「シー・アスクス・ワット・ザ・ブレイジン」#2 ――『ニンジャスレイヤー』二次創作小説

サイバーパンクニンジャ活劇『ニンジャスレイヤー』(@NJSLYR )の二次創作小説、連載第二回(全三回)です。 ・第一回(http://togetter.com/li/441457 ) ・第二回(このまとめ ) ・第三回(http://togetter.com/li/444885 )
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うさぎ小天狗(実写版) @USAGI_koTENGU

((どうしよう……逃げちゃおうか……そうだ、逃げちゃおう。僕は逃げるのは得意だし、どうせ僕がいなくても、僕みたいな役立たずを探しになんて誰も……))バグラーラビットがそう考えた時……彼のニンジャ聴力が、ドージョーに接近する足音を聞きつける! 11

2013-01-21 20:41:46
うさぎ小天狗(実写版) @USAGI_koTENGU

彼は反射的に起き上がった。ブザマなカラテの型を構え、あたかも今まで特訓を続けていたかのようなふりをする。その間にも足音は近づき……スパーン!不躾なほどの力強さでフスマを開き、接近者が姿を表した! 12

2013-01-21 20:44:18
うさぎ小天狗(実写版) @USAGI_koTENGU

「ヘル-0010イグ00100010010101001010111110010101 (13)

2013-01-21 20:47:22
うさぎ小天狗(実写版) @USAGI_koTENGU

0100ぎは101011マガワ車庫……タマガワ車庫……」車内アンナウンスーにバグラーラビットの意識は覚醒、まず隣を見た。……そして彼は安堵する。女はそこにいた。少年のように痩せた体を耐毒加工バッファロー皮ジャンパーに包んだ、炎のように赤い髪をした女。 15

2013-01-21 20:52:35
うさぎ小天狗(実写版) @USAGI_koTENGU

しかし、今の彼女には、バグラーラビットが知る、業火のような力強さはない。熾火のように静かな寝息は、サイコ毒による昏睡状態を表している。車両のドアが開き、吹き込んだ冷たい夜の風が女の髪を揺らす。バグラーラビットはメンポの奥でくすりと笑い、女をそっと抱き上げた。 16

2013-01-21 20:55:17
うさぎ小天狗(実写版) @USAGI_koTENGU

バグラーラビットは女を抱いたまま、乗客たちの死体を踏み越えドアへ向かう。女を抱えて乗り込んだ時、騒ぎ立てられそうだったので蹴り殺したのだ。遅い時間とはいえ、十人はいた乗客を声も上げさせずに殺した己のカラテの不可思議な上達を、彼は自覚していなかった。 17

2013-01-21 20:58:34
うさぎ小天狗(実写版) @USAGI_koTENGU

ひと気のないホームで彼は立ち止まった。車両内の殺戮を知らぬ運転手によって電車はホームを出た。それをぼんやりと見送るバグラーラビットには、建設的な考えなどはない。それでも、彼は走りだした。タマガワ車庫駅ホームを飛び出し、ススキノ湿地帯へと向かう。 18

2013-01-21 21:01:43
うさぎ小天狗(実写版) @USAGI_koTENGU

「次はタマガワ車庫……タマガワ車庫……」車内アナンナウンスーを車両の壁越しに聞いたソウスケイルは身を弛め跳躍、暗いタマガワ地区に降り立った。同伴者が彼の側に並ぶ。それを確認もせず、彼は線路を走りだした。同伴者が続く。 20

2013-01-21 21:07:33
うさぎ小天狗(実写版) @USAGI_koTENGU

ネオサイタマ湾に続く運河の中ほどにあるタマガワ車庫近くは、光満ちる近未来都市ネオサイタマと、最下層貧民窟ノビドメ・シェード・ディストリクトの中間にある暗黒地帯である。バイオ野犬やバイオスズメ、胡乱なショットガン浮浪者がうろつく原野は、ひっそりと静まり返っていた。 21

2013-01-21 21:10:24
うさぎ小天狗(実写版) @USAGI_koTENGU

「雨は止んだようだな」同伴者が呟いた。ソウスケイルは同伴者を振り返る。編み上げブーツに腰布、鍛えあげられた漆黒の上半身の左肩に黄金のシールド、額にサークレット。右手に短い三叉槍を持ち、左手は太い鎖に覆われている。恐るべき古代ローマカラテの使い手、レーティアーリウス。 22

2013-01-21 21:13:13
うさぎ小天狗(実写版) @USAGI_koTENGU

実際、この増援はソウスケイルにとって屈辱であった。ノーカラテの防御ニンジャの反逆によって、ニンジャスレイヤーをおびき出す人質を奪われたばかりか、計画せぬ増援を呼ぶことでその失態を一人では挽回できぬと宣言してしまった。ケジメは免れず、場合によっては死もありうる。 23

