「シー・アスクス・ワット・ザ・ブレイジン」#2　――『ニンジャスレイヤー』二次創作小説

うさぎ小天狗(実写版) @USAGI_koTENGU

「ねえ……」「エッ！？なに？」「あれ……」少女は力の抜けた手を差し伸べ、茶色い海に閃く無数の光を指さした。「あれ……キレイな……キラキラして……」「……」相手は応えない。「おばあちゃん……おしえて……あれは……なに？」 36

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バグラーラビットは女の言葉にうろたえた。駆ける足を止めぬまま、周囲に目を凝らす。見えるのは暗闇に生い茂るバイオススキの海。女を背負った背中がズキズキと痛む。((まさか……毒で再生が遅れているのかな？))ふと、不安になった。ソウスケイルの毒スリケン。 38

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黒黒とした不安は彼のニューロン内で追手の姿となり、飛来するスリケンとなった。バグラーラビットはニンジャ感知力を凝らしたが、なにもわからない。足を早めた。顔に当たる風の冷たさと、背中の痛みを包む暖かさに挟まれ、彼は歪な矢めいてバイオススキの海を駆けた。 39

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バイオススキをかき分け進む、バグラーラビットの足が、胸が、草むらに宿る雨粒に濡れる。((これのことかな？))ふと、彼は背負った女の言葉の意味に気がついた。((なんだ、スリケンじゃないんだ))ほっと胸を撫でおろした時……急速に視界が開けた。 40

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バイオススキが途切れたそこには、不恰好なバラックが建っていた。ドラム缶が赤々と燃える炎を吐き出し、生焼け肉のにおい。側に立つ人影が振り返った。「ン？なんだア？」その手にショットガンを見たバグラーラビットは、反射的に飛び上がり、ケリ・キックを見舞った。人影の首がちぎれ飛んだ。 42

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「ん？」背中の女が呻いた。「おうち？」むにゃむにゃと呟くのへ、「……そうだよ」バグラーラビットは嘘をついた。そして、改めてあたりを見回す。……そこは、このススキノ湿地帯に住み着いてショットガン浮浪者のバラック住居であった。 43

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バグラーラビットは、殺害したショットガン浮浪者の首なし死体を飛び越え、バラック住居のスダレ・シェードをくぐった。中は暗く湿って、すえた匂いがする。「アタシ、ねむい」女がつぶやき、もぞもぞと動いた。背中の傷が痛み、バグラーラビットは湿ったフートンに女を下ろした。 44

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「オヤスミナサイ……」女は呟き、フートンに横たわる。その寝顔をバグラーラビットはじっと見つめていた。手を差し伸べ、冷たい頬に触れた。その目が首のマフラーに、深く上下する薄い胸を眺め……そこでハッと顔を上げた。 45

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彼のニンジャ聴力は、微かな、風の音を聞きつける。しかし風など吹いていたか？彼は女の顔を見下ろし、「……」なにごとか呟くと、踵を返しバラックを出た。炎を上げるドラム缶の側で事切れている浮浪者の手からショットガンをもぎ取る。風は……彼の正面から聞こえてきた。 46

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近づくニンジャソウルの感触に、ソウスケイルは邪悪なメンポの下でニヤリと笑う。遂に追いついたか。レーティアーリウスを見れば、彼は三叉槍を体の後ろに構え、左手を一振りした。途端に左腕の鎖が解け、鋼鉄の投網が現れた。これぞ恐るべき古代ローマカラテの奥義、トアミ・ヤリ・ジツ！ 48

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((俺のスリケンがバグラーラビットを浮かせ、奴のトアミ・ジツが捕獲、そこを俺がトドメだ))ソウスケイルは作戦を再確認し、レーティアーリウスに目配せ。頷いた黒人ニンジャに先行させつつ、両腕をクロスし、スリケン投擲体制に入る。 49

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目前に迫るバイオススキの海に黒々とした切れ目を見つけた瞬間、「イヤーッ！」ソウスケイルはカラテシャウトとともに跳躍、ジャンプの頂点でクロス両腕を振るう！放射状に放たれるスリケンは、見下ろすバイオススキ野原にぽっかりと開いた場所に建つ、粗末なバラックに雨めいて降り注ぐ！ 50

