バトルクエスト・クレンチ・ユア・フィスト #7

翻訳チームによるサイバーパンクニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) 日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ナンシーはこの宮殿の構造をおおかた把握……尤も、井戸から正体不明の巨大蛇が這い出した時、その確信も大いに揺らいだのであるが……出来ている。UNIXルームを目指す事はそう難しくは無い。問題はそこが最重点警戒区域に指定されている事だ。敵もそう愚かではない。 23

2013-02-08 00:24:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ナンシーは溝から這い出す。アコライトの石牢に近づく事にも時間を要し、今度はUNIXルームだ。休息もそうそう許されぬ。ナンシーは己に喝を入れた。今まで経験して来たミッションの中で、今回の難易度はいかばかりか。まだまだやれる。 24

2013-02-08 00:33:39
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

幸い、通り過ぎる護衛戦士達の会話の断片から得た情報を総合すると、どうやらすぐに行われると思われたアコライトとオーバーウェルムの決闘は、何らかの要因で翌日に延期だ。環境ボンボリに照らされる庭園をしめやかに横切り、エンガワからタタミ敷きのゲイシャルームへ滑り込む。 25

2013-02-08 00:36:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ゲイシャルームには銀のビヨンボが立てかけられていた。おあつらえ向きにゲイシャキモノも飾られている。ナンシーはビヨンボの陰でアイリス柄のゲイシャキモノに着替え、膝のところで裾を裂いた。反対側のショウジ戸を開け、パルテノン神殿とトクガワ城のハイブリッドめいた奇怪な廊下を更に進む。26

2013-02-08 00:45:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「これで16時間連続勤務だ」「休憩時間ありました」「残業手当」護衛戦士達の会話が聴こえて来る。ナンシーは素早く隣のショウジ戸を開け、廊下から室内へ滑り込んだ。身を屈めて、ショウジ戸に写る三人の男達の影が会話とともに通過するのを待つ。「オイランを抱かずに帰れない」「ファックだ」27

2013-02-08 00:52:47
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……」ナンシーは息を殺し、彼らをやり過ごした。再び動き出そうとしたが、彼女は息を呑み、室内を見渡す。そして押し入れの中へ隠れた。二秒後、ショウジ戸が開け放たれた。入って来たのは護衛戦士ではない。オイラン、そしてニンジャだ! 28

2013-02-08 01:01:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ヨイデワ・ナイカ!」「オヤメニナッテ」荒い息を吐き迫るニンジャを、オイランは笑いながらたしなめた。痩せたニンジャはオイランの帯に手をかけると、力任せに引っ張った。「アレー!」ナムサン!オイランはロールペーパーを巻き取られるがごとく、くるくる回りながらキモノを脱ぐ! 29

2013-02-08 01:04:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「我慢出来ない!」「フートンを敷かないと……」「構わん!タタミ重点!」痩せたニンジャはオイランのキモノをむしり取った。ナンシーはフスマの隙間からうんざりとその痴態を眺め、脱出の隙を伺う。当然、ニンジャは決して侮ってはならぬ。このニンジャはバロール。残忍なイクサを彼女も見た。 30

2013-02-08 01:12:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「シシシ……俺の事をバカにしてるんだろう。お前も」「そんな事ないドスエ」「繕うんじゃないぜ。俺は醜いからな」バロールは熱に浮かされたような目を光らせた。「醜いが、お前は何もできんのだ。嫌でも奉仕せねばならんのだ」「嫌じゃないドスエ」「繕うな!俺はお前を自由に出来るんだ」 31

2013-02-08 01:18:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

バロールはオイランを押し倒した。「もっとしてください」オイランは誘うが、涙声だ。「シシシシシ!どうだお前。悔しいんだろう。俺はな!サヨナラファックが大好きなんだよ。ファック・アンド・サヨナラと違うぜ。サヨナラファックだ。こうするんだ!」「アイエエエエ!」 32

2013-02-08 01:23:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

バロールはオイランにまたがり、首を絞め始めた!危険だ!ナンシーはフスマを敷き開け、おぞましき非人道行為の後ろを通り抜けると、開け放たれたままのショウジ戸から廊下へ逃げ出した。「シシシッ!シシシシシッ!……何だ!」バロールは手を止め、振り返った。オイランが泡を噴き気絶した。 33

2013-02-08 01:24:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

バロールは気絶したオイランを放ると、後を追って廊下へ飛び出した。「どっちだ!今のは女だな!」左右をせわしなく確認し、ノシノシと歩き出す。ナンシーは足音が追って来るのを感じながら、全速で駆けた。バロールの声が響いた。「わかるぞ!聴こえるぞ!シシシシ!そっちだな!」 34