2013-01-21 21:16:27
うさぎ小天狗(実写版) @USAGI_koTENGU

((だが……))彼は己の胸を打った、バグラーラビットのダブル・ケリ・キックに脅威を感じた。((あのサンシタのカラテには何かがある……))実際、それは己の油断を認めたくないソウスケイルのプライドの囁きであったが、彼はそれを己のニンジャ第六感の囁きと誤審した。 24

2013-01-21 21:20:05
うさぎ小天狗(実写版) @USAGI_koTENGU

静まり返った原野を駆け、追跡二者はタマガワ車庫駅に差し掛かった。ホームにニンジャ観察力を凝らし、微弱なソウル痕跡を発見したソウスケイルは、先ほどの豪雨の中の失態と、生きた盾としか考えていなかったサンシタから受けた屈辱に胸を焦がした。((必ず見つけ出してやる!)) 25

2013-01-21 21:23:38
うさぎ小天狗(実写版) @USAGI_koTENGU

「あちらか」レーティアーリウスが呟く。同伴者の非凡なニンジャソウル感知力に舌を巻きながら、ソウスケイルは疾走速度を上げる。怒りに燃える追撃者と、静かなる脅威は、二筋の疾風となってススキノ湿地帯に轍を刻む。それを、雲の切れ間から姿を表した月が、不気味に照らしていた。 26

2013-01-21 21:27:35
うさぎ小天狗(実写版) @USAGI_koTENGU

……少女は微かな揺れに目を覚ました。ぼんやりした視界に、自分を抱える誰かの下あごが映る。彼女はくすりと笑った。自分を抱えるものの顔に、メンポが装着されていたからだ。((なあに……ニンジャごっこ?))少女はそれを、親しい存在が自分を楽しませるためのいたずらと考えた。 28

2013-01-21 22:02:09
うさぎ小天狗(実写版) @USAGI_koTENGU

「ねえ」「アイエッ?」少女の声に相手は甲高い悲鳴を上げた。「なんでそんなかっこうしてるの?」「えっ……」相手は黙りこんだ。「ニンジャなの?」「えっと……」相手は少し考えてから、「そうだよ」と応えた。「ウソー!」少女はまたくすりと笑った。「ニンジャなんていないんだよー」 29

2013-01-21 22:07:00
うさぎ小天狗(実写版) @USAGI_koTENGU

「ここはどこ?」少女はあたりを見回した。見渡す限りの薄茶色の海。「わからない」と相手は応えた。「……僕、こんなところ来た事ないし」「ぼくなんて、ヘン」少女はくすくす笑った。「ねえ、おんぶして」「アイエッ?」「おんぶ。だって、いつもおんぶしてくれたじゃない、おばあちゃん」 30

2013-01-21 22:11:09
うさぎ小天狗(実写版) @USAGI_koTENGU

「僕はおばあちゃんじゃないよ」「うそ、おばあちゃんだよ。ねえ、おんぶ」「しょうがないなあ」相手は立ち止まり、少女を腕から下ろす。少女は靴の裏に湿った地面を感じ、よろめいた。体に力が入らない。いつものように独りで遊び、疲れ果てた時と同じだった。だから、そういうことだと考えた。 31

2013-01-21 22:14:14
うさぎ小天狗(実写版) @USAGI_koTENGU

「アブナイだよ」相手が肩を掴んだ。その優しさに、少女は破顔した。「やっぱり、おばあちゃんだ」ぼんやりとした視界に映る小柄な姿は、彼女の記憶にあるとおりだった。「おんぶ!」「ハイハイ」相手が言い、背中を向けたので、少女はそこに倒れこむようにして体を預けた。 32

2013-01-21 22:17:13
うさぎ小天狗(実写版) @USAGI_koTENGU

「いくよ」「うん」相手が立ち上がり、駆け出した。「うわー!」少女は歓声を上げた。早い!記憶にあるよりも早く、景色が流れ行く。向かい風は湿っていて、しかし、見上げた空には巨大な月。「キレイだね」そう言って、彼女は相手の背中に頭を預けた。ふんわりした感触、かすかに鉄錆びた匂い。 33

2013-01-21 22:20:09
うさぎ小天狗(実写版) @USAGI_koTENGU

「イテテ……」相手が呻いた。「どうしたの?」「おかしいな、傷がふさがらないんだ」「きず?けがしたの?」「うん……でも、ダイッジョブだよ。きっとそのうち治っちゃうから。知ってるでしょ?」少女には相手の言っていることがよく解らなかったが、「うん」と応えた。 34

2013-01-21 22:23:29
うさぎ小天狗(実写版) @USAGI_koTENGU

そうして目を閉じた。目を閉じると、快い揺れが眠りを誘った。少女がうとうとしていると、誰かの声がニューロンに響いた。眠れ、とその男は言った。助けを呼ぶから今は眠れ、と。((この人誰だろう))と思いながら少女は目を瞬き……そして、ぼんやりした視界に、閃くものを見た。 35

2013-01-21 22:27:14