ミストルティン編 第三話 葬室からの励と責~イット・カムズ・レイド~ #1

#1 「プリーズ、セイ・オールライト(Please, say alright)」(再編版) http://seimunoyakata.blog81.fc2.com/blog-entry-201.html #2 http://togetter.com/li/434386
0
Astal_jukebox @astral_jukebox

「まだまだ至らないところもあるかも知れませんが、皆さんと一緒に成長していきたいと思っています」豊かな胸がごく僅かに揺れる。これ以上育とうと言うのか!「…」隆光はその一部始終を目に焼き付けた。彼でなければ見逃しちゃっていたかも知れない。誰かは何かを堪えるように顔下半分を押さえた。

2013-01-04 21:03:18
Astal_jukebox @astral_jukebox

「せ、せんせー!」男子の一人が手を挙げた。AB部員の海上起矢だ。「スリーサイズは!」「ふふ…秘密です」はぐらかす由理。口を全力で押える勇矢。「89E」隆光が呟く。『!?』色めき立つ男子!「確かか!?」誰が聞く。「俺の目は誤魔化せん…確かな見応えを感じた」「どうなんですか先生!?」

2013-01-04 21:06:10
Astal_jukebox @astral_jukebox

「うん…その、通り、よ…」胸を押さえ、頬を赤らめながら彼等の担任はつい、そう答えた。『よっしゃあ!』『豊満ヤッター!』「お、おい!WとHは!?」騒ぐ男子の一人が隆光に続きを促すが…。「…知らん」「そんなこと言わず!」「おっぱい以外は分からん」「……」彼の眼力は胸限定であった。

2013-01-04 21:09:08
Astal_jukebox @astral_jukebox

「浅空にでも聞いたらどうだ?」「!?…浅空?」隆光が指差した浅空勇矢は出席番号一番の生徒…廊下側最前列だ。「おい、教えてくれ!」「いやそもそも何で知ってるんだ!オイ!」何人かの男子が詰め寄るが勇矢は変わらず口を押え続ける。パンパン!「はい、皆そこまで」由理が手を鳴らして制する。

2013-01-04 21:11:46
Astal_jukebox @astral_jukebox

「勇矢…んんっ…浅空君大丈夫?」由理は勇矢の顔を覗き込む。彼には担任の胸の谷間が良く観測出来る筈だが、露骨に嫌そうな顔の彼は目線を逸らし、隣の席の伊都谷湊の大平原の方を観察していた。湊は図らずも彼同様の顔になると平坦な胸元を両腕で庇う。

2013-01-04 21:14:13
Astal_jukebox @astral_jukebox

智明と他の男子はそれぞれ違う理由で殺意を向けた。(湊をそんな目で見やがって…)(てんてーに何故か名前で呼んでもらった上に目線逸らしやがって…)彼の目線は露骨過ぎて左後部の智明達からも良く分かるほどだった。彼の平均好感度は百を最高として初期の70から23くらいまで下がっていた。

2013-01-04 21:16:44
Astal_jukebox @astral_jukebox

「誰かさんが…離れて、くれれば、マシに、なりますよ…『愛川先生』」勇矢が絞り出した台詞で教室の空気が死んだ。彼の好感度は1になった。この世界がギャルゲーなら初日でバッドエンド確定である。もっとも彼の主観ではある意味でとっくにエンディング後の次回作なのだが。

2013-01-04 21:19:57
Astal_jukebox @astral_jukebox

「あら~嫌われちゃったかしら?まあ、まだ今年一年…いえ、三年もあるからゆっくり仲良くしていきましょうね、ゆうや君?…あ、学校では浅空君だったわ!いけないいけない!」『!?』「げ」男子一同の聖なる泉が枯れ果て、凄まじき怒りが雷の如く出でた。勇矢は間もなく闇に葬られるだろう。

2013-01-04 21:22:11
Astal_jukebox @astral_jukebox

「それじゃあ私のはここまでにして、皆の自己紹介を始めましょうか…出席番号1番は…あらっ!浅空君!それじゃあ、来栖見小学校でも毎年同級生を自己紹介で沸かせた9月25日生まれ天秤座元弓道部、お父さんが警察官、お母さんが弁護士の浅空君、どうぞ!」なんたるわざとらしいキラーパスか!非情!

