「シー・ノー・イーヴル・ニンジャ」#2#3(再放送バージョン)

ニンジャスレイヤー再放送のまとめです。#1 http://togetter.com/li/408634 #2#3 http://togetter.com/li/423038 #4#5 http://togetter.com/li/451419
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NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

「畜生!こいつにばかりは慣れねえにも程があるぜ!」ジャイゴが毒づいた。時間は朝6時である。壁に四角い穴が開き、囚人達が「飼料」と蔑称するオカラ・スシが人数分のトレーに乗って、オートメーションで供された。天井のスピーカーからは精神を澄み渡らせる効果を狙ったネンブツが流れている。23

2012-12-14 19:10:18
NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

「食って寝て、食って寝てだ」ベツリキがモサモサとオカラ・スシを頬張りながら、ため息を吐いた。「これじゃ出所する頃にゃ、ジャイゴ=サンみたいなスモトリになっちまう。しかも味がマズイ」双子のタケオ兄弟は同時に相槌を打った。「「そのとおり!」」 24

2012-12-14 19:12:43
NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

「逆に俺にゃあダイエットよ」ジャイゴがあっという間にオカラ・スシを呑み込んだ「健康になっちまう!ビフテキが食いてえ。バッファローの味噌漬けでもいい。クリスマスはいつだ?」正座してスシを食べ終えたフジキドはゼンダを見た。ゼンダは誰とも目を合わせず、暗い目でオカラを咀嚼している。25

2012-12-14 19:23:07
NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

「労働!キアイ!」合成音声が叱責した。ガンガンガン、アラーム音が鳴り、ボンボリが点滅。ザシキが解放され、廊下への整列が促される。廊下には既に看守がジュッテを構えて待機している。「歩け歩け!」26

2012-12-14 19:28:56
NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

看守達が追い立てるまま、ザシキから集められた囚人達は薄暗い廊下を何度か曲がり、工場区画へ到達する。区画入り口のノレンには「労働が自由にします」「不如帰」とミンチョ書きされている。正午のスシ供給時間まで、彼らには労役としての工場労働が課されるのだ。 27

2012-12-14 19:32:56
NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

フジキドら「リンドウ」チームに割り当てられたのはバイオイカ・ジャーキーの裏返し業務だ。コンベアーベルトで右から流れてくるバイオイカは、赤熱するプレス機で繰り返しプレスされる。囚人達はプレスの合間を縫ってここへ手をさしはさみ、イカを素早く裏返さねばならない。 28

2012-12-14 19:36:09
NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

この作業は実際危険で……早速、見よ!「アイエエエエ!」少し離れた上流で悲鳴が聞こえた。うっかりと手をプレスしかかってしまった囚人だ。手動の安全装置があるため致命傷には至らぬが、火傷は免れない。コンベアーベルト表面にはお節介にも「インガオホー」とあらかじめプリントされている。29

2012-12-14 19:39:10
NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

「アップ」「ダウーン」定期的にジャイゴが発する合図にあわせ、皆で手を差し入れ、イカを裏返す。胸の悪くなるような悪臭である。「アップ」「ダウーン」「アップ」「ダウーン」ベツリキがゼンダとフジキドにおどけた調子で警告する「だんだんトリップしてきて、いい感じに眠くなる。寝るなよ」30

2012-12-14 19:46:58
NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

「アップ」「ダウーン」……「アップ」「ダウーン」……「アップ」「ダウーン」……プレス機の高熱とイカが発する蒸気で、皆、大粒の汗を流している。フジキドの右隣では、ゼンダが荒い息を吐き、しきりに額の汗を拭っている。「アップ」「ダウーン」……「アップ」「ダウーン」31

2012-12-14 19:48:49
NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

「アップ」「ダウーン」……「アップ」「ダウーン、おい!」ジャイゴが叫んだ。意識を失いかけたゼンダが、吸い込まれるようにコンベアーベルトへ倒れこんだのだ!「ヤバイ!」巨体のジャイゴが咄嗟に安全装置レバーを引く!「ウオオーッ!ドッソイ!」ガゴン!装置が悲鳴めいた軋み音を発する。32

2012-12-14 19:52:40
NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

「ドッソイオラー!」ジャイゴがスモトリ仕込みの鬨の声を発し、ジャッキアップめいてレバーと格闘!だが安全装置が十分に働かない!軋みながらイカもろともゼンダを押し潰そうとする赤熱プレッサー!「早く引きずり出せ!」「「さ、作業着が引っ掛かっちまってる!」」タケオ兄弟が悲鳴を上げた!33

2012-12-14 19:53:42
NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

そのときだ!「イヤーッ!」電撃的速度でジャイゴの傍らに到達したフジキドが自らもレバーに手をかけ、力任せにジャッキアップ!ジャイゴの膂力を持ってしても押しとどめきれなかったプレッサーがあっという間に引き上がった!「お、オメエ、すっげえな!」ジャイゴが興奮して叫んだ。 34

