吸血鬼なう、な俺(完結)

日課である深夜のランニング。 何事もなく終わるはず…だった。   「なんでアタシが噛んだのに吸血鬼らしくできないワケ!?」 続きを読む
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ハラヨシ @harayosy

#twnovel 吸血鬼なう、な俺。その声はとても小さく、のんびりと歩いていなかったら気づいていなかっただろう。「…?」公園の奥の目立たない場所。木陰に座っていたのは、居候の吸血鬼だった。「何だ、お前も散歩なん」かけようとした言葉は…最後まで言えなかった。「…たい、…が…たい」

2010-09-01 19:32:24
ハラヨシ @harayosy

#twnovel 吸血鬼なう、な俺。「飲みたい飲みたい飲みたい飲みたい飲みたい飲みたい血が飲みたい血が飲みたい血が飲みたい赤い血が飲みたい赤い赤い赤い血が血が飲みたい飲みたい飲みたい飲みたいダメダメダメ飲んじゃいけないいけないいけない血を飲んじゃいけない飲みたいダメダメダメダメ」

2010-09-01 19:36:48
ハラヨシ @harayosy

#twnovel 吸血鬼なう、な俺。居候は自分を抱きしめるように腕を抱えていた。俺は咄嗟に隠れてしまった。「ダメダメダメ飲んじゃいけないいけない」自らの腕を自分の爪で傷つけながら、居候は呟く。「飲みたい…ダメ…」涙を流して。自分に暗示をかけるように。俺は、動くことができなかった。

2010-09-01 19:43:41
ハラヨシ @harayosy

#twnovel 吸血鬼なう、な俺。居候の小さな声は終わりがないくらいに続いた。吸血鬼だろ?何やってんだよ。俺は何故か腹が立った。簡単だよ、何やってんだよ、血吸えよ、飲めよ、こんなに人間はいるじゃないか、よりどりみどりじゃないか、何でお前がこんな。「眠っちゃ、いけない」居候の声。

2010-09-01 19:50:23
ハラヨシ @harayosy

#twnovel 吸血鬼なう、な俺。 「アタシが眠ったらアイツは一人になる…飲んじゃいけない。眠っちゃ…いけない」…なんだよ、それ。『眠るわ』『え?』『三大欲求。最後は血を吸わなくても眠るだけで満足しちゃうの。棺桶に入ってね。…皆、そう』いつかの会話を思い出す。「…今日は大丈夫」

2010-09-01 20:02:04
ハラヨシ @harayosy

#twnovel 吸血鬼なう、な俺。泣き疲れたような居候の声。「大丈夫、今日は…飲まない」ガサリと立ち上がる音。ふらつくように居候は立ち去っていった。俺は…隠れたままだった。「…なんだよ」抑えていた声が漏れる。「一人になる…俺が?」怒りなのか恐怖なのか分からない。震える声が出た。

2010-09-01 20:08:53
ハラヨシ @harayosy

#twnovel 吸血鬼なう、な俺。「もー!どこ行ってた、もうすぐ朝よ!灰になりたいの!?」「すまん」家に帰ったのは、そろそろ朝日が昇ろうとする頃だった。「ちょっと…考え事してて」「熱でもあるんじゃない?」居候はいつもの調子だ。「…かもな」そう、いつもの。俺が知ってる居候だった。

2010-09-05 19:10:51
ハラヨシ @harayosy

#twnovel 吸血鬼なう、な俺。「心配して損した。千回灰になれ」「…あのさ」家の中に戻る居候に声をかける。「何か悩んでる事ないか?」「無い」即答だった。「本当に?」「しつこい。生にんにく、喉に直接流し込むわよ」本気目で言う居候。「…分かったよ」俺は知らない振りをする事にした。

2010-09-05 19:24:36
ハラヨシ @harayosy

#twnovel 吸血鬼なう、な俺。「あれ?」パソコンの調子が突然おかしくなった。「固まった…マジか」「叩いてみたら?」いつの間にか背後に居候がいた。「わ!」「驚かないでよ」「い、いつから?」「さっき」焦る俺に、にんまりと笑う。「安心しなさい…履歴は見ないであげるから」「わー!」

2010-09-05 19:38:06
ハラヨシ @harayosy

#twnovel 吸血鬼なう、な俺。「…とりあえず言い訳を聞こうか」俺の声に、居候の吸血鬼がびくっと肩を震わす。「あのー、その、ね?最近涼しくなったじゃない?」「ほう」「でね、散歩してたんだけど」「ふむ」「気がついたら…手に持ってた」大量に抱える新作ゲーム。「返して来い」「嫌!」

2010-09-05 19:45:52
ハラヨシ @harayosy

#twnovel 吸血鬼なう、な俺。「犬と猫どっちが好き?」居候に聞いたら「犬」と回答。「忠犬って言葉の響きがいいわよね。そう思わない?」どSな表情で言われても困る。「猫は?」「嫌い」「嫌いなんだ」「ええ、気まぐれなとことか自分勝手なとことか」「えーと鏡見る?」「灰になりたい?」

2010-09-06 21:19:44
ハラヨシ @harayosy

#twnovel 吸血鬼なう、な俺。準備さえしていれば日中でも活動可能だという。「…で、準備してみた」「へー」居候のチェックが入る。日傘。サングラス。マスク。パーカーで頭を完全にカバー。長袖で腕の防御もばっちし。止めに全身に日焼け止めクリーム。「どうかな?」「捕まるんじゃない?」

