バトルクエスト・クレンチ・ユア・フィスト #3

翻訳チームによるサイバーパンクニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) 日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

さらに、護衛として付き従うのもまたニンジャ……8フィートはあろうかという白いニンジャだ。主の傍、ただ後ろで手を組み直立しているだけで、凶悪なアトモスフィアが発散されている。アコライトは彼を観察した。恐るべきカラテの使い手である事は疑いが無い。あれがオーバーウェルムだ。 19

2013-01-08 11:34:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

オーバーウェルムは刑務所出所後のガンダルヴァにかなり早い段階で接触したニンジャだ。経緯は不明であるが、彼の強大なカラテとガンダルヴァの求心力が車輪の両輪めいてケミストリーを起こし、タフな闇社会における地位確立を極めて短期間で成し遂げさせたものとされる。 20

2013-01-08 11:40:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

カラテ・エキジビションにはあのオーバーウェルムも参加する。カラテ・エキジビションが持つ意味は複雑で多層的だ。オスモウじみた娯楽であり、闇カネモチ達の相互のパワーバランス確認の場であり、さらには、ガンダルヴァの確保している武力が決して虚勢では無い事を各位にわからせる場でもある。21

2013-01-08 11:48:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

場合によってはアコライトがあの怪物と戦う事になる可能性も十分ある。アコライトの目的はあくまでキナコの救出にあるが、イクサに手を抜く事はできない。アナスタシアの言葉にもあったが、殺しても構わぬ気構え、あるいは明確な殺意を持つニンジャ達が相手なのだ。 22

2013-01-08 12:08:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ドーモ、御歴々!」ガンダルヴァが両手を広げて拍手を制し、芝居がかったオジギをした。「神の園は皆様を歓迎致します。楽しき集いだ。美食に舌鼓を打ち、セントーで身を清め、性愛の悦びに過去の罪悪を溶かす。この世は苦役であり呪いですが、貴方がたはその重荷を洗い流す権利を持つ選民だ」 23

2013-01-08 12:20:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アコライトは引き続き、このマッポーじみた大ホールの人々の中からキナコの姿を探した。給仕オイラン……闇金カネモチの隣に座り、腰を抱かれ、あるいはもっと破廉恥な行いをしながらサケを注ぐオイラン……演奏者のオイラン……そこにあの村娘の姿は無い。 24

2013-01-08 12:26:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「御太師様ァ」枯れ木めいた老人が椅子から転がり落ちるように床に膝をつき、手を合わせてドゲザした。「辛いです、とても辛い。二ヶ月前に腎臓も摘出しました」ガンダルヴァはそちらへ片手をかざした。「快楽追求が足りませんな。体幹の燃える蛇を呼び覚まし、生と死の定かでない境地に至らねば」25

2013-01-08 13:03:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「申し訳ありません!申し訳ありません!精進致します」「私に謝っても仕方ありませんよ」ガンダルヴァは穏やかに言った。老人は泣き叫んだ。「寄進致します!」「楽しくなされ」閉口めいて彼が合図すると、屈強な者達がテーブルを囲み、その一同をまるごと退出させた。 26

2013-01-08 13:30:47
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「しょうのないジジイだ!」ジバヌチが呆れ顔でコメントした。「奴の後継ぎは愚鈍ゆえ、このまま教祖様にむしり取られて会社解体やも知れんなァ。老いればセンチメントが入り込むものよ。……ワシか?バカを言うな」ジバヌチは一人でアコライトに合点し、サケをあおる。 27

2013-01-08 13:40:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「サケは?スシは?オイランは足りていますか?存分に貪り、欲望を満たされよ。選民である貴方がたには権利と義務がある。享楽の義務が。欲望と合一し、私の見る光景の万分の一でも体験なさい。それが苦界にある卑しき者らの供養にもなる。その手段を私が授けます」「御救い!」「慈愛者様!」28

2013-01-08 13:46:52
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ドジャーン!銅鑼が再び鳴らされ、そでから黒いオイランドレス姿のコーカソイド美女が現れた。アナスタシアだ。アルカイックな笑みを浮かべた彼女に護衛戦士が二名続き、彼らの掴む鎖の先には十数名のオイラン。鎖は彼女らの金の首輪に繋がっている。闇カネモチ達は彼女らを露骨な目線で物色する。29

2013-01-08 13:56:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アコライトは新たに現れたオイラン達を凝視した。「やれやれ、先程充分愉しんだというに、まだまだ興奮覚めやらぬ様子だな。ボンズ殿」ジバヌチが殆ど義務的にからかいの言葉を投げた。アコライトの表情が曇る。ここにもキナコの姿は無い。どこに隠されている……? 30

2013-01-08 14:01:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「今回皆様にお分けできる素晴らしき宝石果実達だ。オークション開催日程をよくご確認なされよ」オイラン達が一斉にオジギし、鎖に引かれるままに退出した。アナスタシアがアコライトを一瞥した。「そして今ひとつ、明日の神前闘技会に先んじ、楽しき催しをここにて」ガンダルヴァが手を叩いた。 31

