2010/08/24 ツイッター小説 お気に入りセレクト
#twnovel 渋谷の底が水没した原因について、あらゆる調査が行われたにもかかわらず、どの地質学者も横に首を振るばかりだった。小舟に乗った女王は先頭のロイに言った。「この湖の中心が何だか知っている?中心は、わたくしなの。30年前のある日、素足の下から水が湧き出て来たのよ。」
2010-08-24 02:03:25夏の深海。今夜はエルニーニョくんと、ラニャーニャちゃんがプロレスの試合をするそうです。二人ともマスクをかぶってメキシコ式。熱い試合に深海が燃えました。海底油田も燃えました。メタンハイドレートも燃えました。地球が割れました。恐ろしいね、メキシコ式プロレス! #twnovel
2010-08-24 02:08:19美女の膝の上にはいつも猫がいた。猫はその場所を気に入っていたので、女が誰かのものになる日が来ても、膝から降りようとはしなかった。女も、嫁ぐのが嫌だったから、猫を乗せたまま死を選んでしまう。やがて、温もりのなくなった膝から降りた猫は、死を後にして自由へ飛び出した。 #twnovel
2010-08-24 02:30:44「ガリガリくん」が品薄のため、棒だけ販売されることになった。これ以上はもう限界の激痩せぶりということで、商品名は「真・ガリガリくん」に。食べられる部分が一切ないので当然カロリーはゼロ。どうしても食べたければ、鉛筆削りでガリガリ削れば何とか食べられないこともない。 #twnovel
2010-08-24 04:05:04「ついのべタグをつければフィクションだって言えるからいいよね」 そうつぶやく彼の最近のついのべは、自殺による解放と苦しみが交互につづられていた。つい、彼宛にDMをした。ちょっと話してみたくなったんだ。電話番号、訊いてもいいかな?「ありがとう。でも、もう無いんだ」 #twnovel
2010-08-24 07:07:30「リンダ、あんたを殺してやる」ナンシーはルームメイトにナイフを向けた。「ナンシーはいつもそう。そうやって、すぐ怖気付くんだわ。弱虫!あんたなんか圧力鍋でカニをまるごとたいたらいい!」二人の口論は大抵、悪口を言い慣れないリンダの一言で終幕する。甲羅ふにゃふにゃ。 #twnovel
2010-08-24 08:18:40退廃的な映画を観たい、と友人に言ったら『踊る大捜査線』のDVDを渡された。最後まで見終わった後にデカダンスのダジャレだと気づく。友人に騙されたのだ。クククとニヒルな笑いがこみあげる。酒を浴びるほど飲み、札束を部屋にばらまいて娼婦と乱れ、泥のように眠りについた。 #twnovel
2010-08-24 14:27:31コントローラーが宙を舞い壁に。やめろ壊れると言う俺を凄まじい形相で睨みつける彼女。苦手の格ゲーをやると言った時から嫌な予感はしてた。で、落ちゲーを差し出すとにんまり。得意なのだ。やれやれと苦笑混じりに開けた箱の中は何故かギャルゲー。コントローラーがまた飛んだ。 #twnovel
2010-08-24 15:08:57#twnovel 「小説には二種類ある。娯楽を提供するか、または美を提示するか」「あなたは?」「娯楽的なものを書くことに努めているよ。芸術は天才に任せればいい」「あきらめが早い」「それでも娯楽と芸術がメビウスの輪のように繋がることを夢想する」「儚い」「夢の世界の出来事だから」
2010-08-24 17:24:02妹の手を引くお兄ちゃん。迷子な兄ちゃんは今にも泣き出しそうな顔で、でも必死に涙をこらえてた。妹はわけもわからず強く握られた手に導かれながら「お兄ちゃんコロッケだよー。コロッケおいしーねー」と無関心。兄の「自分が何とかするんだ」という気持ちに妹はいつ気づくのかな。 #twnovel
2010-08-24 18:01:58太陽系外知的生命に向けてのメッセージを送るため、人類は宇宙船を発進させた。そこには、主に世界中の人々の写真を載せた。・・・とある惑星。「小型宇宙船が到着したんだって?」「不思議はことに食品の広告が載せてあったとさ」人類と似た食品を齧りながらの住人の会話。 #twnovel
