2013年1月20日

アルジェリアにおける「テロ」事件から見る政府による「テロ」のレッテル貼りに関する中田考先生の考察

アルジェリアで発生した「テロ」事件に関連し、政府がなぜ反政府集団を「テロリスト」と呼称するのか、また、なぜ「テロリスト」とは交渉しないのかについて、中田先生の一連のツイートをまとめました。 私見を述べさせていただければ、政府の不正性は必ずしも前提とする必要はないと考えますが(特に第3類型の場合)、政府と「テロリスト」の間の闘争の核心が正統性の争奪にあるという点には強く同意します。
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中田考 @HASSANKONAKATA

今回のアルジェリア事件であれ、他のイスラーム主義絡みの事件であれ、イスラームとは無関係な事件であれ、どのような事件であれ、「テロ」、「テロリスト」という言葉を使って現象を説明して事足れり、としているメディア、知識人、学者はcategoricallyに信用に値しない。

2013-01-20 05:40:28
中田考 @HASSANKONAKATA

非武装の「市民」を誘拐した場合、それが純粋に身代金目当の営利誘拐であったり、性的嗜虐が目的であったりする場合は「テロ」とは呼ばれず、「犯人」と交渉することは禁じられないばかりか当然とされる。要求をのむから否かは二の次であり、一義的には人質の解放が目的であり、先ずは説得がなされる。

2013-01-20 05:47:15
中田考 @HASSANKONAKATA

人質の巻き添えを避けることは言うまでもなく、「犯人」ですら身柄の拘束(裁判→有罪になる→刑の執行)を目指し、緊急かつ不可避な人質の生命の危険があり他に代替手段が皆無の場合にのみ、「緊急避難」として犯人を殺害によって排除するのが「法治国家」である。

2013-01-20 05:54:43
中田考 @HASSANKONAKATA

ところが「テロ」「テロリスト」の語が用いられる時、「テロリストとは一切対話しない」との言葉が「テロリストの要求に屈しない」と意図的に混同して使用され、絶対的な判断停止が要求され、有無を言わさぬ既存の「政治権力」への盲従が強制される。何故か?

2013-01-20 06:01:41
中田考 @HASSANKONAKATA

(承前) それは、「テロ」の誘拐が、営利や嗜虐を目的とするのではなく、政治的要求の実現のための手段であり、その「政治的要求」が表沙汰になることが既存政治権力にとって脅威となるからである。

2013-01-20 06:09:44
中田考 @HASSANKONAKATA

営利や嗜虐のための誘拐とは異なり、誘拐事件が「テロ」と呼ばれ、対話が厳禁されるのは、既存の政治権力が不正であり、その不正を強権によって暴力的な弾圧によって隠蔽しており、自己と他人の生命を賭けた抗議、即ち「テロ」によって、政権による不正とその隠蔽の事実が暴露されるのを恐れるため。

2013-01-20 06:28:34
中田考 @HASSANKONAKATA

「テロ」「テロリスト」「テロリストとは対話しない」と言った言葉がヒストリックに飛び交うのは、既存の政治権力が、自らが「民衆」の支持を得ない「不正」な権力であり、強権による弾圧で不満を押さえ込んでいるだけである事実を自覚しているからであり(続く)、

2013-01-20 06:37:55
中田考 @HASSANKONAKATA

(承前) また「テロリスト」の命懸けの抗議が、政治権力の強権による弾圧に怯え諦め沈黙し迎合ていた「民衆」が「目覚める」ことを恐れている印、既存の政治権力の弱さ、支配の正統性/正当性の欠如の印に他ならないのである。

2013-01-20 06:42:06
中田考 @HASSANKONAKATA

まさに、「アラブの春」で起こったように。

2013-01-20 06:46:16
中田考 @HASSANKONAKATA

近代国家の警察、軍、治安機関は、「民選の」政府の政治的決断の執行の道具と位置づけられており組織としてであれ個人としてであれ自らの判断を禁じられている。それ故既存の政治権力が「テロリストとは対話しないと叫ぶのも、治安機関が誘拐犯を「テロリスト」として襲撃するのも「理解」はできる。

2013-01-20 07:02:23
中田考 @HASSANKONAKATA

しかし、メディアや知識人や学者は、「テロ」、「テロリスト」といった用語での「説明」によって事件を「片づけ」、「不正な政権」による事件の背景と本質の隠蔽に加担してはならない。

2013-01-20 07:09:37
中田考 @HASSANKONAKATA

「テロ」「テロリスト」の語の用法は、偽物のメディア、知識人、学者を炙り出すリトマス試験紙だ。

2013-01-20 07:15:53
中田考 @HASSANKONAKATA

「テロ」と呼ばれるものは、営利や嗜虐が目的ではなく、政治的要求の実現のための手段である、と書いたが、ここで直接に話題にしているアルジェリア事件の文脈に照らせば、その政治的要求の性格によって、現象的に(分析的にではなく)「テロ」を三つのタイプに分類することが有益と思われる。

