吸血鬼なう、な俺(完結)

日課である深夜のランニング。 何事もなく終わるはず…だった。   「なんでアタシが噛んだのに吸血鬼らしくできないワケ!?」 続きを読む
2
ハラヨシ @harayosy

#twnovel 深夜のランニング。曲がり角でぶつかった相手が吸血鬼だった。噛まれた。「運が悪い…」「そーゆー問題じゃなくって!なんでアタシが噛んだのに吸血鬼らしくできないワケ!?」「いや、俺、健康だし」「ちょっとは血吸いなさいよ!」「あ、俺、血見るのダメなの無理無理」「もー!」

2010-08-25 22:37:54
ハラヨシ @harayosy

#twnovel 吸血鬼なう、な俺。定期的に血を吸わないとダメな体質らしい。「健康だけがとりえだったのになぁ」「ぶつぶつ言わないでさっさとしなさいよ!」「…本当にいいの?」何と血を吸われた吸血鬼からでもOKらしい。「べ、別にアンタのためじゃないんだからね!」「うわーツンデレだー」

2010-08-25 22:45:24
ハラヨシ @harayosy

#twnovel 吸血鬼なう、な俺。俺の一日は早朝ランニングから始まる。いつものTシャツと短パンに着替えて軽く準備体操。「さてと」玄関のドアを開けようとした瞬間。居候の吸血鬼に殴られた。「アンタは!吸血鬼の自覚無いのか!」「痛いな、健康は毎日の運動からだぞ?」「もー!灰になれ!」

2010-08-25 22:58:11
ハラヨシ @harayosy

#twnovel 吸血鬼なう、な俺。「そもそも血なんて吸う場所はどこでもいいの」居候の吸血鬼が言う。「首筋が有名なのは?」「雰囲気でしょ」にべもない。「だから、はい、今日の分」人間の血が飲めない俺に、居候が裸足の足を差し出す。「…何だこの下僕プレイ」「気分いいわね!」「性質悪い」

2010-08-26 20:45:31
ハラヨシ @harayosy

#twnovel 吸血鬼なう、な俺。身体能力は向上したが、同類にはあまり意味は無いらしい。「待て逃げるな!もー!」「家の中でドタバタさせんな!」「させてんのはどっちよ!」居候の怒声が響く。「足から血吸うなんてできるか!俺はMじゃねえ!」「だからっておでこに噛みつく!?灰になれ!」

2010-08-26 20:51:14
ハラヨシ @harayosy

#twnovel 吸血鬼なう、な俺。生活が昼夜逆転してもそれなりに暮らせるんだから世の中便利だ。深夜のコンビニから戻ってくると、居候がソファに寝転がりながらレンタルDVDを見ていた。「何見てるんだ…って吸血鬼ものか」「…さっさと杭を打てばいいのにねぇ」「そっちサイドで見るの!?」

2010-08-26 21:01:56
ハラヨシ @harayosy

#twnovel 吸血鬼なう、な俺。自分の弱点を聞いてみた。「太陽。油断すると本当に灰になるから」「他には?」「そうね、杭がささると痛いわね」「…人間も同じだと思う。にんにくは?」「餃子好きよ」「十字架」「いちいち気にしてらんない」「…流れる水」「が、怖くてトイレにいけますか!」

2010-08-26 23:25:50
ハラヨシ @harayosy

#twnovel 吸血鬼なう、な俺。首を傾げながら居候の吸血鬼が俺の顔を見上げている。「どうしたの?顔色悪いわよ」「…何でもない」「嘘!アンタ、そんなに苦しそうにしてるじゃない!何か悩みがあるんなら言ってよ!」「…実は牙が口の中でささって口内炎になっちゃって」「馬鹿!灰になれ!」

2010-08-26 23:56:56
ハラヨシ @harayosy

#twnovel 吸血鬼なう、な俺。「三大欲求って知ってる?」居候の吸血鬼が言う。「睡眠欲、食欲、性欲だっけ」「そうそう、私達吸血鬼は性欲と食欲がごっちゃになってるのよね」「へ」「血を吸うという事が二つの欲を満たしちゃうの」「成程」「だからかな、吸血鬼は繁殖には興味ないんだよね」

2010-08-27 23:03:44
ハラヨシ @harayosy

#twnovel 吸血鬼なう、な俺。「アタシはにんにく好きだし十字架や流れる水も平気」居候の話は続く。「それって吸血鬼としての力が弱いって事なの。吸血鬼は力が増すほど、概念に縛られる」「…よく分からん」「吸血鬼は強くなる程弱点が増えるわ。にんにくが苦手になるし、十字架が怖くなる」

2010-08-27 23:09:22
ハラヨシ @harayosy

#twnovel 吸血鬼なう、な俺。「血を吸わなければ吸血鬼は存在できない」「だったな」「でも、血を吸うごとに強くなる。人間らしさを失って吸血鬼らしくなっていくの」居候は俺を見つめた。「アンタがもし強くなりたくなければ…あまり血を吸わない事ね」「日課なんじゃね?」「我慢しなさい」

2010-08-27 23:14:30
ハラヨシ @harayosy

#twnovel 吸血鬼なう、な俺。居候の講習は終わりらしい。「なあ…」最後に聞いてみた。「という事は結局最後には強くなるわけだろ。皆、どうしてるんだ?」「眠るわ」「え?」「三大欲求。最後は血を吸わなくても眠るだけで満足しちゃうの。棺桶に入ってね。…皆、そう」寂しそうな声だった。