2013-01-08 14:11:30
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「グワーッ!」別のベールの向こうから追い立てられ、壇上に投げ出されたのは、傷だらけの若い男である。身につけているのはこの宮殿の下男の衣類だ。ガンダルヴァは嫌悪の眼差しで男を見下ろし、そののち、一同に向き直った。「これは神の園に卑しくも潜入行為を行った度し難き者です」 32

2013-01-08 14:18:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ペテン師!悪魔!」男は護衛戦士に背中を押さえつけられながら罵声を放つ。ガンダルヴァは目を細めた。そして言った。「これは快楽探求に入門した美姫に卑しく執着し、以てテロまで企むに至った……哀れな俗人です」「黙れ!姉さんを返せ!」闇カネモチ達の間から失笑が漏れた。 33

2013-01-08 14:22:32
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ガンダルヴァはうつ伏せに押さえつけられた下男のもとへゆっくり歩き、爪先で顎を押し上げた。「お前の姉はそこのブドウ=サンだね?」ガンダルヴァは客席、弁護士風の闇カネモチに接吻をせがむオイランを指し示す。男は絶望的な叫び声を上げた。「姉さん!助けに来たぞ!」再び失笑が場を満たす。34

2013-01-08 14:26:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「姉さん!」「おい、あれは何だ、君ィ」弁護士風の男がオイランに注意を促した。オイランは虐げられる男に迷惑そうな視線を投げ、再び弁護士風の男の首に白く細い腕をまわした。弁護士風の男は笑い出した。「オットット!がっつく女だな!」「姉さん!」 35

2013-01-08 14:29:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「どうした、ん?ブドウ=サンは帰りたくないようだが」ガンダルヴァが言った。男は涙を流した。「邪教!薬物前後だ!」ガンダルヴァは男の顎を軽く蹴り上げ、オーバーウェルムのもとへ歩いてゆく。そして言った。「皆様、この哀れな男に試練の場を設けましょう。楽しき催しを」拍手が起こった。 36

2013-01-08 14:33:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「男を放て」ガンダルヴァが護衛戦士に命じた。護衛戦士は男を解放し、後ろへ下がった。「ハーッ……ハーッ」憎悪と殺意に満ちた男の目を、ガンダルヴァは半笑いの目で受け止める。そして言った。「オーバーウェルム=サンとイクサしなさい。十分な信念を示せば、望み通り彼女を還俗させよう」37

2013-01-08 14:36:52
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……」反射的に立ち上がりかけたアコライトを、ジバヌチが目で制す。「偽善は許さん。貴様はワシの闘犬だ。くだらぬセンチメントで迷惑をかけるな」「……!」「フン!この場のオイランどもは皆あれと似た境遇よ!一個のシステムだ、これは。貴様もここにおる以上同じ事!歯車として振る舞え!」38

2013-01-08 14:43:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ドーモ、オーバーウェルムです」白いニンジャが下男にオジギした。そしてカラテを構えた「名乗れ。好きに打って来い」下男は震えながらアイサツを返す。「ドーモ、オミト・ヨシミです。姉、姉さんを返してもらうぞ」「試してみろ」オーバーウェルムは首を鳴らした。「早く」「イ、イヤーッ!」39

2013-01-08 14:48:39
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」「グワーッ!」ナムサン!強烈なローキックがオミトの右脚を一撃で破壊!オミトがたまらず膝をついたところへ、オーバーウェルムが容赦なきミドルキックを叩き込む!「イヤーッ!」「グワーッ!」左腕を破壊!のたうち回るオミト!闇カネモチの拍手!「ア、アバーッ!」 40

2013-01-08 14:53:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

オーバーウェルムはのしのしとオミトに近づき、髪を掴んで引きずり上げた。「まだ右手と左脚があるぞ。ほれ。こうして支えてやるから、打って来い。信念を見せろ」オミトを吊り上げたままオーバーウェルムが命じた。「姉を助けたいのだろうが」「アバーッ!」闇カネモチの拍手、そして失笑!41

2013-01-08 14:55:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ほれ、どうした」「アバッ」震える手が時間をかけて持ち上がり、オーバーウェルムに撫でるように触れた。そしてだらりと垂れた。オーバーウェルムはオミトを足元に捨て、客に向かってオジギした。拍手が起こった。ガンダルヴァが意見を仰ぐ。「神前に捧げる尊き命。いかにカイシャクすべきか」42

2013-01-08 15:00:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「カカト落としだ!」「カワラ割りだ」「エビ反りにしては!」「サメの餌だ!」闇カネモチ達が口々に叫ぶ。「……まとまりませんな」ガンダルヴァが目を細めた。「オーバーウェルム=サンに任せましょう」「ハッ」オーバーウェルムは首を鳴らし、回転跳躍した。「イヤーッ!」ストンピングだ! 43

2013-01-08 15:02:53