吸血鬼なう、な俺（完結）

ハラヨシ @harayosy

#twnovel 吸血鬼なう、な俺。「非常事態宣言。今日から食事制限を開始するわ」居候が言った。「心して聞きなさい。秋はとても危険な季節よ」「まあ、昨日誰かが体重計に乗って悲鳴上げた時から予想はついてた」「そう、わかったわ、灰になりなさい」「自然な会話のテンポで包丁持ち出すな！」

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#twnovel 吸血鬼なう、な俺。「おそよー」欠伸しながら居候が起きてきた。今は夜の十時。普通は、六時頃に起きてくる。「遅いな」「ついついゲームにはまっちゃって」「不健康な生活は美容に悪いんじゃないのか？」「ふふん、吸血鬼にそんな一般常識通用しないわ！」「体重計…」泣いた。

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#twnovel 吸血鬼なう、な俺。日が落ちてからが吸血鬼の時間。なんだが、その時間からでは遅くて行けない場所もある。「また、こんなに買っちゃって」ネット通販で購入した本を見た居候が呆れ顔で言う。「図書館使えないんだからしょうがないだろ？」「全部、吸血鬼関係…ね」「研究資料だよ」

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#twnovel 吸血鬼なう、な俺。眼前に死神がいる。「…ふうん」居候の声。「アタシのセーブデータ消しちゃったんだ」「わ、悪気はなくて！間違っ」「消しちゃったんだ？」「…はい」声は可愛いのに恐怖しか感じない。 「駄犬」「俺は犬じゃ」「駄犬」「わ、わん」「お仕置きが必要ね」死んだ。

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#twnovel 吸血鬼なう、な俺。「たまにはアタシがご飯作る！」とやる気を見せてから数時間。キッチンは戦場と化していた。「レシピ通りにやれ！アレンジなんか不要だ！」「アタシの味に文句あるわけ！？」「涙流しながら言っても説得力ないわ！さっきの味見のせいだろ！」「もー、うるさい！」

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#twnovel 吸血鬼なう、な俺。「つまりアタシが言いたいのは」びしっと指を突きつけてくる。「もうちょっと吸血鬼の自覚持ちなさいって事」「はっはっは、いやだな、さすがに俺も分かっ」「さっき日も落ちてないのに思わず外出て行って火傷して来たのは誰よ！」「あれは痛かったな」「もー！」

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#twnovel 吸血鬼なう、な俺。「おそよー。何やってるかなー」リモコンでTVをつける居候。悲鳴と共に幽霊特集の特番が映った。「…」無言でチャンネル変更。「怖いのか？」「え、まさか」「だよな」特番に戻す。速攻で変えられた。「お前吸血鬼だろ！」「吸血鬼は実在するもの！幽霊は別！」

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#twnovel 吸血鬼なう、な俺。季節はゆっくりと過ぎていった。吸血鬼に関する情報を手当り次第に色んな所からかき集めた。外国語の読めない文書も何とか翻訳したり、とにかく情報を…居候の状態を何とかする方法を探し続けた。居候の睡眠時間は段々と長くなっていく。俺はそれでも探し続けた。

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#twnovel 吸血鬼なう、な俺。「一緒にゲームするわよ」開口一番、居候はコントローラーを差し出した。「俺、今から眠るところなんだけど」「却下」しぶしぶ横に座る。「何か情報あった？」「…何も」「インターネットで見つかるかしら」「まだ探してみるさ」「ふーん」ゲームを起動する居候。

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#twnovel 吸血鬼なう、な俺。「あ、そうだ、罰ゲームありでやるわよ」「げ」「ちなみに接待プレイはアタシはしません」「鬼のように強いだろ、お前は！」「吸血鬼ですから」「うまい事いった顔するな！」俺の罰ゲーム確定で勝負が始まる。「さー、泣くか喚くか叫ぶか決めなさい！」「酷い！」

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#twnovel 吸血鬼なう、な俺。格闘モノに始まり、落ちものパズルに、ボードゲーム、クイズゲームなどなど、床に転がるゲームを次々と対戦していく。「うおお…心が折れそうだ」「自分の才能が怖いわね」無論、一回も勝てやしない。居候は本当に手を抜かなかった。「はい、クイズも勝ち」「う」

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#twnovel 吸血鬼なう、な俺。「本当に弱いわ、手ごたえも感じない」「煩い」「次はスポーツ？レースにしよっか？」「うーん」ケースを見比べて迷う俺。「…ねえ」「サッカーにするか…ん？何だよ」「罰ゲームなんだけど」「…新作ゲームは勘弁な」「違うわよ。拒否権ないからね」「？…了解」

