vs odaidepon 朝斗色twnovelまとめ
夜半の警鐘を最期に女はその表情を崩す。高いヒール、指に絡めた装飾品。それらは総て彼女の輪郭を形作る役割しかない。メッキの剥がれた奥は田舎から出てきた硝子玉。傲慢、眷顧。夜が廻れば果てなく低い沸点と融点の間で、酷使した無色透明の微笑を湛える。宛の無い道は終わらず。 #twnovel
2009-12-10 01:51:37デジタル表記が刻一刻と終焉を呼び寄せている。『この世の終わりまで』。その残酷な道標は、裏を返せばその瞬間まで命が永らえるという呪縛。然しどうだろう、定められた命運は幸か不幸か?その最期まで私は穏やかに眠ることも出来ぬというのに。『この世の終わりまであと二憶年』。 #twnovel
2009-12-10 22:53:00骨董店の奥に眠る柱時計は、ここ数年上手く振り子が動かない。店の主人が手をかけても甲斐はなく、時折思い出したようにかたりかたりと不規則に。店には今日も使われなくなったものたちが先の主の手を離れやってくる。また振り子が揺れる。主人だけが、その哀しき意味に気付いていた #twnovel
2009-12-11 11:32:01蒼天に真白い積乱雲が立ち込めている。軒先の風鈴の音。それに伴奏を加える遠き鳴神。表札の森安の二文字の上を蜥蜴が逃げていった。男は簾の下でガリガリと頭を掻く。「これじゃ駄目だ」浮かぶのはたった一人の麗しき横顔。二年振りに描いた曲は、誰の元へ届くことなく丸められた。 #twnovel
2009-12-11 22:50:05最後の固有名詞登録した人間に呪いあれ★ RT @odaidepon: @Asatoiro 不満を抱いた雷鳴と小さい新曲と恋に落ちた森安なんとかの物語
2009-12-11 22:51:36「今日はご馳走だからね!」今朝早く彼女は宣言した。あまり料理が得意ではないのに、俺の誕生日の為に腕を奮ってくれるらしい。早めに切り上げ帰り着くと、沢山のレシピを広げたまま寝息をたてる彼女。毎日練習していたのは知ってるから、起こしたら二人で一緒に作ることにしよう。 #twnovel
2009-12-12 17:05:00銀色の砂漠に居て、目を覚ませば雪原だった。水があるだけマシだが安息を得られる向こうの方がずっと良い。教え子の顔を思い浮かべ又夢の淵へ落ちていく。折しも聖誕祭前夜。身篭った女が空へ問う「どうか、あの人を返してください」それは子供でない彼女には叶えられぬ聖人への願い #twnovel
2009-12-13 23:01:59暗いほうになっちゃった。 RT @odaidepon: @Asatoiro 彷徨の教師と苦悩するサンタクロースと恋に落ちた大人の物語
2009-12-13 23:03:47「要らないものはありませんか」男は街角に立ち廃品回収をしている。報酬は金銭でなく自身が育てた野菜を遣り取りしていた。集めた物は工場ではなく自らの屋敷へ。そこには今まで集めたものが並んでいる。男は密かに待っているのだ。「要らないのは貴方でしょう」と見破られる日を。 #twnovel
2009-12-13 23:35:46『貴女を戴きに』。その熱烈な文面が愛の囁きでない事は既に知っている。元は仮想の歌姫。それが沢山の私と私の楽曲に寄って崇拝の偶像となる。全てが私でなくとも、愛されるのも恨まれるのも、目移りされるのも。今やデスクトップで歌う桜色の髪の彼女。ちらり振り返る、強い視線。 #twnovel
2009-12-14 23:18:39『歌姫の立ち位置を戴きに』。ヤンデレ。 RT @odaidepon: @Asatoiro 殺戮の手紙と乗り換えられた宝石と不機嫌な初音ミクの物語
2009-12-14 23:21:01賭けをしようと彼は言った。「手札のどちらが黒かを当てる遊びだ。僕は飽いてしまったから、当てる事が出来たなら財産を全てやろう。外れても君は何も損はしない。悪くないだろう」然し身形の整った男は首を振る。「他人の人生を狂わせる加担はしない主義でね」窓外で秋雨が落ちる。 #twnovel
2009-12-16 01:38:44どう考えても140字のテーマじゃない RT @odaidepon: @Asatoiro 神域の愚者と現実的な公爵と涙を流した秋の物語
2009-12-16 01:40:52ピン、と金貨を一つ宙に放る。哲学者の横顔が上を向いたので男は左の道を選んだ。前の街で遇った吟遊詩人の歌を口ずさみ、ただただ日の落ちる方へ歩く毎日。そうすればいつまでも太陽の下を歩けるからと、誰に問われるでもなく、懐から出した硝子玉へうっとりと笑いかけて。 #twnovel
2009-12-16 03:09:29召使の淹れた紅茶で喉を潤しながら、か弱き姫は星空を仰ぐ。溜息は白く濃く、粛々とバルコニーの下へ。「何もかも昨日と一緒。退屈だわ」落ちた先には無数の赤い花。それは流れたばかりの鮮やかさを保っていた。本当に退屈、と、もう返答がないのを承知でその人影へと話しかける。 #twnovel
2009-12-16 23:40:37街の男共を魅了した娼婦がいた。決して広い街ではないが、山を越え尚名の届く妖艶さ。歌声に誰もが想いを馳せる。快く無いのは彼らの妻達。街を興す見世物に担いだ挙句、報酬も渡さず酒場を追い出した。女は歌う。すると街の男は誰もふらふらと後を追い、深い湖の中へ消えて行った。 #twnovel
2009-12-17 01:56:21太陽の下を歩けない少年は、図書館の奥深くに匿われている。彼の血の呪いを街の者達が知らぬ訳ではない。全てを理解した上で受け入れているのである。然し、それを良しとせぬのが齢千年の猫。か細い腕を捻り上げ、噛み付く様にその耳元で囁く「どうして生きているの?」金の眼は鋭い #twnovel
2009-12-17 22:56:26