コネコとコイヌとお兄さん

添嶋譲 @literaryace

買い物から帰る途中のコネコ。地図を持った赤い服を着たお兄さんを見かけました。なんだか迷っているようです。「なにを探すにゃ？」見せてもらった地図には近所の子供たちの家に印がついています。「泥棒にゃ！」「ちがう、ちがうよ。25日の下準備だよ」赤い服のお兄さんは慌てます。 #コネコビト

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「ていうかぼくがみえるの？」赤い服のお兄さんはコネコに聞きます。「今日はそんなに寒くないにゃ。もこもこしているのはお兄さんだけにゃ」しまった。帰ったら怒られてしまいます。でも。ダメもとで聞いてみることにしました。「ここの家の子の欲しいものが知りたいんだけど」 #コネコビト

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お兄さんが指でしめした先には、かずくんの家がありました。「かずくんにゃ。コネコお友だちにゃ」「なんか言ってなかった？ おもちゃとか、ゲームとか」コネコは考えます。なんか言ってたかにゃあ。と。向こうにかずくんの姿が見えます。「隠れるにゃ！」二人はとっさに身を隠します。 #コネコビト

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かずくんはコイヌと遊んでいます。「コイヌはサンタさんになにかお願いした？」「船の図鑑をお願いしたわん。かずくんは？」かずくんは少し困った顔になりました。「本当はあるけど、たぶんむりだよ」いったいなんでしょう？コイヌにはわかりません。「お父さん。遠くにいるんだ」 #twnovel

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かずくんのお父さんはタンシンフニンで遠くにいます。クリスマスに帰ってこれるかわからないそうです。「もうずいぶん会ってないから顔を忘れちゃうよ」それは大変です。でもコイヌはどうしていいかわかりません。「サンタさんにお願いしてみるわう？」そんなことできるでしょうか？ #twnovel

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「それにゃ！」コネコの頭にひらめきました。「お兄さん、かずくんのパパを連れてくるにゃ！」「えー……。そんなこといいのかな……」「サンタさんにできないことはないってソエジマさんが言ってたにゃ！」無茶言うなぁ、と赤い服のお兄さんは思いましたがやってみるしかありません。 #コネコビト

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「お兄さんはサンタさんにゃ？」コネコは聞きます。でもまだ見習いなのでたいしたことはできません。子どもたちの願いを確認するために来たのです。まさかかずくんのお父さんを探すことになるなんて。「コネコがお願いするにゃあ。きっとわかってくれるにゃあ」うまくいくでしょうか？ #コネコビト

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よくわからないけど、気をつけて行ってくるんだよ。そうソエジマさんに見送られてコネコ、コイヌ、赤い服のお兄さんはトナカイに乗って行ってしまいました。たいていの不思議なことには慣れていますが、今度ばかりは困ってしまったようです。また何を始めようというのでしょうか。 #コネコビト

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雲を抜けて、空を渡り、お兄さんの操るトナカイは駆けて行きます。速いにゃあ！コネコはこれから起こることにワクワクしています。かずくんのパパを連れて帰るにゃあ！「コネコ、本当に大丈夫だわん？」コイヌが聞いてきますがお構いなしです。大丈夫にゃ。できないことはないにゃ！ #コネコビト

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かずくんのお父さんはタンシンフニンで遠くにいます。今年のクリスマスも帰れるかどうかわかりません。「かずくんのパパですにゃあ」小さなお客様が来ました。「君は？」「かずくんのお友だちのコネコですにゃ。かずくんはサンタさんにパパが帰ってきてほしいってお願いしましたにゃ」 #コネコビト

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んー。お父さんは考えます。後ろの方たちは？「コイヌとお兄さんですにゃ」「えーと付き添い、です」たぶんそのお願いは叶えられそうにないな。お父さんは言います。年末年始も関係ない大事な仕事が「かずくんは顔を忘れちゃうていってますにゃ！大変ですにゃ！」コネコは泣きそうです。 #コネコビト

添嶋譲 @literaryace

コネコにはパパもママもいませんですにゃ。ソエジマさんは優しいけど、でもやっぱりさみしくなりますにゃ。かずくんはパパがいますにゃ。いる場所がわかってて会えないのは良くないですにゃ。コネコは大粒の涙を流して言います。かずくんのお父さんは困ってしまいました。 #コネコビト

添嶋譲 @literaryace

にゃあああ。コイヌも初めて見るくらいコネコは泣いています。コネコやコイヌがそうであるように、大人には大人の事情があるのです。でも。今を逃すともう二度と会えなくなるような気がするのです。かずくんがかわいそうですにゃああ。コネコの涙が誘うように空には雪が舞い始めます。 #コネコビト

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「大丈夫です。外国にはクリスマス休暇があるんです。二三日早く帰ったってなんとでもなります。ならないような現場ならあたしが許しません」そう高らかに宣言するのは会社のお姉さんです。「あたしも父が帰ってこなくて泣きましたから。とっとと帰ってください」お姉さんは男前です。 #コネコビト

添嶋譲 @literaryace

どうやって帰れと。そう思うお父さんにコネコは「赤い服のお兄さんのトナカイさんがありますにゃあ」「いや、いくらなんでも四人は無理だよ」「頼りにならないにゃ」まあまあ。そういう時、ソエジマさんはなんと言っていましたか？「知恵と勇気で乗りきるわん！」コイヌが叫びます。 #コネコビト

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コイヌは背中のカバンからハサミを取り出します。ちょきちょき。空を大きく切り取ります。「ソリを折るわん！」初めて折るので少し苦労しましたが、四人くらいは乗れる大きさのソリが出来上がりました。「トナカイさんに引いてもらうわん！」お兄さんは慌ててソリとトナカイを繋ぎます。 #コネコビト

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ソリに乗り込むコネコに会社のお姉さんがかけよります。そしてコネコにこういいました。「きっとあなたなら素敵な人間になれるよ」にゃ？どうしてわかるにゃ？「あたしの家にもコネコがいたから」にゃあ！トナカイはソリを引いて空を駆け上がります。赤い服のお兄さんは必死に操ります。 #コネコビト

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サンタクロースの弟子はまさか自分が事件に巻き込まれるとは思いませんでした。見せてはいけない姿を見られ、しかもまだやったことのないソリの手綱を操るのです。帰ったらサンタさんに絶対叱られます。でも子どもの願いを叶えたくてサンタさんになりたいのです。後には引けません。 #twnovel

添嶋譲 @literaryace

「夢を見ているのか？」かずくんのお父さんは自分の身に起きていることが信じられません。空の折り紙でできたソリは雪と星をまき散らしながら飛んで行きます。コイヌ！カッコいいにゃ！そんなことないわん！雲を抜け、夜空を渡りみんなの住む町が見えて来ました。「かずくんの家にゃ！」 #コネコビト