2013-01-20 07:16:24
中田考 @HASSANKONAKATA

第一は、「テロリスト」と政権(も建前上は)と民衆が、類似した価値基準を共有している場合、第二は、「テロリスト」と民衆は類似した価値基準を共有し政権がそれに反する価値基準を掲げている場合、第三は、「テロリスト」が政権と民衆価値基準と大きく乖離した価値基準を有する、所謂カルトの場合。

2013-01-20 07:24:38
中田考 @HASSANKONAKATA

勿論、「民衆」が一枚岩の価値基準を有している、ということは現実にはなく、民衆の価値観は多様であり(特に多民族多言語多宗教国家では)、また「テロリスト」と民衆と政権それぞれ全く別の価値基準を持っている、というよう場合もありうる。

2013-01-20 07:30:48
中田考 @HASSANKONAKATA

しかし一応国民の絶対多数がムスリムであるアルジェリアのようなムスリム社会で起きた事件の大雑把な見通しを得るにはこの三類型考えるぐらいが丁度よい。

2013-01-20 07:33:12
中田考 @HASSANKONAKATA

第一の「テロリスト」と政権と民衆が全て類似した価値基準を有する場合は、「テロ」は「理想」としては政権も掲げているその価値観を「現実」には政権が実行していないことに対する抗議となる。

2013-01-20 07:45:50
中田考 @HASSANKONAKATA

この場合は価値観を共有するため対話の余地があるとも言えるが、一方で、自由な発言と公正な討論が許され「事実関係」が明らかかにされれば、簡単に政権の「非」、「不正」が「立証」されるため却って政権は対話に応じられない、とも言える。

2013-01-20 07:49:17
中田考 @HASSANKONAKATA

アルジェリアのように仏植民地支配でイスラーム学の伝統が徹底的に破壊された国であってさえムスリム諸国では政権も一応はムスリムを自称しており、内容空疎ではあっても「イスラーム的正義」といった抽象的なスローガンのレヴェルでは、「テロリスト」、政権、民衆が同一価を共有しているとも言える。

2013-01-20 07:56:20
中田考 @HASSANKONAKATA

この場合、政権は民衆の支持を繋ぎ止めるために、抽象的な共有する価値(イスラーム)の具体的な内実についての言説を政権に都合良く解釈し流布し、現実の適用の不正を隠蔽するために、言論を統制しようとするため、愚民政策として「テロリスト」との対話を断固拒否することになる。

2013-01-20 08:04:40
中田考 @HASSANKONAKATA

今回のアルジェリアの事件は、部分的にはこの第一類型のパターンが該当。しかしアルジェリアでは、1991年に西欧型民主制の枠組み内で部分的なイスラーム法の施行を目指すイスラーム救済戦線FISの選挙での大勝から、「テロリスト」と民衆のイスラーム主義、政権の世俗主義の第二類型的要素も。

2013-01-20 08:15:45
中田考 @HASSANKONAKATA

しかし、今回のアルジェリアの事件は、「テロリスト」が厳格なイスラーム国家(≒カリフ制)樹立を政治的要求として掲げるカルト(所謂アルカイダ系)のに対して、民衆と政権はそれから距離をおいた所謂「穏健イスラーム」的価値観を共有しているとも言え、それが研究者の通説で、それにも一理ある。

2013-01-20 08:24:05
中田考 @HASSANKONAKATA

但し、注意を要するのは、所謂アルカイダ系カルトと呼ばれるグループに対して、「民衆」が距離をおき、強い反感を抱いているとすれば、それはイスラーム国家、カリフ制、ムスリムの地を軍事侵攻、占領する異教徒に対すりジハード主義を掲げるグループに対してではないことである。

2013-01-20 08:34:15
中田考 @HASSANKONAKATA

民衆が拒否しているのは、イスラーム主義に反する「民主主義」を黙認し政府の公務員として働く小役人や官製の選挙に参加する一般の民衆をイスラームの敵の背教者として処刑する「破門主義者(takfeerist)」なのである。

2013-01-20 08:39:29
中田考 @HASSANKONAKATA

それ故、典型的な真の意味の第三の類型では、「テロリスト」と対話し彼らの主張が正確に詳しく公表されればされるほど、むしろ民衆の「テロリスト」への嫌悪感を強め、政府の「対テロ政策」への支持を獲得できるため、「テロリストとの対話」は脅威ではなく、必ずしも全否定されるわけではない。

2013-01-20 08:51:25

コメント

seere626 @seere626 2013年1月20日
ほんのひとにぎりのテロリストが民衆て
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Takuya Murakami @takuyamurakami2 2013年1月21日
中田先生から論文の紹介があったので、追加しておきました。
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長峯明子 @xshochanx 2013年1月21日
まったく同意しかねる内容ですね。
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