2010-09-06 21:29:06
ハラヨシ @harayosy

#twnovel 吸血鬼なう、な俺。「なあなあ、黒マントとかしないの?」「…しょっぱなから頭悪い発言ね」「吸血鬼って黒マントってイメージじゃないか」「まあ、そうね」「それに女性だと、こう露出の高い服でさ…あ」「何よ」「いや、その…ごめん…」「ちょっと人のどこ見て謝ってんのよ!?」

2010-09-06 21:39:25
ハラヨシ @harayosy

#twnovel 吸血鬼なう、な俺。居候の吸血鬼が、ソファに座りながらTVを見ている。ふと、思いついて聞いてみた。「そういやさ」「んー?」「年齢聞いてなかったよな。いくつなんだ?」「んー?」TVに夢中で生返事かと思い聞き返す。「いや、だから何歳「んー?」…すみません」禁句らしい。

2010-09-06 21:53:40
ハラヨシ @harayosy

#twnovel 吸血鬼なう、な俺。「耳かきしてあげる」その言葉を聞いた瞬間、俺は後ずさりしていた。「何で逃げんのよ」「…勘だ」「むむ」居候がソファから立ち上がる。「いいからアタシの膝にきなさい」「耳かきを武器みたいに扱う手つきが怖いわ!」「心配しないで大丈夫?」「疑問系かよ!」

2010-09-07 21:58:31
ハラヨシ @harayosy

#twnovel 吸血鬼なう、な俺。「…今度は俺の番だな」逃げようとした居候の吸血鬼の首根っこを捕まえる。「いや、アタシの耳は綺麗だから耳かき必要ない!」「遠慮するな」「ごめん、謝るから!」「治癒力高くて良かったなぁ」耳に突き刺さる耳かき。「くしゃみしたのは本当謝るから!嫌ー!」

2010-09-07 22:06:43
ハラヨシ @harayosy

#twnovel 吸血鬼なう、な俺。「暇ね」ゲームをしながら居候の吸血鬼がポツンと呟いた。「暇だな」ソファで雑誌を読みながら答える。カチャカチャとゲームパッドを叩く音だけが響く。「暇なんだけど」「暇だぞ」ページをめくる。ゲームオーバーの音楽。「暇」「暇」なんとなく可笑しくなった。

2010-09-11 00:54:14
ハラヨシ @harayosy

#twnovel 吸血鬼なう、な俺。現代に生きる吸血鬼として居候もパソコンは使えるらしい。「パソコン貸して」「いやだ」「何でよ、履歴も見ないし隠しフォルダも探さないし『jpg』『avi』とかの拡張子で検索もしないってば」「そういう事言うから怖いんだよ!鬼かお前は!」「吸血鬼です」

2010-09-20 17:46:23
ハラヨシ @harayosy

#twnovel 吸血鬼なう、な俺。銀行の手帳を見ていたら居候がやって来た。「何よ、暗い顔してるわね」手元の手帳を見た瞬間、居候は回れ右でターンした。「何故逃げる」「え?逃げてないわよ」「再確認だ。新作ゲームは?」「…見ない、やらない、手に入れない」「で、この金額なん」…逃げた。

2010-09-20 17:55:06
ハラヨシ @harayosy

#twnovel 吸血鬼なう、な俺。深夜のコンビニ。「雑誌買おうよ」「ゲーム雑誌は禁止」「ケチ」居候がぶーたれる。「新作ゲームは旬な情報が大事なのに」どうでもいい。「そういや酒は飲めるのか?」「飲めるけど…灰になる覚悟ある?」「意味がわからん」「記憶なくすの。派手に」「止めとく」

2010-09-20 18:14:14
ハラヨシ @harayosy

#twnovel 吸血鬼なう、な俺。あの夜の事が勘違いだと思う程に居候は元気だった。毎日、不機嫌そうで、楽しそうで、怒ったり、笑ったり。居候が傍にいるのがとても自然になっていて。夜になってソファから起きて「おそよう」なんて挨拶をするのが当たり前で。だから、俺は。信じたくなかった。

2010-09-20 18:28:08
ハラヨシ @harayosy

#twnovel 吸血鬼なう、な俺。深夜のリビング。いつもの夕ご飯。俺は動くことが出来なかった。「…げほっ!」居候が床に倒れて苦しんでいる。喉を掻き毟るようにして無理やり嘔吐しているようだ。「ちょっと…味付け失敗したんじゃない…」居候は力なく笑った。「ごめんね…先に顔洗ってくる」

2010-09-20 18:36:27
ハラヨシ @harayosy

#twnovel 吸血鬼なう、な俺。床を掃除しながら今日の献立を振り返る。…間違いない。「もう…アタシのせいなんだからいいのに」居候が戻ってきた。「そりゃあね?アンタの料理が壊滅的だったのは、灰になれって感じだけどさ」「…にんにくだろ」居候の雑巾が止まった。「隠し味に…使ってた」

2010-09-20 18:39:43
ハラヨシ @harayosy

#twnovel 吸血鬼なう、な俺。「ほんの少しでそれこそ隠してるぐらいだったんだけど…」俺は、居候の顔が見れなかった。「なあ、にんにく…もう、だめなのか?」「な、わけないじゃない…」居候の声が震えていた。「調子悪いだけよ!大丈夫よ!」「じゃねえだろ。あんなに拒絶して」「違う!」

2010-09-20 18:45:53
ハラヨシ @harayosy

#twnovel 吸血鬼なう、な俺。「アタシは違う!アタシは皆みたいにならない!」居候が立ち上がる。「…血を吸ってないからか?」「!」見上げる。居候の目があった。「なんで、アンタ」「悪い、一度見ちまったんだ、公園で」「うそ」居候の足がふらつく。「血を吸わなくなったのはいつからだ」

2010-09-20 18:54:42
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