写真見た程度で思い出すぐれぇだ、話してりゃ最低限の事は思い出せるかもな。前に会った事がある奴なら尚更だ。それじゃ、今からリプ返す。気軽に話し掛けてくれ。………宜しくな。
2013-02-15 00:27:29取り戻す≪記憶≫
……街ん中フラつく間に大分色々思い出して来た。世間は狭ェもんで、幾人か俺を知ってる奴に会う事もあった。話を聞いて、名前を聞けばそれだけでぽろっと人間関係を思い出せたりしちまえるもんだから、人間の構造なんざ所詮は単純っつか、……そんな深刻な記憶喪失でも無かったのかもしれねえな。
2013-02-15 19:44:52顔合わせるだけで思い出した奴もいるし、話を聞く内に段々と染み込むように記憶を取り戻していった奴もいる。まだ顔を合わせちゃいねぇが、そいつの記憶との連動で芋蔓式に思い出した名前もある。……俺がバスケをしていた事も思い出した。道理でストリートコート見掛ける度に妙な気分になると思った。
2013-02-15 19:46:05家の位置は思い出せねぇが、さっき会った桐皇学園の奴とっ捕まえて適当にシバいたら高校の位置を吐いた。……住所と簡単な道筋聞いただけで高校の場所は直ぐに思い出した、そりゃそうか…通ってる場所だもんな。後で行ってみるか。他の手掛かりがあるかもしれねぇからな。此処からならそう遠くもねぇ。
2013-02-15 19:47:47【中学生時の人間関係(仲間の記憶)を思い出しました。】 【高校生時の人間関係(仲間の記憶)を思い出しました。】 【所属部活動(バスケットボール部)を思い出しました。】 【桐皇学園の位置(住所・道順)を思い出しました。】
2013-02-15 19:48:38抑々倒れてた場所もただのだだっ広い公園だしな。其処で素っ転んで記憶飛んだぐれぇなら程度も高が知れてるだろう。……誰かに殴られたってんなら別だが……幸い頭が凹んでるとか、そういう事は無ェみてぇだ。……ああただ、どうもこの、服にべたべた付いた血みてぇなのが気になってる。どういう事だ。
2013-02-15 19:50:02どうも歩く度に知らねぇ奴らからジロジロ見られると思ってた。服のあちこちに、飛び散ったみてぇに赤黒い液体が染み付いてやがる。……慌てて一度脱いで確認したが、俺自身には怪我はねぇみてぇだ。…となると、……返り血、か?…其処まで考えてぞっとする。…返り血を浴びる状況って、どんな状況だ。
2013-02-15 19:51:03俺の失われた記憶の中には、ひょっとして掘り起こしちゃいけねえもんもあんのか。それこそ、今すぐしょっぴかれてもおかしくねぇような、何か。……考えても結論は出ねぇし、警察に駆け込めば指名手配以前に記憶喪失者として「保護」されるだろう。……気分の良い展開じゃねぇ。それは、最後の手段だ。
2013-02-15 19:52:08………そろそろ日も暮れる事だ。落ちる影は一層濃くなって闇の内へどろりと溶け、吹き付ける風は戯れるようにかさかさと道端に落ちたビニール袋で手遊びしている。寒さは然程感じねぇが…決して暖かくはねぇ。…真夜中になれば学校も閉まっちまうだろうな。……そろそろ高校まで足、伸ばしてみっか。
2013-02-15 19:56:55異なる「世界」
………とんでもねぇ事になった。桐皇学園の敷地に足を踏み入れた刹那、俺が誰かに声を掛ける前に、制服を着た男に呼び止められた。バスケ部の先輩だ。幸いにも俺の自宅を知っていたそいつから、住所と大体の場所を聞き出した。……まだ聞きてぇ事もあったが、時間も時間だ、一旦帰宅しようと、考えた。
2013-02-16 02:04:11…ところがだ。教わった道の先に、確かに俺の家はあった。見覚えもあった。あれは間違いなく俺の家だ。現に……――其処には「俺」が住んでいた。…窓から覗いて魂消たぜ、全く同じ顔の男が其処で悠長に飯喰ってやがんだからよ。……だがまぁ、薄々…予想はしていた。俺の世界は…此処じゃねぇ。
2013-02-16 02:05:00此処は恐らく、俺が元居た世界に似た、別の世界だ。だが俺は、何かの手違いで…此処に飛ばされてきちまった。所謂「神隠し」という代物だろうか。莫迦な話だが…予感はしていた。会う奴らは確かに「俺」を知っていたが、俺の知らねぇ思い出を恰も俺が当然体験しているかのように語る事があったからだ。
2013-02-16 02:05:36……どうやって、此処に来たのか。どうすれば、帰る事が出来るのか。公園で目を覚ました時に比べりゃ多くの記憶を取り戻したつもりではいるが…まだ、何か決定的な記憶のパーツが足りねぇ…そんな気がする。…くそ、何だってこんなオカルトめいた事になっちまったんだか…。……それに。
2013-02-16 02:06:28ストリートコートにて
…昨日は結局テツの家に勝手に上がり込んで泊まった。流石に野宿は無ェだろ、この気温だ。この世界に居る「俺」とは別の人物だと気付かれたらまずいとは思ったが、いや少し妙な顔をされたからひょっとしたら気付かれてたのかもしれねェが…、……あいつは何も言わずに俺を泊めてくれた。有難い事だ。
2013-02-16 20:55:58とは言え其の儘居座ってもボロが出るだけだ、一明けた所で早々に家を抜け出て来た。……何とかして戻る手掛かりを見付けねぇと、けど…どうやって?何を探せばいいかも解わねぇ上に記憶もまだ完全じゃねぇ。あの公園に倒れる直前までの記憶は依然として戻らねぇままだ。…此の儘じゃ警察か病院行きだ。
2013-02-16 20:57:13気怠く目的も覚束無いまま脚を投げ出すように郊外の道を歩いていると、不意に足元へ何かが転がってきた。……バスケットボールだ。見れば見知らぬガキが数人、ストリートコートでバスケしてやがる。拾い上げたボールを投げ返し、戯れに其方へ近寄る。暇を持て余すように、コート脇のベンチへ腰掛けた。
2013-02-16 20:58:10……ガキのバスケだ、フォームも基本もなっちゃいねぇが…実に愉しそうにボールにじゃれる姿を見て、…胸の奥に疼く物を感じたのは何故だろうな。…その内ガキの一人が塾の時間だとか言い出して、コートを抜けた。人数を欠いたそいつらは、円になってごにょごにょ相談した後、俺の方へと視線を向ける。
2013-02-16 20:58:51