山本七平botまとめ/【技術以前の問題】/~日本のエネルギー問題解決を妨げる真の問題は、建設以外のことに費やす日時(=話し合いのコスト)~

山本七平著『「常識」の研究』/Ⅲ常識の落とし穴/技術以前の問題/161頁以降より抜粋引用。
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山本七平bot @yamamoto7hei

①【技術以前の問題】成田は13年目に開港した。 本当に必要な建設期間を3年とすれば10年の遅延であろう。 それについて様々な批判があるが、その批判のすべては、成田が特別だという観点に立っている。 だが、この無意識の前提は果たして正しいのであろうか。<『「常識」の研究』

2013-12-27 03:38:58
山本七平bot @yamamoto7hei

②実は正しくない。 現代は「マスコミが報道しないと問題は存在しなくなってしまう」時代だそうだが、以上のことは、まさにこの問題への正しい指摘といえる。 従って成田だけ政府がその対応を誤ったと考え、些末な問題点を指摘して政府を糾弾したとて、意味はあるまい。

2013-12-27 04:08:51
山本七平bot @yamamoto7hei

③もし政府が誤っているなら、一切への対応が誤っているわけで、その背後にあるものは技術とは別の問題の筈である。 というのはほかでもない。 現代の電源開発・発電所設置もほぼみな「成田なみ」におくれており、国鉄の工事もまた例外ではないからである。

2013-12-27 04:39:05
山本七平bot @yamamoto7hei

④問題を複雑にしない為一応「原発」問題を除いておこう。 石油火力は現代では技術が確立しているから実際の建設期間は2年半あれば十分だと技術者はいう。そして全ての関係者は「まさにその通りなのだが…」と言って口を濁す。 というのは石油火力でさえスムーズにいって10年かかるからである。

2013-12-27 05:08:51
山本七平bot @yamamoto7hei

⑤という事は、建設以外の事に費やす日時が、その3倍の7年半だという事である。 従ってエネルギーの多様化という問題を一応棚上げすれば、応急処置としての火力の設置は2年半で十分だという事だが、実際はその前に早くて7年半があり、最大の問題点は実は、この7年半なのだという。

2013-12-27 05:38:56
山本七平bot @yamamoto7hei

⑥「成田、成田」と言っていたが、その間に電力問題も同じ様相を呈しており、 ただそれが報道されていない というのが実情である。 飛行場の建設が遅れても一国が麻痺するわけではない。 しかしエネルギー問題はそうはいかない。

2013-12-27 06:08:53
山本七平bot @yamamoto7hei

⑦そして問題の根本は「エネルギー問題」にあるのでなく 「エネルギー問題の問題化」 という問題にある。 したがって問題は、日本における独特の「問題化」という問題であり、政府が対処すべきことは、まさにこの問題であっても、エネルギー問題そのものではない。

2013-12-27 06:39:00
山本七平bot @yamamoto7hei

⑧というのは、いかに親アラブを口にし、総理がアラブを歴訪し、石油について何か特別な取りきめをしてこれを確保したところで、この石油をエネルギーに転換して必要な方面に適時適切に送りうる態勢が整わない限り、エネルギー問題は解決しないからである。

2013-12-27 07:08:55
山本七平bot @yamamoto7hei

⑨石油がそこにあるということは、エネルギーがそこにあるということではない。 現時点における最大の問題は「日本国内の7年半以上」にあるのであって、アラブ諸国にあるわけではない。 従って政府が″全エネルギー″を投入すべき面は、この「7年半」をい かに解決するかである。

2013-12-27 07:39:06
山本七平bot @yamamoto7hei

⑩成田のその十年がどれだけの無駄であったかを、すでに多くの人が論じている。 しかしこの無駄は、発電・鉄道その他のすべてにおいても発生しているのであり、それは最終的には「消費者もしくは納税者が負担している」のである。

2013-12-27 08:08:59
山本七平bot @yamamoto7hei

⑪したがって政府はまずこの「話し合いのコスト」がどれだけになり、それが総建設費の中でどれだけの比重を占めているかを公表し、国民に判断の基礎資料を提供すべきであろう。 第二に「話し合い」なるもののルールを確立し、そのルールが正当性をもち得るか否かを国民に問うべきであろう。

2013-12-27 08:39:03
山本七平bot @yamamoto7hei

⑫言うまでもなく「話し合い」には前提が必要であり、次に、話し合いの対象の明確化が必要であり、第二に、その話し合いの結論づけが、利害関係者の多数決によるのか、それともミノベ式「橋の哲学」に基づいて、一人の反対があっても全てをご破算にするというのか、この点も明確にすべきであろう。

2013-12-27 09:08:56
山本七平bot @yamamoto7hei

⑬以上のことができるかできないかは、最初に言ったように、技術の問題ではない。 むしろ思想の問題と言える。 確かにごく最近までは、自民党政府は思想が必要でなかった。

2013-12-27 09:38:59
山本七平bot @yamamoto7hei

⑭もしそこに何かがあるとすれば、 なるべく摩擦を起こさず、 なるべく「問題化」せず、 なるべく新聞に取り上げられず、 という「三ず的姿勢」であったと言える。

2013-12-27 10:08:58
山本七平bot @yamamoto7hei

⑮そしてこの姿勢が可能であったのは、先進国というモデルがあり、なるべくスムーズにそれに追いつけばよかったのと、追いつかねばならぬという国民的合意がその背後にあったからである。 政府はこの合意の上に乗っていればよかった。

2013-12-27 10:39:06
山本七平bot @yamamoto7hei

⑯だがその時代は既に終わったのであり、今までの行き方ではあらゆる問題が処理できなくなったと考えるべきであろう。 ではどうすべきか。 それはそのような状態に対処するためには、現在どのようにすべきか、それをしなければどのような状態になってしまうかを明確に国民に訴える事である。

2013-12-27 11:08:58