小ネタいろいろ
けど、教えるときは噂にたがわぬ本気だ。「あのさぁ、いちいち口で説明して欲しけりゃそっちの黒いのに訊いとくれ。あたしは直接身体に叩き込む方が性に合ってるからな……ほれ、覚悟のできた奴からかかっといで」
2012-12-10 02:40:39男達の願い
「実のところ世界でも臨床例は殆どありませんね。国内ではうちぐらいでしか扱えない」「臓器一つを丸ごと再生するとなると……ひょっとすると成功すれば世界初であるとか、そのレベルの技術です」「正直に申し上げれば——ご息女は体のいい実験台に他ならない」それでも、と男は頭を下げた。
2012-12-22 05:08:05してやれることなど殆ど無い、何も与えてやれない。そも、父と名乗りを上げることさえ最早出来ぬ。それでも、生きて欲しいと願ったのだ。その為に出来ることなら何でもする、と。だからこそ、抛った全てと引き替えに手にしたこの権能(ちから)で、その命の焔を消させてなるものか、と。
2012-12-22 05:15:11まあ「見滝原高高度先鋭医療技術特区」の創設が可能にした「恐らくはiPS細胞の利用を基幹とする、組織培養の一つの到達点としての再生臓器の自家移植」であろうと推測している訳で。また極秘であるのを幸いと更に極北とも云える「自己組織由来再生心臓移植」であったのだろうと思っているのだが。
2012-12-22 05:24:44まあそんな回りくどい重箱の隅を事細かに掘り返して悦に入ってるようなのはオレくらいなもんだと思うが、しかし。病院がああも立派なのを外伝も絡めて説明付けようとするとそうなっちゃうんだよな、コレが。
2012-12-22 05:27:42それを責められぬ時代では最早ない。が、その命に罪の、あろう筈もない。重い心臓の病だと云う。名乗れはせずとも父として、せめてその命だけは繋ぎ止めたいと。方々に手を尽くし、辿り着いた答えがその街だった。見滝原——そこが彼女の郷里であったのは偶然なのか、それとも。「手は、あるそうだ」
2012-12-23 05:45:26そう云えば長老たちの再三の要請にも首を縦に振らぬ男が居たか——あそこには。五郷、風見野、そして見滝原。見滝原高々度先鋭医療技術特区——中央に出られる地力を持ちながら郷土に拘り続けるあの男の、それは悲願の結晶だった。「美国——久臣。その拘泥、試させて貰うぞ」
2012-12-23 05:55:43母娘がひっそりと街を後にしたのは、それからほんの数日のことだった。男には、見送りにゆく自由すら赦されぬ。ただ、その県議会の大物と席を交える機会を捻出するのがやっとだった。
2012-12-23 06:05:15少年と時計
その模様には、見覚えがあった。いや、それどころではない。無数の、数え切れない”かつてのわたし”の左腕に、それは常にあったものの筈だ。一つの年が暮れようと云う頃、街全体が浮き足立ったような気配を纏うそんな時期に。少年が彼女に恐る恐る差し出した箱の中に、”それ”が入っていた。
2012-12-22 02:45:39髪留めに似た色味のリボンをほどき、包みを開けば小さな箱がひとつ。僅かにズレた蓋の隙間から小さなカードが一枚、顔を覗かせている。問い直そうにも、掌に押しつけた張本人は慌ててどこかへ行ってしまったし。もう、こんなもの。「何処で……見つけてくるのよ」知っている筈など、ないだろうに。
2012-12-22 03:04:30「その手袋は、なに色?」
WS的には「あの日、夕方までに」となり、それは自分で云っておきながら凄まじく切ないのだった http://t.co/HOMhyPNt
2012-12-10 14:26:51