2010-08-27 23:19:55
ハラヨシ @harayosy

#twnovel 吸血鬼なう、な俺。顔を顰めていると居候がやってきた。「何?口内炎?馬鹿なの?灰になるの?」先日の事を根に持ってるらしい。「牙が邪魔なんだよ!いるのか、こんなの!」「吸血鬼全否定ね。邪魔なら引っ込めちゃえばいいのに」「できるの?どうやって?」「努力と修行とど根性」

2010-08-27 23:54:28
ハラヨシ @harayosy

#twnovel 吸血鬼なう、な俺。相変わらず深夜のランニングは続けている偉い俺。「吸血鬼なのに」「心の持ちようだ」「めんどくさい…」「文句言わんと走る走る!」ぶーぶー言いながらついてくる居候。「アタシ達、世界一健康的な吸血鬼なんじゃないかしら…」「いやあ」「褒めてないわよ馬鹿」

2010-08-28 00:13:49
ハラヨシ @harayosy

#twnovel 吸血鬼なう、な俺。基本、夜行生物な吸血鬼。日中に外に出たらどうなるか聞いてみた。「直射日光を受け続けると肌が焦げる。その内、全体が焦げて、最終的に灰になるわ」「一瞬でお終いじゃないんだな」「そうね、対策をとれば動けなくもないわ」「例えば?」「日焼け止めクリーム」

2010-08-28 14:39:58
ハラヨシ @harayosy

#twnovel 吸血鬼なう、な俺。「おやすみー」パタパタを手を振りながら居候が寝室に向かう。昼夜逆転なので、カーテン越しの外が明るくなり始めたら眠りにつくのだ。「さて、俺も寝るか…」大きくのびをしてソファに寝転がる。「…」俺、リビングのソファ。居候、寝室のベッド。「…違くね?」

2010-08-28 14:47:42
ハラヨシ @harayosy

#twnovel 吸血鬼なう、な俺。「もー!灰になれ!」居候の怒声が聞こえてきた。「何だ何だ、俺は何もしてないぞ」「アンタじゃないわよ、蚊よ蚊!モスキート!」「蚊?」「貴重な血を持ってかれたの!かゆいったら、もー!」「吸血鬼って蚊に食われるんだ」「天敵よ!」「はいはい、薬薬、と」

2010-08-28 14:58:02
ハラヨシ @harayosy

#twnovel 吸血鬼なう、な俺。居候はゲームが好きらしい。ゲーム機本体やらソフトやらと買わされて気がつけばTVの周りはゲームばっかだ。深夜、リビングのTVでひたすらゲーム三昧。「なるほど」「…何よ」「何かに似てると思ってたんだけど…やっと分かった。引きこもりのゲームおたくだ」

2010-08-28 15:14:12
ハラヨシ @harayosy

#twnovel 吸血鬼なう、な俺。「そこに正座しなさい」居候の声が冷たくリビングに響く。「嘘偽りは許されない。これから発する言葉は、我らが始祖の吸血鬼に誓って真実を」「…お、おう」「では聞くわ」ぐっと顔を近づけてくる。「アタシの200円以上もするアイス。食べたのは…誰かしら?」

2010-08-28 15:28:08
ハラヨシ @harayosy

#twnovel 吸血鬼なう、な俺。居候の吸血鬼の指先に針を刺す。「…はい、どうぞ」口に含む。苦い鉄の味。しかし、それはすぐに抑え難い甘みのある液体へと変化していく。ごくりと咽喉を通る感触。そして飢餓感。もっと飲みたい。「…おしまい」居候の少し悲しそうな目でいつも俺は冷静に戻る。

2010-08-28 16:01:34
ハラヨシ @harayosy

#twnovel 吸血鬼なう、な俺。空を一瞬で染める光。間をおいて轟く咆吼。「おー雷ひどいな」昼夜逆転生活の為カーテンを閉め切っていても明るい。「今日はランニング諦めようか…ん?」横に居たはずの居候がいない。「ふむ」光。寝室から「もー!」咆吼。「灰ににゃれ!」噛んだ。苦手らしい。

2010-08-30 16:56:34
ハラヨシ @harayosy

#twnovel 吸血鬼なう、な俺。「蝙蝠に化けられる?」「…聞いたわね、その話題」居候の声が曇る。え、まずいチョイスだった?「蝙蝠に化ける時って沢山の蝙蝠になるじゃない」「…あー」「あれって意識が分散するもんだから難しいのよ。全部で元に戻るのが」「…え?」「何匹か逃げちゃうの」

2010-08-31 19:11:17
ハラヨシ @harayosy

#twnovel 吸血鬼なう、な俺。「餃子が食べたい!です!」居候の吸血鬼のリクエストで、今夜の晩御飯は餃子となった。わがままを言う時だけ丁寧になる。最近だと「アイスが食べたい!です!」だったか。「にんにく!たっぷりと入れてね!」「分かったから、丸ごとゴロゴロ入れるんじゃねえ!」

2010-08-31 19:17:29
ハラヨシ @harayosy

#twnovel 吸血鬼なう、な俺。「もー!灰になれ!」不機嫌な居候の声。それに『いつもの』なんて形容詞がつくぐらいに時間は過ぎていった。吸血鬼にはなったが、俺は俺のままでいられたし、口は悪いし態度もでかいが居候がいる生活も悪くない。こんな日々が続くんだと…俺はそう、思っていた。

2010-08-31 23:19:03
ハラヨシ @harayosy

#twnovel 吸血鬼なう、な俺。「むう、眠れねえ…」その夜は、とても暑くて。俺は少し気晴らしに外に出かけた。「おお、満月か」公園へと続く道を、月に照らされながら歩く。「…アイツも誘えば良かったかな」眠いとか言われそう。しばらく公園の中を歩く。…その声は、木陰から聞こえてきた。

2010-09-01 19:25:07
1 ・・ 5 次へ