山本七平botまとめ/【”問題化”という問題】/~ナリタ問題はなぜ解決できないのか?~

山本七平著『「常識」の研究』/”問題化”という問題/73頁以降より抜粋引用。
3
山本七平bot @yamamoto7hei

①【″問題化″という問題】「ナリタ」とカナ書きされた場合、この言葉は特別な意味を持っていたようである。この「ナリタ」に象徴されたいわゆる「成田問題」は、何やかやと論じられて既に久しい。<『「常識」の研究』

2012-12-08 11:28:03
山本七平bot @yamamoto7hei

②しかし、今までの多くの「問題」の跡を探ると、このいわゆる「ナリタ」も、同じようなパターンで大詰めを迎えたと思えるので、ここでこの「問題」という言葉の内容について少し考えてみたい。

2012-12-08 11:57:45
山本七平bot @yamamoto7hei

③というのはこの問題の主役は、「ナリタ」ではなく、その中心はむしろ「″問題化″という問題」だと私は考えるからである。

2012-12-08 12:28:05
山本七平bot @yamamoto7hei

④そして、この「″問題化″という問題」の本筋をつかまないと、「ナリタ」という虚構の主役が退場すれば、今度は「ゲンパツ」という別の主役が登場して同じ事件を演ずるという形で、この劇は絶えず再演を繰り返すと私は思うからである。

2012-12-08 12:57:46
山本七平bot @yamamoto7hei

⑤「ナリタ」という問題には、二つの要素がある。 ①空港それ自体がもつ問題、 ②過激派という問題。 そしてこの①②は原則的には無関係で、①がなくても②は存在するし、②がなくても①は存在する。

2012-12-08 13:28:06
山本七平bot @yamamoto7hei

⑥従って①を解決したからといって②が消失するわけではなく、②が解決したからといって①が消滅するわけではない。 ところが、マスコミはこの①②を同一問題のように取り扱って「問題化」するので、多くの人は①②が一つの問題であるかのような錯覚を抱いている。

2012-12-08 13:57:44
山本七平bot @yamamoto7hei

⑦それが「ナリタがなければこんな問題は生じない」という発想にもなり、ここに「廃港論」が出てくる余地がある。 もう一度言うが、空港としての成田のもつ諸問題を解決するということと、過激派が発生するに至る諸問題を解決することとは、本来は全く別のことだということである。

2012-12-08 14:28:03
山本七平bot @yamamoto7hei

⑧そこで、この二つを峻別してそれぞれを解決しない限り、何の問題も解決しないであろう。 そしてここに「″問題化′の問題」があると思われる。

2012-12-08 14:57:44
山本七平bot @yamamoto7hei

⑨昔「満州問題」という問題があった。ここにも ①当時の満州それ自体がもつ問題、 ②日本の軍部がもつ問題、 という二つの問題があり、この二つも本質的には無関係で①を解決したからといって②が消滅するわけでなく、②が解決したからといって①が消失するわけではなかった。

2012-12-08 15:28:00
山本七平bot @yamamoto7hei

⑩と同時に②があるから①が生じたわけではなく、①があるから②が生じたわけでもない。 だがこのことは、今もなお奇妙に混同されている。 当時の満州にさまざまな問題があったことは否定できず、それは日本の軍部の有無に関係なく存在した。

2012-12-08 15:57:43
山本七平bot @yamamoto7hei

⑪その問題は中国の内政問題として、それ自体として解決さるべき問題であったであろうが、元来は、日本の軍部とは関係なく、また軍部に解決できる問題でもなかった。

2012-12-08 16:28:06
山本七平bot @yamamoto7hei

⑫同様に成田も羽田も含めて、日本の空港にはさまざまな問題はあるであろうし、その問題はその間題として解決さるべき問題であろうが、①の問題に過激派は無関係であるし、元来、過激派に解決できる問題ではない。

2012-12-08 16:57:44
山本七平bot @yamamoto7hei

⑬と同時に満州問題が解決したからといって軍部問題が自動的に解決するわけではないように、成田問題が解決したからといって過激派問題が解決するわけでもない。 私は、当時の日本はこの対応を誤ったと考えている。

2012-12-08 17:28:00
山本七平bot @yamamoto7hei

⑭いわば「軍部問題」という最も面倒な問題と正面から対決することを回避し、①②を一体化して「問題化」し、②に譲歩して①を解決すれば②が自動的に解決するかの如き錯覚を抱きつづけた。 だがそれは結局、満州問題がシナ問題へと発展していったにすぎない。

2012-12-08 17:57:43
山本七平bot @yamamoto7hei

⑮そして同じような形で成田問題を解決すれば結局、過激派は次の目標へと進み、「成田問題」は「原発問題」へと発展し、さらに「要人誘拐」へと進んでいくかも知れない。

2012-12-08 18:28:01
山本七平bot @yamamoto7hei

⑯成田空港のもつ諸問題は、成田空港のもつ諸問題として解決しなければならない。不便なら、この不便をあらゆる方法で除去しなければならない。 そしてこれは、政府が本気になってやれば、そうむずかしい問題ではないと私は考える。だが、それは過激派問題の解決にはならない。

2012-12-08 18:57:46
山本七平bot @yamamoto7hei

⑰過激派問題は過激派問題として別の形で対処すべきであり「ナリタ」の次が「ゲンパツ」であっても、これを決して「原発問題」として「問題化」してはならない。勿論、原発には原発の問題があり、それはそれ自体として解決されるべきものだが、それは解決したからといって過激派問題の解決にはならない

2012-12-08 19:28:05
山本七平bot @yamamoto7hei

⑱もちろん過激派に原発のもつ問題を解決する能力があるわけでなく、従って「ナリタ」のような問題化は何の解決も生み出さないからである。

2012-12-08 19:57:45
山本七平bot @yamamoto7hei

⑲なぜ過激派が生ずるか、なぜマスコミが過激派問題を成田問題にすりかえて実質的にこれを支持しつづけてきたかといった問題は改めて論ずべきだと思うが、この問題解決の第一歩として、まず「問題化」に問題があり、これが対処すべき問題の本質を見失わせているということを銘記すべきであろう。

2012-12-08 20:28:04