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#twnovel 吸血鬼なう、な俺。床に突っ伏す俺なう。「ふ…他愛もない」ソファで足を組みかえる居候。その仕草が憎らしい。「完全勝利とは正にこの事ね」「対戦じゃねえ、一方的な虐殺だ！」「敗者の言葉ほど空しいものは無いわ」「くそう、この仇は今度必ず…」「じゃあ、罰ゲームなんだけど」

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#twnovel 吸血鬼なう、な俺。「街の東に別荘地があるでしょ。そこに赤い屋根の家があるんだけど、そこの地下にアタシの棺桶があるの。家の鍵は、玄関脇のポストに入れてるから。忘れないでね」「…待てよ」「家自体はしばらく使ってないから荒れてるかもだけど、地下は恐らく大丈夫だと思う」

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#twnovel 吸血鬼なう、な俺。「何の…話だよ」「罰ゲームよ。ええと、電気がきてないから、懐中電灯がいるかな？アンタ、持ってる？」「何の話だよ！！」「眠りにつくのよ」「！」居候の一言が俺を貫いた。「自分の身体の事だから分かるの。多分、今日がそう」居候が自分の手を電灯にかざす。

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#twnovel 吸血鬼なう、な俺。「感覚ないんだ、この手。足もだんだんきてる。身体全体が眠りに入ってきてる」「…俺に全勝したじゃないか」「相手にすらならないわよ」「治す方法…まだ見つけてねえよ、俺」「ゴメン、アタシの方が先だったみたい」「約束したんだ。何とかするって…お前を…」

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#twnovel 吸血鬼なう、な俺。「何やってたんだ、俺。こんなゲームとか…他にする事あっただろ」「え」「暢気に話したり、ビデオ借りたり、遊んだり…馬鹿だ。俺、馬鹿だ…！お前の時間は残り少なかったのに…！何やってたんだよ！！」床に額を打ち付ける。「ちょっと！もー何やってんの！？」

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#twnovel 吸血鬼なう、な俺。吸血鬼の力で床板が割れた。「すまん、俺が悪かった。治してやれなくてごめんな。俺が馬鹿だったから。余計な事してて、無駄に時間を過ごして、もっと死ぬ気でやれば良かった！」「あーもー、アンタのそういう一直線なとこ好きだけど、うっとおしい！」殴られた。

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#twnovel 吸血鬼なう、な俺。「へ？」「煩いのよ、ぐちぐちと」「え」「治せなくてごめん？今まで何人ものアンタより頭のいい吸血鬼が眠らずにすむ方法を考えたわ。だけどダメだった。百年、千年かけても。アンタが数ヶ月頑張っても無理なの」「だけど」「それに無駄に時間を過ごしたって？」

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#twnovel 吸血鬼なう、な俺。「ふざけないでよ！無駄なんかじゃなかった。アタシは楽しかった！アンタと馬鹿やって、怒ったり、笑ったり、楽しかった！吸血鬼になってから今までで一番！アンタとの生活が楽しかった！」また殴られた。居候とは思えないほど弱々しかった。「余計とか言うな！」

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#twnovel 吸血鬼なう、な俺。「でも、俺、お前を治したかったんだ」「なら無駄なんて言わないで。アンタの守りたかったものは、アタシが好きだったものと一緒でしょ」居候が俺の手を握る。「アンタとの生活で、無駄な時間は１秒だって無かったわ」少し笑う。「変なDVDの事は許せないけど」

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#twnovel 吸血鬼なう、な俺。夜が更けていく。俺と居候はソファに並んで外を見ていた。「満月だな」「そうよ、初めて会った時と同じ」「そうだったっけ」「何よ、覚えてないの」「…記憶から抹消してるからな」「まだ言ってるの、それ」「うるさい」「もー」「腹空かね？」「全然」「そ、か」

ハラヨシ @harayosy

#twnovel 吸血鬼なう、な俺。「罰ゲームの続きなんだけど」「まだあるのかよ」「敗者に拒否権はないわ」「へいへい」「仲間を見つけなさい」「仲間？」「吸血鬼。世界には、まだまだ吸血鬼はいるわ。一人になるのは許さない。アタシの代わり、って言うとオカシイけど。アンタは保護者が必要」

ハラヨシ @harayosy

#twnovel 吸血鬼なう、な俺。「保護者って、ひどくね？」「アンタは危なっかしすぎるの。一人になったらアンタってば絶対油断して日光浴でもしそうだもの」「否定できない」「…はあ。だから、安心して眠りにつけるように、アンタは仲間を見つけてしっかり保護してもらうように。分かった？」

ハラヨシ @harayosy

#twnovel 吸血鬼なう、な俺。「…善処する」「絶対よ！」「耳！痛いから引っ張るな！するする！絶対！オーケー！」「最初から素直になればいいのよ」「手の感覚ないんじゃないのかよ」「無いわよ、全然」「俺への虐待には関係ないと」「そうね、駄犬の躾には少々の問題も関係ないわ」「躾！」