2013-01-04 21:27:02
Astal_jukebox @astral_jukebox

勇矢は口いっぱいに苦虫を頬張ったような顔になっていた。今は10:30。今日の昼休みは正午から。一人の持ち時間は2分とされた。120秒だ。長い。しかも血液型以外の主要な話題を奪われた。

2013-01-04 21:28:20
Astal_jukebox @astral_jukebox

―――お分かり頂けるだろうか。この2分と言う時間の短さと長さを。『人生は何かをするにはあまりにも短く、何もせずに過ごすにはあまりにも長い』という格言があるが、これは正にその縮図と言えよう。人によっては短過ぎるくらいだが、長過ぎるということも多々ある。

2013-01-04 21:30:23
Astal_jukebox @astral_jukebox

特に、自己を紹介したいと思わない人間にとっては。「さ、どうぞ?」覚悟を決めて口を開こうとする勇矢。「あ、立ってお願いしますね」止むを得ず起立すると真正面を見つめた。「……皆のほうを向いてね」左に100度回る。「浅空勇矢です」それだけ言うと、素早く旋廻着席。「……………」「………」

2013-01-04 21:35:19
Astal_jukebox @astral_jukebox

――シーン――。誰もがそんな擬音を連想した。確かに愛川由理の発現はキラーパスだった。それでも普通は言うことが無いにしても、まだ特技や趣味…或いは血液型などで水増しするものでは無いのか?同じく簡潔な自己紹介で済まそうと考えていた他の生徒すらも思い直す程の素っ気なさだった。

2013-01-04 21:40:11
Astal_jukebox @astral_jukebox

「えー浅空君は、先生の友達の親戚の子です」愛川が助け舟を出した。「なので先生は思い切り甘やかしますし、贔屓しますし、優遇しますけど、仲良くしてあげて下さいね」舟は座礁・沈没した。船長は脱出したが、要救助者に船が直撃し轟沈した。教室がガヤガヤとざわめく。

2013-01-04 21:50:57
Astal_jukebox @astral_jukebox

溺死寸前の勇矢は、両手で反対側の腕を掴んでかき抱いていた。「ちなみにその友達は2組の深水先生です」水中から足を引っ張られた。男子の半分強と一部女子から殺気が飛んでくる。「ゆ…浅空君は深水先生がセーラー服を着てた頃からの知り合いだそうです」足に重りを括り付けられた。

2013-01-04 21:52:07
Astal_jukebox @astral_jukebox

殺意の眼光で実際に痛みが発生し始めた。「浅空…」「アサゾラ…ユウヤ」「埋める…」「千切る…」「砕く…」「『ゆ』ナンデ?普段はてんてーに何て呼ばれて…?」直接的に『殺す』と言われないのが余計に恐ろしかった。「そういえば昔、優祈とお風呂に入ったことがあるんだって?」死刑判決!

2013-01-04 21:54:16
Astal_jukebox @astral_jukebox

「あ、そういえばこの間も3人で入ったわね」『!?』勇矢の背に何かがぶつけられてくる。「あと、可愛い妹さんや親戚の黒髪ロングで巨乳のお姉さんと同居だったわね」個人情報保護とは何だったのか。後ろの席の男子が椅子を蹴り上げてきた。「ご両親は忙しくて殆ど家にいないから大変よね」

2013-01-04 21:56:28
Astal_jukebox @astral_jukebox

『もうやめろ!とっくに僕のライフはゼロだ!』と余程叫んでやりたかった勇矢だが、この状況で下手に声を出すと、周囲の殺気が暴発する恐れがあり危険だった。だが既に2・3人に関節を決められかけている現状では既にそれも無意味と言えた。そしてその惨状のまま次の生徒の番になった。

2013-01-04 21:58:33
Astal_jukebox @astral_jukebox

―――ミストルティン編 第三話 葬室からの励と責~イット・カムズ・レイド~ #1 終わり #2 に続く

2013-01-04 22:00:50