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「イヤーッ！」響くカラテシャウトに、ソウスケイルは敵がそのニンジャ敏捷力でスリケンを回避したことを知る！同時にレーティアーリウスがイクサ場へのエントリー投網展開！「イヤーッ！」浮き上がった影に投網が巻き付き、地面に引きずり下ろす！「クシ・ザシ！」突き込まれる三叉槍！ 51

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しかし！「ムッ？」違和感ある手応えにレーティアーリウスが唸ったその時！BLAM！ショットガンの発砲音に遅れて……KA-BOOOM！レーティアーリウスの投網が絡めたドラム缶が閃光爆発！「グワーッ！」咄嗟に防御姿勢をとったレーティアーリウスはバイオススキ草むらに吹き飛ばされる！ 52

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これはバグラーラビットのフーリンカザン！己のカラテの不利を悟った彼は、ドラム缶を囮として武器として用いたのだ！もっとも、レーティアーリウスの増援を予測していなかったバグラーラビットは、ソウスケイルの空対地スリケン放射のダメージを受けていた！ 53

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バラックの前に立ち上がるバグラーラビットの影は、片足を引きずっていた。着地したソウスケイルは邪悪なメンポの下でニヤリと笑う。「ドーモ、バグラーラビット＝サン。ソウスケイルです」アイサツによって、殺害意図を通告！「オヌシを殺す。甦る間もなく殺し尽くす」 54

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「ドーモ、ソウスケイル＝サン。バグラーラビットです」バグラーラビットも武器を横に倒してアイサツ。「知ってるでしょ……僕のジツ。死なないんだよ」「知っている」とソウスケイル。「その俺が、なんの対策もせぬも思うてか。貴様のジツを封じる毒も用意してあるのだ」 55

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「ファック……」バグラーラビットがショットガンを構えるが「イヤーッ！」ソウスケイルのスリケンが飛来！「グワーッ！」バグラーラビットの両目に突き刺さる！「イヤーッ！」スリケンが飛来！「グワーッ！」両膝に突き刺さる！「イヤーッ！」スリケン！「グワーッ！」両肩！ 56

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「ヌウーッ！？」ソウスケイルは訝しげに声を上げる。「なぜだ、なぜ避けぬ」「知ってるでしょ……僕のジツ」バグラーラビットは荒い息を吐きながら言う。「僕は死ねないんだ……だから、ソウスケイル＝サンのスリケンなんかに負けないよ」片目が再生、決断的に閃くのをソウスケイルは見た！ 57

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「ザッケンナコラーッ！」ソウスケイルは口汚く罵り、回転ジャンプとともに両腕のスリケン投擲！「グワーッ！」バグラーラビットの体にドスドスと音を立てて突き刺さるスリケン！「オゴメカシャッコラー！」回転しながら両足のスリケン投擲！「グワーッ！」バグラーラビットの体に突き刺さる！ 58

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「では望みどおり殺してやろう！」着地したソウスケイルは呼吸を整え集中……おお！見よ！その全身に次々と現れるスリケンを！その数二倍……いや、三倍！そしてその危険突起の数も……三倍！三倍に三倍をかけて恐ろしいほどの攻撃力！デッドリースリケン！「イヤーッ！」ソウスケイルは跳躍！ 59

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「ヒサツ・ワザ！」回転ジャンプとともに全弾投擲！「イヤーッ！」ドスドスドスドス！ソウスケイルのデッドリースリケン投擲はバグラーラビットに刺さ……らない！横合いから飛び込んできた物体が、投擲されたスリケンをあるものは受け止め、あるものは弾き、ヒサツ・ワザを完全無効化！ 60

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「誰だッ！」ソウスケイルは着地し、飛来物体の軌道から投擲者の位置を瞬時に把握、そちらへ誰何の声を投げる。もちろん、ソウスケイルの非凡なニンジャ観察力には、飛来物体がレーティアーリウスの首であることがわかっている……つまり相手は……ニンジャ！ 61