トータス重突撃戦車の試案(AT13~16)のお話
(続き)しかし、多くの新規機能に関連した極端な難易度からすれば、試作品が完成してテストを完遂するまでは生産を開始すべきでないのは明らかである。故に、この兵器が兵士の手に渡るまでには、まだかなりの時間がかかるに違いない……
2013-02-08 23:24:14(続き)もし参謀本部がこの種の戦車を必要とし、機関銃のみを備えた戦車を検討する用意があるなら、ヴァリアント歩兵戦車をベースにするのが最も確実で迅速な方法であろう」……今までの試案を全て蹴ってやりなおせと言うような書かれようで、これはトータス開発関係者を相当焦らせたものと思われます
2013-02-08 23:27:369月18日には、AT13案をより簡易化したような形のAT14案(http://t.co/CMD95YqS)が提出されます。基本なスタイルは同様ですが、主砲同軸機銃は削除、左側スポンソンも排してボールマウント機銃とされます。簡略化により、要塞攻撃用の色がますます薄くなってきました
2013-02-08 23:35:02AT14案で車体左スポンソン配置の20mm機関砲を廃止してしまいましたが、これは同時に、主砲を右側に配置する必要性をも消してしまいます。これまでの案では二種類の武装を備えるために、武装を左右に振り分けて配置する必要がありましたが、AT14では最早この主砲配置に合理性はありません
2013-02-08 23:38:55その不合理の解消を狙ってか、AT14案提出から僅か三日後には、主砲を中央に変更したAT15案が提出されます http://t.co/y1w8bDiA 砲は半砲塔形式で搭載されており、非常に広い旋回範囲を確保しています。配置変更したことによる効果は十分だったと言えましょう
2013-02-08 23:43:03また、同月24日には参謀本部から声が掛かり、モックアップの製作が提案されます。グダグダやってないでまず作ってみろと言わんばかりですが、この提案では他に17ポンド砲ないし「37ポンド砲」の装備が指定されています。この時やっと、トータスに94mm級の長砲身大口径砲案が現れたのです
2013-02-08 23:50:21トータスへの超17ポンド砲級対戦車砲搭載については、この43年9月末の提案が初出となります。以前のまとめ(http://t.co/kJ5HXAEH )では42年10月のポスト17ポンド砲の開発開始時点でトータスとの関連に触れていましたが、これは当初はトータスとは無関係の計画でした
2013-02-08 23:56:53参謀本部の突き上げの後、10月5日にはAT15A案が提出されます。これまでの案では機関室給気グリルは独立した構造物でしたが、AT15Aでは大型化した戦闘室と一体化し、後のトータスの縮小版とも言えるような形状になっています。ただ、重量はAT15の60tから65tへ増えてしまいました
2013-02-09 00:02:38この重量増は、参謀本部に17ポンド砲搭載案について疑問を抱かせることになります。これほど重い車両で、戦闘室容積も大きいのに、これより15tは軽いブラックプリンスやセンチュリオンと同じ武装しか積めないのは如何なものか? そのような判断から、計画は30ポンド級案に一本化されます
2013-02-09 00:08:34今までごく短期間に多数の案を提出してきたナフィールド社ですが、次の案はしばらく用意できません。これは、砲規模の変更が大きいこともありますが、以前のまとめでも触れたように30ポンド級ポスト17ポンド対戦車砲案の混乱も関係します。この砲は30,32,37ポンド案が錯綜していたのです
2013-02-09 00:12:43錯綜する30ポンド級ポスト17ポンド対戦車砲の最終決着は44年6月の試験を待たねばなりませんでしたが、砲の試作自体は43年9月より始まっており、少なくとも44年2月より前にはある程度形になっていたようです。それに基づいて、32ポンド砲を搭載したAT16案が2月5日に提出されました
2013-02-09 00:23:37この案は同月23日には参謀本部の承認を得ました。43年2月の計画発足から1年間と14もの試案を経て、ついにAT16は重突撃戦車A39トータスとして採用されたのです。ここではまず25両が、パイロットモデルの試作を待たずにモックアップ完成後すぐ製作開始すべしとして発注されます
2013-02-09 00:30:14さて、トータスの採用まで辿り着きましたし、そろそろこのへんで一旦筆を置きたいと思います。少々まとまりが悪いですが。トータスの採用後の経緯については、普通の本屋で買えるような書籍やウェブサイトでも日本語で書かれていますから、ここで私が書けるようなこともありませんし
2013-02-09 00:35:03終わりに、トータスの試案と武装まわりの開発の流れを一枚の画像にしたので、これでまとめとしましょう。ただ、これは判明している確実な事実などではなく、あくまで現時点での私の調査メモ程度と考えてくださいな http://t.co/qOcdgFDn
2013-02-09 00:39:12当初の方針から大きく逸脱し、その挙句配備にも至らなかったトータス。これを「ジークフリート線の嘘に振り回され、最初から何もかも間違っていた駄作」と評すこともできます。でも、それを事前に察知できなかったのは開発者達の落ち度でなく情報戦の問題です。少なくとも彼らは仕事を成し遂げたのです
2013-02-09 00:42:45赤軍の戦車砲開発でももうちょっとすっきりてるなと思えるほどに、英軍の火砲まわりは恐ろしくゴチャゴチャしてるように思います……
2013-02-09 00:47:09