2012-12-14 19:58:50
NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

その隙にベツリキがコンベアーベルトに引っかかったゼンダの作業衣のボタンを引きちぎり、タケオ兄弟が朦朧状態のゼンダを力いっぱい引っ張る!ゴウランガ!その苦力、古事記にも記された巨大カブ・サルベーション伝説のごとし!見事な連携によりゼンダは救出された!実際彼は危険な状態であった!35

2012-12-14 20:00:44
NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

ブガーブガー!警報音が今更に鳴り響き、機械が完全停止した。押っ取り刀で監督看守が二人駆けてくる。「大事ないか」「ねェよ、おかげさまでな!」ジャイゴが吐き捨てるように答えた。「ならばOK」「エート、よかった」看守たちはくるりとUターンして帰っていく。ベツリキは床にツバを吐いた。36

2012-12-14 20:02:45
NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

フジキドは備え付け水瓶の水をヒシャクで汲み、ゼンダに頭からかぶせて意識を取り戻させた。もう一度ヒシャクで水を掬い、差し出す。「飲め」「クソくらえ!余計なお世話……」ゼンダは叫びかけた。そして我に返った。「……いや……違う。俺が悪い。すまなかった。皆、迷惑をかけた。すみません」37

2012-12-14 20:15:34
NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

「そうだぜ!」ベツリキがゼンダの肩を叩いた。「こんなとこでタフガイ気取ってもいい事ねェって。仲良くしようぜ。ジゴクのサバービアは亡者同士って言うだろ?あれと同じよ」「……」ゼンダは口を拭うと、ばつが悪そうに微笑し、無言で頷いた。冷水が彼の鬱屈を実際洗い流したかのようだった。38

2012-12-14 20:26:13
NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

昼食休憩でガリ・スシを食べながら、ようやくゼンダは「リンドウ」の面々と会話を交わした。彼らを驚かせたことに、この男は壮絶な「ソバシェフ・ランペイジ事件」の犯人その人であった。実際、この所内食堂備え付けのテレビ放送で、大捕物のライブ中継を目撃していた囚人もいる。 40

2012-12-14 20:30:10
NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

ゼンダはガイオンの地表住まいの人間であり、実直な老舗ソバ店を夫婦で切り盛りしていた。朝早く起きてソバ粉を打ち、適正な価格でそれを振る舞い、店を閉めて4時間睡眠をとり、また起きてソバを打つ……そんなゼンめいた禁欲的な職業生活を営んでいた彼が、なぜあれほどの暴力に走ったのか? 41

2012-12-14 20:32:44
NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

すべての始まりは、彼のソバ店と大通りを挟んだ区画のマンション群が、ある日突然、メガコーポ「マグロアンドドラゴン・エンタープライズ」によって買い上げられて更地となり、周辺住民への周知無しに、人工プロテイン粉末加工工場の建設が開始された事であった。 42

2012-12-14 20:40:05
NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

スシ用プロテイン粉末加工工場が落成すれば、近隣地域はスシ・プロテイン加工時に巨大プラントが発する有毒な大気に包まれることになる。反対運動の先陣を切ったのがゼンダだった。大気が汚染されればゼンダのソバ粉はおしまいだ。なにより、愛してきた町が汚される事が我慢ならなかった。43

2012-12-14 20:44:29
NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

そもそもなぜ、ガイオン地表の閑静な住宅街にそんな場違いな物が?それ即ち、マグロアンドドラゴンの巨大コンビナートが、ちょうどその区域の垂直直下、アンダーガイオン二階層にわたり、ブチ抜きで存在していたからだ。単にこのメガコーポにとって地理的な利便性があった。理由はそういう事だ。 44

2012-12-14 20:47:13
NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

ガイオン地表の建築は規制が非常に厳格だ。ではなぜ、伝統を重んずるキョート政府がそれを許したか?賄賂。莫大な賄賂だ!ゼンダは計画を止めさせるべく必死で汚職の情報を集めた。脅迫に耐えた。マグロアンドドラゴンの後ろ盾ヤクザクランと対立関係にある別のヤクザクランに協力を仰ぎすらした。45

2012-12-14 20:50:59
NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

しかし、反対運動が長期化するにつれ、ゼンダを支援していた人々は一人また一人と離れていった。企業による分断工作……ヤクザクランを用いた執拗な嫌がらせ、転居支援約束といった飴と鞭のやり口が功を奏したのである。しまいには、ゼンダは逆に、でっち上げの法令違反をつきつけられてしまう。 46

2012-12-14 20:59:42
NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

反対運動に心を砕いたが為に肝心のソバ屋は廃業。心労で倒れた妻はそのまま帰らぬ人となった。しかもゼンダが頼ったヤクザクランは最初から敵方とつながっていた。ヤクザクランの敵対関係など、ウィンウィン関係の利益折半約束を前にすれば容易に吹き飛ぶ。ゼンダはお人好しのピエロだったのだ。47

2012-12-14 21:00:22
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