2010-08-24 18:22:38#twnovel 目覚めると夫はもう出かけていた。破片が散ったままのリビングに、ため息。彼に投げつけたお皿3枚ぶん。ゴミ捨て場で隣の奥さんに会った。「昨日はすごかったわね」ニヤニヤ顔を寄せてくる。「アノ声、もう少し抑えた方がいいわよ」私は赤くなった。なぜかケンカの後ほど燃える彼。
2010-08-24 18:23:15シィーッ…しんどいなんて言うものじゃないよ。住職をご覧、百を超えて元気なものだ。本音を言えば夜は早く寝たいが、愚痴を言っても仕方ない。こうして地蔵盆にお供えの菓子を貰いに寺に来るのも何十回目だろう。子どもを護るお祭なのに、子どもが生まれなくなって皆年寄りばかりだ #twnovel
2010-08-24 19:15:05最後の練習日。後輩への申し送りをすませた。明日から全国大会。・・・のはずだった。壁のカレンダーには赤い星印。可能性はゼロではないと思っていた。合唱にかけた青春なんて、地味すぎて笑える。それでもね、楽しかった。来年は頑張ってよね。笑おうとしたら、視界がにじんだ。 #twnovel
2010-08-24 20:19:54#twnovel パンダだった頃、動物園で糖尿病を患った。末期には夢とうつつの区別もなくした。月夜の晩に、飼育係が置き忘れたラジオから生き別れた一族の遠吠えが聞こえて、生まれ変わったら故郷の歌を作ろうと思った。これはそんな風にできた歌だ。聞いて下さい、「パンダの天国、愛のテーマ」
2010-08-24 20:48:07#twnovel 回廊には、なにもない。窓も出入り口もない。ただ回るだけだ。やがて現れた時と同じように消える。たくさんの人が現れ、消えてゆく。足音だけが、時を刻むかのように一定間隔で響く。新入りがやってきた。「ここにはなにがあるんですか?」「絶望だよ」そしてまた沈黙と足音。
2010-08-24 20:51:12#twnovel 夏の路地裏を走る子供たち。狭い道に張り出す緑や軒先の置物をすり抜け、曲がった角でふと足を止める。日差しは強いのになぜか空気はひんやり、嘘っぽい。夏の路地裏はリアルな迷路。彼らが走るのは、立ち止まってはいけないのを知ってるから。早く。夏の何かに掴まっちゃうよ──。
2010-08-24 20:55:07【メモ】 男はメモ帳を忘れた。出先で使うのに。取りに帰ろうかと考えたが家は遠過ぎた。迷っていた時男の娘が言った。「パパ、頭の中のメモ帳に書いとけばいいんだよ!」男は答えた。「娘や、頭のメモ帳は良いアイデアだ。でもパパのメモ帳はビールを飲むと字が滲んじゃうんだ。」 #twnovel
2010-08-24 21:00:06#twnovel 仕事に疲れてオフィスを出て都心のホテルに独りで泊まる。上質で無駄の無いサービス、静謐な空間が私を包む。柔らかいソファに体を沈め、心の奥までも落ち着けようと試みて目を瞑る。溜まった仕事が次々と浮かんでくる。私は立ち上がり会社へ戻る。私はもう休めないのかもしれない。
2010-08-24 22:05:02一歩踏み出す勇気を持て、と先生は言った。やらない後悔よりもやる後悔だ、と友人は言った。だから私は一歩を踏み出すことにした。それは思っていたよりも簡単で、私は新たな世界に飛び出した。今までに見たこともない景色に思いを巡らせ、地面に激突したところで意識は飛び散った。 #twnovel
2010-08-24 22:11:22眠っている隙に、君の怖がっているものを静かに手繰ってバケツの中に貯めておいた。今日、大鍋でそれをぐつぐつ煮込んで糸を染めた。そうしたらさ、ねえ、綺麗な色が生まれたんだ。君の知らない君の色。僕はこれでシャツを作ろうと思う。秋に着られる素敵なやつを。 #twnovel
2010-08-24 22:12:14バファリンにおいて確定しているのは、半分が優しさでできていることと薬品が含まれているということ。つまり、優しさ以外の半分に薬品は包括されるが、それが何%だかわからないとても不確定な物体である。優しさ以外は想像の余地を残して、夢で出来ているということにしよう。 #twnovel
2010-08-24 23:06:48