に髪を伸ばしてきた相手を忘れさせるなんてカッコいいことは言いません。忘れなくていいから今だけ俺のことだけを考えて下さい……」近付いてくる彼の顔にそっと目蓋を閉じた。 #SJで妄想 #美容師ぎゅ

2012-12-03 16:07:01