2013-02-08 01:29:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ハァーッ!ハァーッ!」振り返り振り返り、ナンシーは走る。実際、これは彼女の最善行動ではない。バロールがあのオイランに飽き、部屋を出て行くまで、押し入れの中でじっと息を殺して待つ。それが正解だったのかも知れぬ。だが彼女はそれを待たずして飛び出したのだ。 35

2013-02-08 01:33:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「シシシシシ!追いかけっこだ!捕まると痛いぞ!」声を後ろに、ナンシーは階段を駆け上がる。声は追って来る。「お逃げなさい!銃を持ってないんだろ!お逃げなさい!銃を持ってないんだろ!」「ハァーッ!ハァーッ!」何たる二重の試練か!前門にUNIXルーム!後門にニンジャからの逃走! 36

2013-02-08 01:41:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

階段を上がり終えると、ナンシーは踊り場に接するアーチ門をくぐり、さらにその先へ走る!「ウォルルーン!」後ろからバロールの吠え声!コワイ!ナンシーは知っている。バロールは変身が可能だ。だが変身をせずに追って来ている。つまりこの追跡自体が彼の娯楽の一部。敢えて逃がされているのだ。37

2013-02-08 01:48:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ナンシーは逃げながら考える。ならばこの際、危ない橋を渡ってみようというものだ。ミヤモト・マサシの兵法にも「何でも使え」という格言がある。厳重警備のUNIXルームに近づけないこの閉塞状況を打開する為に、この突発的危険を利用するのだ。危険に危険をぶつければ危険が半分になるのだ! 38

2013-02-08 01:54:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「シシッ!シシッ!追いついちまうぞ!ヤッちまうぞ!」バロールの声!そして走るナンシー!やがて前方に、ナムアミダブツ、警戒中の護衛戦士が五人!「何だ……」「居たぞ!」「アナスタシアだ!」「停まれアナスタシア=サン!」ナンシーは止まらない!走って近づく! 39

2013-02-08 02:03:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「見つけたァー!」角を曲がってバロールが飛び出す!ナンシーはバロールを振り返り、前方の護衛戦士を指差した。「こいつらよ!殺して!」「な……」護衛戦士達がざわついた。そして恐怖とともにナンシーの後ろのバロールへアサルトライフルを構えた。「来るな!」 40

2013-02-08 02:05:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ナンシーは床へ身を投げ出し、うつ伏せに倒れた。「GRRRRR!」風が吹きすさび、護衛戦士達が怯んだ。痩せたニンジャは一瞬にして青銅のパンプアップ身体をもつジゴクめいたアクマと化した!額の第三の目がぎょろりと見開く!「アイエエエエ!」護衛戦士が恐慌に陥る!何人かが銃撃を開始!41

2013-02-08 02:09:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ゴウランガ!きっかけがあれば良い!BRATATATATAT!BRATATATATAT!「イヤーッ!」「アバーッ!?」BRTATATATAT!BRATATATATATAT!「アイエエエエ!」「アバーッ!」TATATATATAT……ナンシーは床を這い、ケオスを抜け出す!42

2013-02-08 02:12:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

その先には白亜ワータヌキ像に両脇を守られたノーレン戸口!ナンシーはためらう事なく転がり込んだ。ブルズアイ!UNIXルームだ!独特の空気のにおいとファン音が彼女を出迎えた。TATATAT……廊下やや離れた所から未だに銃声と悲鳴が聴こえる。増援が集まりつつあるのだ。 43

2013-02-08 02:15:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

急がねば!ナンシーはUNIXデッキからLANケーブルを引き出し、躊躇なく己の生体ソケットに端子を差し込んだ。彼女のタイピング速度は初速イコール最大速!ハヤイ!モニタ上を無限のミンチョ・フォントが雪崩を打って流れ落ちる中、彼女は叫ぶように送信した。「ニンジャスレイヤー=サン!」44

2013-02-08 02:21:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

0101001001……その瞬間、アイズルから遠く離れたネオサイタマの一角、UNIXデッキ前でアグラしていたニンジャスレイヤーはカッと両目を見開き、画面上のアラートノーティスを凝視した。彼が岡山県から帰還して以後消息を掴めずにいた、他でもないナンシー自身からのメッセージを! 45

2013-02-08 02:28:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(「バトルクエスト・クレンチ・ユア・フィスト」 #7 終わり。#8 に続く)46

2013-02-08 02:29:05